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246.【ハル視点】俺たちらしさ※

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 幽霊だった頃から、俺は出来るだけアキトの体を見ないように気を付けていた。着替える時は必ず背中を向けていたし、入浴時もずっと外の景色を眺めていた。

 それは騎士としての信念の問題でもあったし、媚薬事件の時以外にアキトの裸体を見た事は無い。

 だからこうして堂々と見つめながら服を脱がせる事ができるのは、俺にとっては楽しい時間だった。

「あの…ハル、自分で脱ぐよ」
「いや、俺が脱がせたい…嫌?」

 恥ずかしそうにそう提案されたが、懇願するように尋ねてみれば優しいアキトは言葉を詰まらせた。

「う…嫌、じゃない」
「それなら良かった」

 顔中に恥ずかしいと書いてあるアキトを堪能しながら、俺は丁寧にアキトの服をはぎ取っていった。

「…下も脱がせて良い?」

 一瞬だけ信じられないという顔をしたアキトは、それでも頷きを返してくれた。頬が真っ赤なあたり、恥ずかしい事を聞くなと言いたいんだろうな。

 下着まで全てを取り払えば、キスだけで既に芯を持った性器が露わになった。感じてくれたんだなと嬉しく思ったけれど、アキトは慌てて布団代わりの布を引っ張って股間を隠してしまった。

「あー…恥ずかし…」

 そう呟いて両手で顔を隠したアキトに、俺は出来る限り優しい声で話しかけた。

「恥ずかしがらなくて良いよ。感じてくれて嬉しいし」

 額にそっとキスをすれば、アキトは恥ずかしそうに身もだえた。ひとしきりジタバタしたアキトは、ふと思いついたように俺を見上げてきた。

「ハル、俺だけじゃなくて…ハルも脱いで」

 こんな可愛いおねだりならすぐにでも叶えてあげたい。そう思ったけれど、俺はあえて笑みを浮かべて尋ねてみた。

「脱がせてくれないの?」

 アキトの反応は予想以上だった。大きく目を見開いたままその場で固まった後、何を想像したのかボンッと耳まで真っ赤に染めた。

「…まだ無理」
「まだ…か。じゃあまた次の機会にしようか」

 最初から脱がせてくれるとは思っていなかった俺は、残念に思う事もなく立ち上がった。いつかは脱がせたいと思ってくれてるみたいだから、その日を楽しみに待っていよう。

 どうせなら見せつけるように脱ぐのも有りかなと一瞬だけ頭を過ったけれど、慣れていないアキトには逆効果になるかもしれない。あえて大雑把にバサバサと服を脱ぎ捨てる事に決めた。

 呆然と全裸の俺を見つめていたアキトは、次の瞬間にはギュッと目をつむった。

「アキト?」
「ごめん、ちょっとだけ待って…」

 アキトはそう言うと、おもむろに深呼吸を繰り返し始めた。本人は気づいていないのかもしれないが、小さな声で筋肉、すごい体、直視できないなんて言葉まで聞こえてくる。

 しばらくすると何とか動揺を飲み込んだのか、ゆっくりと目が開いた。

「やっと目を開いてくれたね。まだ視線は合わないけど」
「うう…ハルの体が格好良すぎて直視できないんだよ」

 視線を彷徨わせているアキトが可愛すぎて、すこしだけ悪戯心が湧いてきた。裸を見ただけでこの反応なら、もっと至近距離に近づいたらどんな反応をしてくれるんだろう。ワクワクしながらアキトの上にゆっくりと覆いかぶさり、そっと耳元に顔を近づける。

「嬉しいけど、少しずつで良いから慣れて欲しいな?」

 俺の想像では真っ赤になるか、絶句するか、拗ねるかの内のどれかだと思ったけれど、アキトの反応はそのどれでもなかった。

「ちょっとずつ…頑張ります」

 まさか前向きな言葉を返されると思っていなかった俺は、驚きながらもできるだけ真面目な顔を作って答えた。

「そうして下さい」

 一瞬の沈黙の後、顔を見合わせた俺たちは二人同時に噴き出した。

 全裸でベッドの上にいるっていうのになんとも色気の無い会話だけれど、それが逆に俺たちらしくて嬉しいと思うんだから笑ってしまう。

 そうか、取り繕って雰囲気を作って…なんてする必要は無いんだな。俺たちはいつも通りの俺たちの延長で良いんだ。

 笑い合ったせいで緊張がほぐれたのか、アキトはまっすぐに俺の目を見つめ返してくれた。そのまま幸せそうに笑うアキトに、俺も自然と笑みを返す。

「大好き、ハル」
「ああ、俺も大好きだよ」

 溢れる愛おしさを込めて俺はすぐに唇を重ねた。舌を絡めた深いキスに、たどたどしいながらも必死で舌を絡めて応えてくれる。そんなアキトの姿に胸が熱くなった。

「アキト、嫌ならいつでも止めてね」

 きっちりと前置きをしてから、俺は下半身へとゆっくりと手を伸ばした。

「んあっ…」

 そっと性器を握りこめば、抑えきれなかったらしい甘い声がこぼれた。気持ちよさそうな声をもっと聞きたくて、俺はすぐに手を動かした。

「っ…ああっ…」

 ビクビクとアキトの体が震えた場所を狙って触れながら、少しずつ速度を上げていく。

「んあっ…ハ…っる…」
「気持ち良い?」
「うんっ…きもちっ、いっ…あ」

 質問すれば率直に答えてくれる素直さを可愛いと思いながら見つめていれば、アキトはギュッと目をつむった。

「やっ…もう、イっ」
「イきそう?」
「うん、……っん…」
「イっていいよ」

 なんとか優しい声を作ってそう囁きながらも、視線はアキトの痴態から反らせずにいた。

 アキトの痴態を見るのは媚薬事件の時以来になるが、あの時は理由が理由だけにできるだけ視線を反らしていた。でも今の表情には、誰かの思惑や媚薬の効果も無い。ただ俺の手で感じてくれているだけだと思うと、どうしても目を反らせなかった。

「えっ…あっ、みなっ…でっ…んあっ」

 途切れ途切れではあったが見ないでと伝えてきたアキトに、俺は端的に答えた。

「見せて」
「なん…ああっ…くっ」

 我慢しきれなくなったのか、アキトは恥ずかしそうに震えながら俺の手で達した。手の中に放たれたものをこのまま舐めてしまいたかったけれど、それは最後の理性で何とか我慢した。

 初心なアキトにそんな事をしたらきっと衝撃を受けるだろうし、嫌われたくは無いからな。舐めれないなら拭くしかないかと、俺は常に左腕に装備したままの腕輪に視線を向けた。

 この腕輪には空間魔法が付与されている。容量はそれほど入らないが、魔道収納鞄のような機能がある魔道具だ。そこから取り出した布で手を拭っていれば、アキトは涙で潤んだ目で俺を睨んできた。

「……見ないでって言ったのに…あそこまでじっくり見なくても良くなかった?」
「どうしても見たかったから、ごめんね」
「どうしてもって…」

 これはどうして見たかったかを説明するべきなのかなと笑みを浮かべれば、アキトはそれ以上追及はせずにただ黙り込んだ。こういうところはやけに鋭いんだよな。
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