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167.楽しい一日
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「…ト、アキト!」
間近から聞こえてきたハルの声に、俺はハッと顔を上げた。いつの間に帰ってきたのか、ハルは心配そうに俺を覗き込んでいる。
「ごめん、本に集中しすぎてた。おかえり、ハル」
「ただいま。声をかけようか悩んだんだけど…まだ昼ごはんを受け取ってないよね?」
慌てて時間を確認してみれば、確かにレーブンさんが作ってくれるお昼ご飯の受取時間ぎりぎりだった。
「うわーありがとう、ハル!俺、ちょっと行ってくる!」
俺は大慌てで階段を駆け下りた。
なんとか時間内に無事に受け取れた俺は、受け取った包みを持って部屋へと戻った。屋台みたいに紙製の箱に詰められた料理は、まだほんのりと温かかった。
「ハル、ただいま」
「おかえり、アキト。間に合って良かったね」
ハルにお礼を言いつつ、俺は受け取ったばかりの紙製の箱をテーブルの上にそっと置いた。この箱に入った感じが、お弁当みたいでちょっとワクワクする。
箱の中にはトルティーヤみたいな生地のラップサンドが、いくつか並んでいた。半分ずつに切ってくれてるんだけど、それぞれ具材が違うみたいで手の込み方が半端じゃない。
カラフルな野菜や肉の挟まった断面をまじまじと見つめていたら、俺のお腹がぐうと鳴った。美味しそうすぎて一気にお腹が減ったんだな。俺は両手を合わせて口を開いた。
「いただきます」
箱の中身を綺麗に食べつくした俺は、魔道収納鞄から取り出した果実水を飲みながらハルに声をかけた。
「ハル、ギルドはどうだった?」
「やっぱり人は少なかったけど、川の氾濫の危険性はなさそうだったよ」
ああ、情報収集ってどういう意味かと思ってたけど、それを調べるためだったのか。この世界には俺の世界みたいに警報とか注意報とか無いんだもんな。
「アキトはあんなに集中して、何を読んでたの?」
「ケイリー・ウェルマールの冒険!」
ハルにタイトルが見えるように、テーブルの隅に置いていた本をくるりと表返す。
「どこまで読んだ?」
「今はね、スタンピードをなんとか乗り切ったけど、顔に大きな傷が残ったってところ」
「ああ、その辺りか」
読んだ事があるって言ってたから、たったそれだけの説明でハルもぴんと来たみたいだ。
「ハルはさ、辺境伯って見たことある?」
俺の中ではすっかり物語のヒーローって感じだけど、今も実在してる人なんだって。本になってるような偉人なのに、今も生きてるってすごくない?この世界では普通の事なんだろうか。
「あるよ」
「本当に傷あった?」
「ああ、あったよ。頬の辺りに」
ハルの指先が、こめかみから顎の辺りをすいっとなぞった。
「すごい人だよね」
「ああ、すごい人だ」
「俺さ、辺境もいつか行ってみたいなって思ったんだー」
「え、本当に?行ってみたい?」
軽い気持ちで言った言葉に何故か即座に飛びついたハルに、俺は驚きつつも返事を返した。
「う、うん」
「あ、興奮してごめんな。いつか辺境も案内したいと思ってたけど、どうしても危険な場所だから…さ」
「ああ、スタンピード」
魔物が至る所に溢れて襲ってくるのが、魔物の大暴走と呼ばれるスタンピードだ。本の中ではさらりと軽めに描写されてたけど、実際にその場にいたらどれほど恐ろしいだろう。
思わず黙りこんでしまった俺の様子を見て、ハルはすぐに話題を変えてくれた。
「辺境領に行くなら、ぜひ連れて行きたい店もあるんだ」
ハルの気遣いに乗っかって、俺も明るく言葉を返す。
「へーどんな店?」
どうやらハルは辺境にも詳しいようで、流れるように説明してくれた。
辺境領は木工品が特に有名な土地で、動物や花などを模した精巧な木彫りがたくさん売っているらしい。市場には置物からアクセサリーまで、様々な木工品のお店が並んでいるそうだ。
家具もたくさん作られていて、庶民向けのものから貴族向けのものまで種類も豊富にあるんだって。これは他の領でも人気のある名産品にあたるそうだ。
「それに美味しいものもたくさんあるよ」
魔物の襲撃を警戒して領都の中に果樹園や畑を作っているらしいんだけど、他の土地にはあまり無いような変わった果物や野菜が多いんだって。魔物の肉が簡単に手に入るからか、他の領地ではあまりみないような食用肉もたくさんあるそうだ。
「辺境領都で一番おすすめのお店は、やっぱりミルラースかな」
「ミルラースっていうお店?」
「そう、ステーキが絶品なんだ!」
キラキラした目で断言したハルに、俺は思いっきり噴き出してしまった。
「それハルの好物がステーキなだけじゃない?」
「違うんだよ、スパイスとか焼き方もトライプールとは違っててね!」
