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172.ついに発見!
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遠目に一本ずつ木を確認しながら、俺たちはゆっくりと森の中を進んで行った。ギザギザの葉を見つけたら、すかさず近づいていって詳しいチェック開始だ。
「これも違う」
「違うね」
なかなかアコの木には出会えないけど、ここまできたら後は意地だ。諦めなければいつかは出会えるだろう。
「次行こ、次」
明るくそう言うと、俺は周囲を見渡してみた。あそこに見える木は、葉はギザギザだし果物が実ってるみたいだ。次はあれに行ってみようかな。歩き出した俺の後を、ハルは少し遅れてついてきた。
まずは裏面にトゲがあるかを確認しようと軽い気持ちで葉の裏を覗き込んだ俺は、そのまま固まってしまった。
「アキト、どうかした?」
心配そうなハルの声で我に返った俺は、慌てて両手を振ってみせた。
「あ、いや、裏面にうっすらトゲがあったから」
心配させてごめんねと謝りつつ、もう一度目の前の葉をじっくりと観察してみる。うん、やっぱりトゲがちゃんとある。これだけ色んな木を見て回ってきて、初めて出会えた裏面にトゲのある葉だ。
もしかしてと期待しながら、俺はそっと両手に手袋をはめた。これがアコの果実なら問題ないんだけど、もし毒のある別の果実だったら困るからね、念のためだ。俺は一番近くの三センチ程の果実をもぎとると、そっと鼻を近づけてみる。
「すごく甘い香りだ」
アコの木である可能性がまた上がった。うっすらと笑みを浮かべた俺は、今度はナイフを取り出すとその果実を二つに切り分けてみる。
はっきりと色は分からなくても、同じ色かどうかぐらいは分かるかなと思ったからだ。じっくりと断面を観察してみると、果皮はほぼ黒なのに果肉はすこしだけ灰色まじりの黒に見えた。
「果皮と果肉の色が違う…ハル、これがアコの木だと思う!」
ここまで条件が全部合ってて、不正解なんて事は無いだろう。ワクワクしながら返事を待っていると、ハルはニコッと笑ってから口を開いた。
「大正解だよ!さすがアキトだ!」
「やったー!」
「諦めずによく見つかるまで探したね」
優しい声でよくできましたと褒めて貰えただけで、疲れが吹き飛んだ気がした。
ようやく見つけたアコの木には、たくさんの果実が実っていた。ハルに何個ぐらいなら買い取ってもらえるかを確認してから、俺はいそいそとアコの果実の採取に取り掛かった。
「これだけあるなら、一個ぐらい食べてみる?」
「食べてみないよ!」
「じゃあペーストの方にしようか」
「そっちもしない!顔くしゃくしゃになるぐらい苦いんでしょ?」
そんなくだらない会話をしながらも、無事にアコの果実の採取は完了した。
「終わったー!」
「お疲れ様。アキト、そろそろお昼にしない?」
そう言われてみれば確かにお腹は空いている。
魔道具の時計をちらりと確認してみたら、時刻はとっくにお昼を過ぎていた。どうやら夢中になってアコの木を探している間に、思った以上に時間が経ってたみたいだ。
「集中してたから声はかけなかったけど、そろそろ食べないとね」
「うん、気にしてくれてありがとね」
「どういたしまして」
自分には必要のない食事の事まで気にかけてくれるなんて、ハルはやっぱり優しいな。俺は近くにあった切り株に近づいていくと、そっと腰を下ろした。
「なんか急にお腹空いてきたよ」
「それは良かった。人は食べないと動けないんだから、きっちり食べてね」
笑顔のハルに頷きを返すと、魔道収納鞄の中から今日の昼食を取り出した。
今日のお昼は、朝からわざわざ北の大門広場に寄って買ってきた丸パンだ。ちなみに今日はふたつとも肉チーズ味にしてみた。
紙で包まれていた丸パンを取り出して齧りつけば、甘辛い肉の風味と濃厚なチーズの味が口いっぱいに広がった。
