203 / 1,179
202.二人で食事
しおりを挟む
騎士団本部の訓練場で魔法を披露した後、俺は騎士の皆さんに囲まれていた。
「あの、お腹空いてませんか?」
「うちの食堂、一般公開はされてないんですけど、アキトさんなら歓迎しますよ」
「ハロルドさんと一緒にどうです?」
一定の距離は保ってくれてるし、ぐいぐい近づいてくるわけじゃないんだけど、マッチョな人ばっかりだから囲まれると威圧感がすごい。
「おまえら、近すぎ」
すぐに近づいてきてくれたハルは、そう言うと周りの騎士達をじろりと睨んだ。
「ちゃんと距離取ってますよ?」
「え、これでも近いですか?」
「ああ、まだ近すぎるな」
不服そうな騎士に、ハルはにっこりとわざとらしい笑みを浮かべて見せた。途端に騎士の人達が一歩下がった事に、俺はくすりと笑ってしまった。
「今日は二人で食事するんだから、邪魔するなよ」
「ああ、もう部屋の用意はしてあるぞ」
「ありがとう。じゃあアキト、行こうか」
すっと差し出された手を反射的に握り返せば、周りから歓声が巻き起こった。
「わーいいなー」
「めっちゃ幸せそうだな」
人前で手を繋いでしまった事に赤くなりながら、俺はハルに手を引かれて歩き出した。
案内されたのは、来客用に使うのだという豪華な応接室だった。
「派手だからアキト好みじゃないとは思うんだけど、ちょっとだけ我慢してね」
ハルは申し訳なさそうにそう言ってくれたけど、俺の視線はテーブルに釘付けだった。
「それは良いんだけど…料理すごいね」
そう室内に入った時には既に、テーブルの上には所せましと料理が並んでいたんだ。美味しそうな料理を見て、一気にお腹が空いた気がする。
よく考えたら、俺3日もご飯食べてないんだもんな。
「お腹が空いてきた?」
「うん、すっごく」
「それは良かった。魔力切れの後は、食欲が戻ったらもう安心だって言われてるんだ」
ハルは満面の笑みを浮かべて、そう教えてくれた。
「色々と話したいことはあるけど、まずは座って食べようか」
「うん!」
テーブルを挟んで、ハルと向かい合って腰を下ろす。
「「いただきます」」
重なった言葉には驚いたけど嬉しくて、俺はちらりとハルを見た。
「アキトが言うのを聞いてて、ずっと言ってみたかったんだよね」
「俺は嬉しいよ」
「アキトが嫌じゃないなら、これからも言わせてもらおうかな」
テーブルの上に並んだ料理は、どれを食べても美味しかった。彩りまで計算されたお店の料理とは違って、見た目は本当に適当に盛られてるんだけど味は美味しい。
「この肉の煮込み、美味しい!」
思わずそう声を上げれば、ハルも肉の煮込みを口に運んだ。
「あ、本当だ、美味しいね」
たったそれだけのやりとりで、また泣きそうになってしまった。だって今まではただ食べるのを見守るだけだったハルが、こうやって一緒に食事してくれてるんだよ。感動するでしょう。
「俺さ、ハルと美味しいって言い合いながら食べれるの嬉しい」
持て余した感情を素直にそう口にすれば、ハルも俺もすごく嬉しいって笑ってくれた。
食事をしながら話していたんだけど、どうやらこの料理は騎士の人が交代で作っているらしい。
「え、これって騎士の人が作ってるの?」
「料理っていうのは、なかなか良い鍛錬になるからね」
大量に作るとなると計算も必要だし、計画性も段取りを考える力もいる。美味しくできれば達成感もあるかららしい。
「それってハルも料理できるって事?」
「もちろん。今度アキトに食べてもらいたいな」
「うわー楽しみ!俺も上手じゃないけど、ハルに料理食べて欲しいな」
「じゃあお互いに作ろうか、約束ね」
さらりと交わされた約束が嬉しすぎて、俺はふにゃりと笑みを浮かべてから頷いた。
