生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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202.二人で食事

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 騎士団本部の訓練場で魔法を披露した後、俺は騎士の皆さんに囲まれていた。

「あの、お腹空いてませんか?」
「うちの食堂、一般公開はされてないんですけど、アキトさんなら歓迎しますよ」
「ハロルドさんと一緒にどうです?」

 一定の距離は保ってくれてるし、ぐいぐい近づいてくるわけじゃないんだけど、マッチョな人ばっかりだから囲まれると威圧感がすごい。

「おまえら、近すぎ」

 すぐに近づいてきてくれたハルは、そう言うと周りの騎士達をじろりと睨んだ。

「ちゃんと距離取ってますよ?」
「え、これでも近いですか?」
「ああ、まだ近すぎるな」

 不服そうな騎士に、ハルはにっこりとわざとらしい笑みを浮かべて見せた。途端に騎士の人達が一歩下がった事に、俺はくすりと笑ってしまった。

「今日は二人で食事するんだから、邪魔するなよ」
「ああ、もう部屋の用意はしてあるぞ」
「ありがとう。じゃあアキト、行こうか」

 すっと差し出された手を反射的に握り返せば、周りから歓声が巻き起こった。

「わーいいなー」
「めっちゃ幸せそうだな」

 人前で手を繋いでしまった事に赤くなりながら、俺はハルに手を引かれて歩き出した。



 案内されたのは、来客用に使うのだという豪華な応接室だった。

「派手だからアキト好みじゃないとは思うんだけど、ちょっとだけ我慢してね」

 ハルは申し訳なさそうにそう言ってくれたけど、俺の視線はテーブルに釘付けだった。

「それは良いんだけど…料理すごいね」

 そう室内に入った時には既に、テーブルの上には所せましと料理が並んでいたんだ。美味しそうな料理を見て、一気にお腹が空いた気がする。

 よく考えたら、俺3日もご飯食べてないんだもんな。

「お腹が空いてきた?」
「うん、すっごく」
「それは良かった。魔力切れの後は、食欲が戻ったらもう安心だって言われてるんだ」

 ハルは満面の笑みを浮かべて、そう教えてくれた。

「色々と話したいことはあるけど、まずは座って食べようか」
「うん!」

 テーブルを挟んで、ハルと向かい合って腰を下ろす。

「「いただきます」」

 重なった言葉には驚いたけど嬉しくて、俺はちらりとハルを見た。

「アキトが言うのを聞いてて、ずっと言ってみたかったんだよね」
「俺は嬉しいよ」
「アキトが嫌じゃないなら、これからも言わせてもらおうかな」



 テーブルの上に並んだ料理は、どれを食べても美味しかった。彩りまで計算されたお店の料理とは違って、見た目は本当に適当に盛られてるんだけど味は美味しい。

「この肉の煮込み、美味しい!」

 思わずそう声を上げれば、ハルも肉の煮込みを口に運んだ。

「あ、本当だ、美味しいね」

 たったそれだけのやりとりで、また泣きそうになってしまった。だって今まではただ食べるのを見守るだけだったハルが、こうやって一緒に食事してくれてるんだよ。感動するでしょう。

「俺さ、ハルと美味しいって言い合いながら食べれるの嬉しい」

 持て余した感情を素直にそう口にすれば、ハルも俺もすごく嬉しいって笑ってくれた。



 食事をしながら話していたんだけど、どうやらこの料理は騎士の人が交代で作っているらしい。

「え、これって騎士の人が作ってるの?」
「料理っていうのは、なかなか良い鍛錬になるからね」

 大量に作るとなると計算も必要だし、計画性も段取りを考える力もいる。美味しくできれば達成感もあるかららしい。

「それってハルも料理できるって事?」
「もちろん。今度アキトに食べてもらいたいな」
「うわー楽しみ!俺も上手じゃないけど、ハルに料理食べて欲しいな」
「じゃあお互いに作ろうか、約束ね」

 さらりと交わされた約束が嬉しすぎて、俺はふにゃりと笑みを浮かべてから頷いた。
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