「っ!やっぱり美味しい!」
あまりの美味しさに思わず叫んだ俺を、ハルはただ優しく見守ってくれた。
「これも違う」
「違うね」
なかなかアコの木には出会えないけど、ここまできたら後は意地だ。諦めなければいつかは出会えるだろう。
「次行こ、次」
明るくそう言うと、俺は周囲を見渡してみた。あそこに見える木は、葉はギザギザだし果物が実ってるみたいだ。次はあれに行ってみようかな。歩き出した俺の後を、ハルは少し遅れてついてきた。
まずは裏面にトゲがあるかを確認しようと軽い気持ちで葉の裏を覗き込んだ俺は、そのまま固まってしまった。
「アキト、どうかした?」
心配そうなハルの声で我に返った俺は、慌てて両手を振ってみせた。
「あ、いや、裏面にうっすらトゲがあったから」
心配させてごめんねと謝りつつ、もう一度目の前の葉をじっくりと観察してみる。うん、やっぱりトゲがちゃんとある。これだけ色んな木を見て回ってきて、初めて出会えた裏面にトゲのある葉だ。
もしかしてと期待しながら、俺はそっと両手に手袋をはめた。これがアコの果実なら問題ないんだけど、もし毒のある別の果実だったら困るからね、念のためだ。俺は一番近くの三センチ程の果実をもぎとると、そっと鼻を近づけてみる。
「すごく甘い香りだ」
アコの木である可能性がまた上がった。うっすらと笑みを浮かべた俺は、今度はナイフを取り出すとその果実を二つに切り分けてみる。
はっきりと色は分からなくても、同じ色かどうかぐらいは分かるかなと思ったからだ。じっくりと断面を観察してみると、果皮はほぼ黒なのに果肉はすこしだけ灰色まじりの黒に見えた。
「果皮と果肉の色が違う…ハル、これがアコの木だと思う!」
ここまで条件が全部合ってて、不正解なんて事は無いだろう。ワクワクしながら返事を待っていると、ハルはニコッと笑ってから口を開いた。
「大正解だよ!さすがアキトだ!」
「やったー!」
「諦めずによく見つかるまで探したね」
優しい声でよくできましたと褒めて貰えただけで、疲れが吹き飛んだ気がした。
ようやく見つけたアコの木には、たくさんの果実が実っていた。ハルに何個ぐらいなら買い取ってもらえるかを確認してから、俺はいそいそとアコの果実の採取に取り掛かった。
「これだけあるなら、一個ぐらい食べてみる?」
「食べてみないよ!」
「じゃあペーストの方にしようか」
「そっちもしない!顔くしゃくしゃになるぐらい苦いんでしょ?」
そんなくだらない会話をしながらも、無事にアコの果実の採取は完了した。
「終わったー!」
「お疲れ様。アキト、そろそろお昼にしない?」
そう言われてみれば確かにお腹は空いている。
魔道具の時計をちらりと確認してみたら、時刻はとっくにお昼を過ぎていた。どうやら夢中になってアコの木を探している間に、思った以上に時間が経ってたみたいだ。
「集中してたから声はかけなかったけど、そろそろ食べないとね」
「うん、気にしてくれてありがとね」
「どういたしまして」
自分には必要のない食事の事まで気にかけてくれるなんて、ハルはやっぱり優しいな。俺は近くにあった切り株に近づいていくと、そっと腰を下ろした。
「なんか急にお腹空いてきたよ」
「それは良かった。人は食べないと動けないんだから、きっちり食べてね」
笑顔のハルに頷きを返すと、魔道収納鞄の中から今日の昼食を取り出した。
今日のお昼は、朝からわざわざ北の大門広場に寄って買ってきた丸パンだ。ちなみに今日はふたつとも肉チーズ味にしてみた。
紙で包まれていた丸パンを取り出して齧りつけば、甘辛い肉の風味と濃厚なチーズの味が口いっぱいに広がった。
「っ!やっぱり美味しい!」
あまりの美味しさに思わず叫んだ俺を、ハルはただ優しく見守ってくれた。
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