珍しく必死な様子で熱く語り出したハルが面白くて、俺は説明を聞きながらけらけらと笑った。
間近から聞こえてきたハルの声に、俺はハッと顔を上げた。いつの間に帰ってきたのか、ハルは心配そうに俺を覗き込んでいる。
「ごめん、本に集中しすぎてた。おかえり、ハル」
「ただいま。声をかけようか悩んだんだけど…まだ昼ごはんを受け取ってないよね?」
慌てて時間を確認してみれば、確かにレーブンさんが作ってくれるお昼ご飯の受取時間ぎりぎりだった。
「うわーありがとう、ハル!俺、ちょっと行ってくる!」
俺は大慌てで階段を駆け下りた。
なんとか時間内に無事に受け取れた俺は、受け取った包みを持って部屋へと戻った。屋台みたいに紙製の箱に詰められた料理は、まだほんのりと温かかった。
「ハル、ただいま」
「おかえり、アキト。間に合って良かったね」
ハルにお礼を言いつつ、俺は受け取ったばかりの紙製の箱をテーブルの上にそっと置いた。この箱に入った感じが、お弁当みたいでちょっとワクワクする。
箱の中にはトルティーヤみたいな生地のラップサンドが、いくつか並んでいた。半分ずつに切ってくれてるんだけど、それぞれ具材が違うみたいで手の込み方が半端じゃない。
カラフルな野菜や肉の挟まった断面をまじまじと見つめていたら、俺のお腹がぐうと鳴った。美味しそうすぎて一気にお腹が減ったんだな。俺は両手を合わせて口を開いた。
「いただきます」
箱の中身を綺麗に食べつくした俺は、魔道収納鞄から取り出した果実水を飲みながらハルに声をかけた。
「ハル、ギルドはどうだった?」
「やっぱり人は少なかったけど、川の氾濫の危険性はなさそうだったよ」
ああ、情報収集ってどういう意味かと思ってたけど、それを調べるためだったのか。この世界には俺の世界みたいに警報とか注意報とか無いんだもんな。
「アキトはあんなに集中して、何を読んでたの?」
「ケイリー・ウェルマールの冒険!」
ハルにタイトルが見えるように、テーブルの隅に置いていた本をくるりと表返す。
「どこまで読んだ?」
「今はね、スタンピードをなんとか乗り切ったけど、顔に大きな傷が残ったってところ」
「ああ、その辺りか」
読んだ事があるって言ってたから、たったそれだけの説明でハルもぴんと来たみたいだ。
「ハルはさ、辺境伯って見たことある?」
俺の中ではすっかり物語のヒーローって感じだけど、今も実在してる人なんだって。本になってるような偉人なのに、今も生きてるってすごくない?この世界では普通の事なんだろうか。
「あるよ」
「本当に傷あった?」
「ああ、あったよ。頬の辺りに」
ハルの指先が、こめかみから顎の辺りをすいっとなぞった。
「すごい人だよね」
「ああ、すごい人だ」
「俺さ、辺境もいつか行ってみたいなって思ったんだー」
「え、本当に?行ってみたい?」
軽い気持ちで言った言葉に何故か即座に飛びついたハルに、俺は驚きつつも返事を返した。
「う、うん」
「あ、興奮してごめんな。いつか辺境も案内したいと思ってたけど、どうしても危険な場所だから…さ」
「ああ、スタンピード」
魔物が至る所に溢れて襲ってくるのが、魔物の大暴走と呼ばれるスタンピードだ。本の中ではさらりと軽めに描写されてたけど、実際にその場にいたらどれほど恐ろしいだろう。
思わず黙りこんでしまった俺の様子を見て、ハルはすぐに話題を変えてくれた。
「辺境領に行くなら、ぜひ連れて行きたい店もあるんだ」
ハルの気遣いに乗っかって、俺も明るく言葉を返す。
「へーどんな店?」
どうやらハルは辺境にも詳しいようで、流れるように説明してくれた。
辺境領は木工品が特に有名な土地で、動物や花などを模した精巧な木彫りがたくさん売っているらしい。市場には置物からアクセサリーまで、様々な木工品のお店が並んでいるそうだ。
家具もたくさん作られていて、庶民向けのものから貴族向けのものまで種類も豊富にあるんだって。これは他の領でも人気のある名産品にあたるそうだ。
「それに美味しいものもたくさんあるよ」
魔物の襲撃を警戒して領都の中に果樹園や畑を作っているらしいんだけど、他の土地にはあまり無いような変わった果物や野菜が多いんだって。魔物の肉が簡単に手に入るからか、他の領地ではあまりみないような食用肉もたくさんあるそうだ。
「辺境領都で一番おすすめのお店は、やっぱりミルラースかな」
「ミルラースっていうお店?」
「そう、ステーキが絶品なんだ!」
キラキラした目で断言したハルに、俺は思いっきり噴き出してしまった。
「それハルの好物がステーキなだけじゃない?」
「違うんだよ、スパイスとか焼き方もトライプールとは違っててね!」
珍しく必死な様子で熱く語り出したハルが面白くて、俺は説明を聞きながらけらけらと笑った。
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