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237.意識しすぎ
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騎士団服を着たハルを見た時も、そりゃあ動揺したし格好良すぎるって思ったよ。でも騎士団服ってのは公の場所に出るための正装、いわば制服みたいなものだ。だからドキドキはしたけど、何とか耐えられたんだ。
でも今は明らかに私服だと分かる服を、色気駄々洩れで着崩してるんだよ。そんなの直視できるわけないじゃないか!
「俺も装備外せたよ」
何とかそう言葉は返したけど、ハルはじっと俺を見つめていた。気づかないふりでそっと視線を反らすと、俺はすっかり習慣になった浄化魔法を発動した。
一瞬で発動した魔法のおかげで、全身は風呂上りのようなさっぱり感に包まれた。移動で結構汗をかいたからだろうな。あ、ハルにもかけた方が良いのかな?それともハルって、浄化魔法を使えるんだろうか。
「ハル、浄化魔法って使える?」
ちらっと視線だけを向けて聞いてみれば、ハルはすぐに頷いた。
「ああ、幽霊の時は使わなかったから存在すら忘れてたけど、使えるよ」
「そうなんだ?」
「騎士団での移動中には、かなり重宝するからね」
何でも騎士団は領地とか国を背負ってる立場だから、身だしなみにもしっかりと気を使わないと駄目なんだって。
まあ確かに薄汚れた騎士団を見たら、この国大丈夫かなとは思うかもしれない。
かと言って任務での移動中に、騎士団員全員が一々風呂に入ったりするような時間を取れる筈も無い。だからほとんどの騎士が、浄化魔法だけは使えるようになるんだって。必要に迫られたら、結構覚えられるものなんだよとハルは遠い目をして呟いた。結構厳しく覚えさせられたりするのかもしれないな。
「そっか。じゃあハルも騎士団で覚えたんだね」
「ああ、まあアキトほど綺麗な魔法じゃないけどね」
そう言ったハルは、俺には聞き取れない言葉で何かを呟くとひょいっと軽く指先を揺らした。たったそれだけの動きで、ハルの体は淡いオレンジの光に包まれた。
「終わったよ」
綺麗な魔法じゃないなんてハルは言ってたけど、俺の魔法よりもよっぽど魔法らしくて綺麗だと思うんだけどな。
「俺はハルの魔法綺麗だと思うけどな」
「そう?…ありがとう」
ふふと笑って誉め言葉を受け入れたハルに、俺はどういたしましてと笑顔で答えた。
「アキト、何か食べる?」
「んー…」
正直に言えばお昼にいっぱい食べたからか、まだあんまりお腹が空いてないんだよな。おかわりまでしちゃったから、いつもより食べすぎな感じがする。
「俺はまだ良いかな。ハルは食べて良いよ?」
あれだけたくさん食べてたけど、ハルの胃袋は俺とは格が違うって知ってしまったからね。遠慮して食べないってのは避けたかったから、慌てて付け足した。
「いや、俺も結構食べたから、今日はまだいらないかな」
お腹が空いたら夜食でも食べようかと軽く続けたハルに、俺は笑顔を返した。
いつもなら装備を外して浄化魔法をかけたら、後はベッドに座るかそのまま寝転がってしまうかの二択だった。ハルは行儀がとか注意なんてしてこないから、好きなように振る舞ってたんだ。
でも、さすがにハルの事を意識している今の状態で、ベッドに座ったり転がったりはできなかった。なんでって恥ずかしいからだよ。
とりあえずごまかすようにテーブルの方へと歩いていけば、ハルはすぐに後を追ってきた。
「本当に大丈夫?」
心配そうに眉を寄せたハルは、俺の顔をそっと覗き込んできた。部屋に入ってからろくに視線を合わせられなかったから、だからこんなに心配そうなんだろうな。そう冷静に分析してる一方で、色気駄々洩れの至近距離でのどアップに叫びたい気持ちもある。
「だ、大丈夫!」
咄嗟にそう否定はしたけど、いま俺の頬はきっと真っ赤だと思う。俺の頬が赤い理由を誤解したのか、ハルはそっと手のひらで俺の額に触れた。
「体調が悪かったりする?」
「ううん、違う」
すっごく心配そうな顔をしてるから、申し訳ない気持ちになる。俺がただハルを意識しすぎて変になってるだけなんだよ。
「隠さないで、アキト」
至近距離でそんな風に囁かれたら、もう抵抗なんてできなかった。
「俺が、ただハルを意識しすぎてるだけだよ…っ!」
あまりに予想外の言葉だったんだろう。ハルは大きく目を見開いたまま、まじまじと俺を見つめてきた。あー駄目だ、すっごく恥ずかしい。
「防音結界まである部屋に、生身のハルと二人きりって思ったら、その、意識しちゃって…」
どんどん小さくなって行く俺の声に、ハルはぱちぱちと瞬きをしてから幸せそうに笑ってみせた。
でも今は明らかに私服だと分かる服を、色気駄々洩れで着崩してるんだよ。そんなの直視できるわけないじゃないか!
