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225.白狼亭の店主
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注文も通ったから後は待つだけだ。トライプールで一番美味しいってハルが断言したステーキ楽しみだなぁ。じゅうじゅうと肉の焼ける音を聞いていると、どんどんお腹が減ってくる。
「それにしても、アキトと一緒にここに来られるなんて」
「俺も夢みたいだよ」
「食べて欲しいと思ってたから嬉しいよ」
店内の騒がしさにまぎれるように話していたら、不意にしんと店内が静まり返った。注文の声も店員の答えも一切返らない不自然なまでの静けさに、俺はキョロキョロと周りを見回した。肉にかぶりついたまま固まってる人までいるんだけど何事だろう。
「え…何?」
「ああ、もう気づいたのか…」
全く慌てていないあたり、ハルは何か知ってるみたいだ。客と店員の視線が一点を向いている事に気づいた俺は、そっと視線の先を追ってみた。
全員の視線の先にいたのは、厨房から出てきたらしい強面の筋肉質の男性だった。無表情でのしのしと歩いてくる姿は、ただ歩いているだけなのにやけに威圧感がある。まっすぐに俺たちのテーブルに近づいてきた男性は、低い声でハルに話しかけた。
「おい、お前」
「久しぶりだね、ローガン」
にっこりと笑って返したハルに、店内はざわりとどよめいた。
「ずいぶん久しぶりだが、お前生きてたのか?」
「この通り」
普通に会話を続ける二人を見て、店内に徐々に喧噪が戻ってきた。
「なんだ、知り合いがいただけか」
「まだ誰か放り出されるのかと思ったぜ」
「前に迷惑な客を放りだした時はすごかったもんなぁ」
「俺、何かしたかと思った」
そんな会話が、客の間でこそこそと交わされている。迷惑な客がいたら自ら放り出すんだ。あの筋肉は飾りじゃないんだなんて考えていると、不意にハルが俺を見た。
「アキト、この人はローガン。この店の店主だよ」
「あ、はじめまして、アキトです」
まっすぐに目を見て挨拶をすれば、ローガンさんはびくりと体を揺らしてからぽつりと呟いた。
「お前、もしかして黒鷹亭に泊ってるアキトか?」
「あ、はい」
なんで知ってるんだろうと思いながらも、俺は笑顔で頷いた。
「アキト、ローガンはレーブンの双子の弟だよ」
「ええ!?」
思わずまじまじ見つめてしまったけど、顔はあまり似ていない気がする。迫力のある顔付きと、筋肉質な所は似てるかもしれない。二卵性の双子だったりするのかな。
「やっぱりそうか」
「それにしても、紹介する前によくアキトだって気づいたな」
「俺の目をまっすぐに見返して笑える奴なんて、そんなにいないからな」
ローガンさんはそう言うと、いかつい顔を崩してふわっと笑ってくれた。その笑顔は、レーブンさんにすごく似ていた。本当に弟さんなんだ。
「俺、レーブンさんにお世話になってて」
「レーブンは息子みたいな存在が出来たって、やたら自慢してたぞ」
「え、そうなんですか?」
双子の弟さんにまで俺の事を自慢してくれてるなんて。恥ずかしいような嬉しいような複雑な気持ちになりながら、俺はふにゃりと笑ってみせた。
「……まあ、レーブンにとって息子なら、俺にとっても甥っ子だな」
「はぁ…アキトは本当に厄介な人にばかり好かれるな」
ハルがぽつりと呟いた瞬間、ローガンさんはすぐに口を開いた。
「なんだ、お前の事か?」
「俺も含めてかな…ただアキトの恋人は俺だから!それは絶対に誰にも譲らないよ」
自慢げに宣言したハルに、ローガンさんは真面目な顔で尋ねた。
「レーブンは知ってるのか?」
「ちゃんと二人で話して、祝福を貰ったよ?」
「そうか、二人のこれからに祝福を」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ローガンさんの言葉に反射的に返してから、俺たちは顔を見合わせて笑った。
「じゃあな、俺の自慢のステーキ楽しんでくれよ」
「はいっ!」
「ありがとう」
登場した時と同じくらい堂々と、ローガンさんは去っていった。
「それにしても、アキトと一緒にここに来られるなんて」
「俺も夢みたいだよ」
「食べて欲しいと思ってたから嬉しいよ」
店内の騒がしさにまぎれるように話していたら、不意にしんと店内が静まり返った。注文の声も店員の答えも一切返らない不自然なまでの静けさに、俺はキョロキョロと周りを見回した。肉にかぶりついたまま固まってる人までいるんだけど何事だろう。
「え…何?」
「ああ、もう気づいたのか…」
全く慌てていないあたり、ハルは何か知ってるみたいだ。客と店員の視線が一点を向いている事に気づいた俺は、そっと視線の先を追ってみた。
全員の視線の先にいたのは、厨房から出てきたらしい強面の筋肉質の男性だった。無表情でのしのしと歩いてくる姿は、ただ歩いているだけなのにやけに威圧感がある。まっすぐに俺たちのテーブルに近づいてきた男性は、低い声でハルに話しかけた。
「おい、お前」
「久しぶりだね、ローガン」
にっこりと笑って返したハルに、店内はざわりとどよめいた。
「ずいぶん久しぶりだが、お前生きてたのか?」
「この通り」
普通に会話を続ける二人を見て、店内に徐々に喧噪が戻ってきた。
「なんだ、知り合いがいただけか」
「まだ誰か放り出されるのかと思ったぜ」
「前に迷惑な客を放りだした時はすごかったもんなぁ」
「俺、何かしたかと思った」
そんな会話が、客の間でこそこそと交わされている。迷惑な客がいたら自ら放り出すんだ。あの筋肉は飾りじゃないんだなんて考えていると、不意にハルが俺を見た。
「アキト、この人はローガン。この店の店主だよ」
「あ、はじめまして、アキトです」
まっすぐに目を見て挨拶をすれば、ローガンさんはびくりと体を揺らしてからぽつりと呟いた。
「お前、もしかして黒鷹亭に泊ってるアキトか?」
「あ、はい」
なんで知ってるんだろうと思いながらも、俺は笑顔で頷いた。
「アキト、ローガンはレーブンの双子の弟だよ」
「ええ!?」
思わずまじまじ見つめてしまったけど、顔はあまり似ていない気がする。迫力のある顔付きと、筋肉質な所は似てるかもしれない。二卵性の双子だったりするのかな。
「やっぱりそうか」
「それにしても、紹介する前によくアキトだって気づいたな」
「俺の目をまっすぐに見返して笑える奴なんて、そんなにいないからな」
ローガンさんはそう言うと、いかつい顔を崩してふわっと笑ってくれた。その笑顔は、レーブンさんにすごく似ていた。本当に弟さんなんだ。
「俺、レーブンさんにお世話になってて」
「レーブンは息子みたいな存在が出来たって、やたら自慢してたぞ」
「え、そうなんですか?」
双子の弟さんにまで俺の事を自慢してくれてるなんて。恥ずかしいような嬉しいような複雑な気持ちになりながら、俺はふにゃりと笑ってみせた。
「……まあ、レーブンにとって息子なら、俺にとっても甥っ子だな」
「はぁ…アキトは本当に厄介な人にばかり好かれるな」
ハルがぽつりと呟いた瞬間、ローガンさんはすぐに口を開いた。
「なんだ、お前の事か?」
「俺も含めてかな…ただアキトの恋人は俺だから!それは絶対に誰にも譲らないよ」
自慢げに宣言したハルに、ローガンさんは真面目な顔で尋ねた。
「レーブンは知ってるのか?」
「ちゃんと二人で話して、祝福を貰ったよ?」
「そうか、二人のこれからに祝福を」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ローガンさんの言葉に反射的に返してから、俺たちは顔を見合わせて笑った。
「じゃあな、俺の自慢のステーキ楽しんでくれよ」
「はいっ!」
「ありがとう」
登場した時と同じくらい堂々と、ローガンさんは去っていった。
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