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218.認めてもらえる嬉しさ

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 思ったよりもあっさり信じてくれたレーブンさんに、今度は二人の出会いについて説明する事になった。

 幽霊であるハルと冒険者になりたかった俺が、バラ―ブ村の辺りで偶然出会った事。それからずっと一緒に旅してきた事。レーブンさんは途中で口を挟む事も無く、ただ俺たちの説明を真剣に聞いてくれた。

「精霊が見える人なんて言われてるけど、俺が色んなことを教えてもらってたのは精霊じゃなくてハルなんです」
「ああ、それであの通り名か」
「あれは…通り名があった方が、アキトの身の危険が減ると思ったので、俺の発案です」
「確かにあの通り名のおかげで、アキトにちょっかいを出す奴は減っただろうな」

 レーブンさんはそう言うと、よくやってくれたとハルを褒めていた。

「じゃあ、アキトはずっとこいつと一緒だったのか?」
「はい。ずっと黙っていてごめんなさい」

 頭を下げた俺に、レーブンさんは笑って首を振ってくれた。

「珍しい体質なんてのは普通は隠すものだ」

 有名になったせいで隠しきれなくなった俺みたいな理由がなければ、隠した方が良いに決まってるとレーブンさんは笑い飛ばしてくれた。そっか、レーブンさんもあのスキルのせいで色々あったんだろうな。

「良かったね、アキト」
「うん、良かった」
「あーそれで、な…お前たちの出会いは分かったんだが」

 言い淀んだレーブンさんは、顔を上げて口を開いた。
 
「俺が一番聞きたいのは、それだ」

 食堂に入ってからずっと繋いだままだった俺たちの手を、レーブンさんは指差して尋ねた。

「何故お前たちは、さっきからずっと手を繋いでいるんだ?」

 座った時に無意識に手を繋いでから、ずっと握ったままだったのか。

「アキトと俺が恋人同士だからですね」
「ほぉ…アキトは俺にとっては息子のような存在だ」
「知ってます」

 即答したハルに、レーブンさんは苦笑を浮かべる。

「…そうか、ずっとアキトと一緒にいたから知ってるのか」
「ええ。あなたがアキトを想っているように、アキトもあなたの事を慕っている」

 確かに俺にとってのレーブンさんは家族のような特別な存在だけど、改めて人の口からそう言われるとちょっと照れる。

「だからこそ、あなたにきちんと話がしたかったんですよ」
「そうか」

 ハルはレーブンさんをまっすぐに見つめて口を開いた。

「私は何よりもアキトを優先して守ると誓います、だから俺たちの関係を認めて下さい」
「…アキトは今のを聞いてどう思った?」
「え、守ってくれるのは嬉しいけど、じゃあ俺は何よりもハルを優先して守ろうって思いました」

 素直な気持ちを口にしたら、ハルはびっくり顔で俺を見つめてきた。え、当然じゃないかな。だって俺はハルと一緒に生きていきたいんだから、ハルが俺を守っていなくなったら困るんだよ。

「ふ、アキトらしいな。二人で助け合う関係は良いと思うぞ。お前たちの関係を認めよう」

 レーブンさんは穏やかに笑って、そして続けた。

「二人のこれからに祝福を」
「「ありがとうございます」」

 大好きな人から祝福の言葉を言われるのって、こんなに嬉しいものなんだ。

「それで?お前はハルと呼んだ方が良いのか?」
「これからは冒険者ハルとして、アキトとパーティーを組みます」

 レーブンさんには隠すつもりは無かったのか、ハルはあっさりと冒険者としての特別任務を受けた話までしてしまった。レーブンさんは信頼できる人だけど、そんなに簡単に話しちゃって大丈夫なのかな?騎士団に怒られたりしないんだろうか。

「アキトがソロの冒険者じゃなくなるってのは、俺としても安心だな」

 優しい笑顔でそう言い切ると、レーブンさんはすっと立ち上がった。

「アキトの部屋にはベッドを増やしておいてやる。俺が部屋の用意をしてる間に、二人で話し合え」
「話し合う…?」
「ハロルド・ウェルマール、知らなかったんだろ?」

 そう言い残すと、レーブンさんはすぐに食堂を出ていってしまった。

「あ、そうだ!ウェルマール!」
「まあ、それが今日話したいって言ってた事なんだけどね」
「そうだったの?えーと辺境伯と同じ名前ってことは、辺境伯とも親戚とかなの?」

 トライプールの領主様と親戚ならその可能性もあるかと口にすれば、ハルはすぐに首を横に振って俺の言葉を否定した。

「ケイリー・ウェルマールは、俺の父親だ」
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