「俺も装備外せたよ」
何とかそう言葉は返したけど、ハルはじっと俺を見つめていた。気づかないふりでそっと視線を反らすと、俺はすっかり習慣になった浄化魔法を発動した。
一瞬で発動した魔法のおかげで、全身は風呂上りのようなさっぱり感に包まれた。移動で結構汗をかいたからだろうな。あ、ハルにもかけた方が良いのかな?それともハルって、浄化魔法を使えるんだろうか。
「ハル、浄化魔法って使える?」
ちらっと視線だけを向けて聞いてみれば、ハルはすぐに頷いた。
「ああ、幽霊の時は使わなかったから存在すら忘れてたけど、使えるよ」
「そうなんだ?」
「騎士団での移動中には、かなり重宝するからね」
何でも騎士団は領地とか国を背負ってる立場だから、身だしなみにもしっかりと気を使わないと駄目なんだって。
まあ確かに薄汚れた騎士団を見たら、この国大丈夫かなとは思うかもしれない。
かと言って任務での移動中に、騎士団員全員が一々風呂に入ったりするような時間を取れる筈も無い。だからほとんどの騎士が、浄化魔法だけは使えるようになるんだって。必要に迫られたら、結構覚えられるものなんだよとハルは遠い目をして呟いた。結構厳しく覚えさせられたりするのかもしれないな。
「そっか。じゃあハルも騎士団で覚えたんだね」
「ああ、まあアキトほど綺麗な魔法じゃないけどね」
そう言ったハルは、俺には聞き取れない言葉で何かを呟くとひょいっと軽く指先を揺らした。たったそれだけの動きで、ハルの体は淡いオレンジの光に包まれた。
「終わったよ」
綺麗な魔法じゃないなんてハルは言ってたけど、俺の魔法よりもよっぽど魔法らしくて綺麗だと思うんだけどな。
「俺はハルの魔法綺麗だと思うけどな」
「そう?…ありがとう」
ふふと笑って誉め言葉を受け入れたハルに、俺はどういたしましてと笑顔で答えた。
「アキト、何か食べる?」
「んー…」
正直に言えばお昼にいっぱい食べたからか、まだあんまりお腹が空いてないんだよな。おかわりまでしちゃったから、いつもより食べすぎな感じがする。
「俺はまだ良いかな。ハルは食べて良いよ?」
あれだけたくさん食べてたけど、ハルの胃袋は俺とは格が違うって知ってしまったからね。遠慮して食べないってのは避けたかったから、慌てて付け足した。
「いや、俺も結構食べたから、今日はまだいらないかな」
お腹が空いたら夜食でも食べようかと軽く続けたハルに、俺は笑顔を返した。
いつもなら装備を外して浄化魔法をかけたら、後はベッドに座るかそのまま寝転がってしまうかの二択だった。ハルは行儀がとか注意なんてしてこないから、好きなように振る舞ってたんだ。
でも、さすがにハルの事を意識している今の状態で、ベッドに座ったり転がったりはできなかった。なんでって恥ずかしいからだよ。
とりあえずごまかすようにテーブルの方へと歩いていけば、ハルはすぐに後を追ってきた。
「本当に大丈夫?」
心配そうに眉を寄せたハルは、俺の顔をそっと覗き込んできた。部屋に入ってからろくに視線を合わせられなかったから、だからこんなに心配そうなんだろうな。そう冷静に分析してる一方で、色気駄々洩れの至近距離でのどアップに叫びたい気持ちもある。
「だ、大丈夫!」
咄嗟にそう否定はしたけど、いま俺の頬はきっと真っ赤だと思う。俺の頬が赤い理由を誤解したのか、ハルはそっと手のひらで俺の額に触れた。
「体調が悪かったりする?」
「ううん、違う」
すっごく心配そうな顔をしてるから、申し訳ない気持ちになる。俺がただハルを意識しすぎて変になってるだけなんだよ。
「隠さないで、アキト」
至近距離でそんな風に囁かれたら、もう抵抗なんてできなかった。
「俺が、ただハルを意識しすぎてるだけだよ…っ!」
あまりに予想外の言葉だったんだろう。ハルは大きく目を見開いたまま、まじまじと俺を見つめてきた。あー駄目だ、すっごく恥ずかしい。
「防音結界まである部屋に、生身のハルと二人きりって思ったら、その、意識しちゃって…」
どんどん小さくなって行く俺の声に、ハルはぱちぱちと瞬きをしてから幸せそうに笑ってみせた。
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