「あの、お腹空いてませんか?」
「うちの食堂、一般公開はされてないんですけど、アキトさんなら歓迎しますよ」
「ハロルドさんと一緒にどうです?」
一定の距離は保ってくれてるし、ぐいぐい近づいてくるわけじゃないんだけど、マッチョな人ばっかりだから囲まれると威圧感がすごい。
「おまえら、近すぎ」
すぐに近づいてきてくれたハルは、そう言うと周りの騎士達をじろりと睨んだ。
「ちゃんと距離取ってますよ?」
「え、これでも近いですか?」
「ああ、まだ近すぎるな」
不服そうな騎士に、ハルはにっこりとわざとらしい笑みを浮かべて見せた。途端に騎士の人達が一歩下がった事に、俺はくすりと笑ってしまった。
「今日は二人で食事するんだから、邪魔するなよ」
「ああ、もう部屋の用意はしてあるぞ」
「ありがとう。じゃあアキト、行こうか」
すっと差し出された手を反射的に握り返せば、周りから歓声が巻き起こった。
「わーいいなー」
「めっちゃ幸せそうだな」
人前で手を繋いでしまった事に赤くなりながら、俺はハルに手を引かれて歩き出した。
案内されたのは、来客用に使うのだという豪華な応接室だった。
「派手だからアキト好みじゃないとは思うんだけど、ちょっとだけ我慢してね」
ハルは申し訳なさそうにそう言ってくれたけど、俺の視線はテーブルに釘付けだった。
「それは良いんだけど…料理すごいね」
そう室内に入った時には既に、テーブルの上には所せましと料理が並んでいたんだ。美味しそうな料理を見て、一気にお腹が空いた気がする。
よく考えたら、俺3日もご飯食べてないんだもんな。
「お腹が空いてきた?」
「うん、すっごく」
「それは良かった。魔力切れの後は、食欲が戻ったらもう安心だって言われてるんだ」
ハルは満面の笑みを浮かべて、そう教えてくれた。
「色々と話したいことはあるけど、まずは座って食べようか」
「うん!」
テーブルを挟んで、ハルと向かい合って腰を下ろす。
「「いただきます」」
重なった言葉には驚いたけど嬉しくて、俺はちらりとハルを見た。
「アキトが言うのを聞いてて、ずっと言ってみたかったんだよね」
「俺は嬉しいよ」
「アキトが嫌じゃないなら、これからも言わせてもらおうかな」
テーブルの上に並んだ料理は、どれを食べても美味しかった。彩りまで計算されたお店の料理とは違って、見た目は本当に適当に盛られてるんだけど味は美味しい。
「この肉の煮込み、美味しい!」
思わずそう声を上げれば、ハルも肉の煮込みを口に運んだ。
「あ、本当だ、美味しいね」
たったそれだけのやりとりで、また泣きそうになってしまった。だって今まではただ食べるのを見守るだけだったハルが、こうやって一緒に食事してくれてるんだよ。感動するでしょう。
「俺さ、ハルと美味しいって言い合いながら食べれるの嬉しい」
持て余した感情を素直にそう口にすれば、ハルも俺もすごく嬉しいって笑ってくれた。
食事をしながら話していたんだけど、どうやらこの料理は騎士の人が交代で作っているらしい。
「え、これって騎士の人が作ってるの?」
「料理っていうのは、なかなか良い鍛錬になるからね」
大量に作るとなると計算も必要だし、計画性も段取りを考える力もいる。美味しくできれば達成感もあるかららしい。
「それってハルも料理できるって事?」
「もちろん。今度アキトに食べてもらいたいな」
「うわー楽しみ!俺も上手じゃないけど、ハルに料理食べて欲しいな」
「じゃあお互いに作ろうか、約束ね」
さらりと交わされた約束が嬉しすぎて、俺はふにゃりと笑みを浮かべてから頷いた。
447
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる