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250.パーティー登録

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 一番混雑する時間帯に食堂に下りる事になったけど、ちょうど出ていく所だったグループがいたおかげで運良く座席は確保できた。残念ながらレーブンさんと話はできなかったけど、久しぶりのレーブンさんの作った食事はすごく美味しかった。

 食事を終えて部屋に戻った俺たちは、今はのんびりと向かい合って果実水を飲んでいる。

 ハルが出してくれた果実水は初めて飲む味だったけど、甘酸っぱい果物の風味にふわりと香る花の香りがなんだかお洒落な一品だった。なんでも騎士団の人からもらった餞別なんだって。

「今日はどうする?」
「うーん…依頼受けたいなーハルはどう思う?」

 考えてみたらハルがいなくなった日から、ずっと依頼を受けてないんだよね。いくら冒険者は自由だとは言っても、いい加減依頼を受けないと駄目な気がする。

「体調が大丈夫なら俺は文句は無いよ」
「体調は問題ないよ」

 昨日のうちにハルが飲ませてくれたという回復ポーションのおかげか、むしろ普段よりも元気な気さえするぐらいだ。

「じゃあ、依頼を受ける前にパーティー登録しに行こうか?」
「うんっ!」
「ただ一つだけ問題があるんだ…」

 心配そうな顔をしたまま、ハルは申し訳なさそうに続けた。

「ギルマスとメロウにはアキトの体質については手紙で伝えてあるんだけど――捕まると長くなるかもしれない」

 ギルマスとメロウさんには体質について説明するって事前に聞いてたから問題は無いんだけど、長くなるってどういう意味なんだろう。

 俺は軽く首を傾げて、向かいに座ったハルを見つめた。

「長くなるってどういう意味?」
「もしかしたら追加で口頭説明を求められるかもって意味だよ」

 なるほど。メロウさんは真面目な人だから、手紙だけじゃなくてちゃんと説明もして欲しいって言われるかもしれないって事か。

「もしメロウがいたら、長くなるかもしれないと思っておいて」

 最悪、今日は依頼は受けられないかもしれないと、ハルは深刻な顔で告げた。

「気にしないで。今日の目標はパーティー登録だけでも良いから」
「そう?」
「うん、ハルとパーティー組めるの嬉しいから、それだけでも良いんだ」
「アキト…」

 幸せそうに目を細めたハルに、俺は慌てて果実水を飲み干すと立ち上がった。あんな色気たっぷりに見つめられてたら変な気分になりそうだ。

「じゃあそろそろ出発しよっか」
「ああ、行こう」

 当然の様に差し出された手を握ると、俺たちは冒険者ギルドを目指して黒鷹亭を後にした。



 冒険者ギルドの中は、今日も驚くほどに賑やかだった。まだ朝なのに当たり前のように酒の注文が飛び交ってるのが異世界って感じだ。

 最初にギルドに来た時はびっくりして立ち止まった騒音なのに、俺もだいぶギルドに慣れたなと思いながら受付へと足を進める。

「メロウはいないみたいだな」

 心なしか嬉しそうにハルはそう言うと、近くにいたギルド職員さんに声をかけた。

「すみません。パーティー登録をしたいんですが…」
「こちらにお座り下さい。パーティー登録はお二人でよろしいですか?」
「はい、二人です」
「ではギルドカードを預かりしますね」

 てきぱきと手続きを始めてくれた職員さんに、俺たちは揃ってギルドカードを差し出した。

「「お願いします」」
「はい」

 にっこりと笑って受け取ってくれた職員さんは、メロウさんにも負けない程のスピードで書類に何かを書き込んでいく。

「こちらの内容で間違いは無いでしょうか?」

 俺たちの前に差し出されたのは、ちょうどスマホ程のサイズの石板だった。きっとこれも魔道具なんだろうなと見つめていれば、じわりと文字が浮かんできた。

 Ⅽランク 前衛 戦士/ハル
 Ⅾランク 後衛 魔法使い/アキト
 
 浮かんできた文字をまじまじと見つめて、俺は悩んでしまった。俺の情報に間違いは無いんだけど、ハルのランクがⅭランクって本当に?騎士団で副団長をしていた事もあるハルがⅭランク?団長とあれだけ見事に戦っていたハルが???

「間違いありません」

 隣から聞こえたハルの言葉に我に返った俺は、ギルド職員さんの視線に慌てて間違いありませんと答えた。
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