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161.勧誘

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 今回の調査依頼の報酬は、思わず現実逃避をしたくなるような金額だった。

 おおよその金額の予想がついていたらしい大人組とハルは落ち着いて聞いてたけど、俺とブレイズは金額を聞くなり挙動不審になった。高すぎる報酬によっぽど俺たちが遠い目をしていたのか、メロウさんは苦笑しながらも詳しく説明してくれた。

「アグアウルフ二頭とヒュージスライム、それにクラ―ウ茸が高額買取ですし、それ以外もたくさんの素材を採ってきて頂いてますからね」

 メロウさんによると、今回はギルドからの直接依頼だから、全ての素材を一般価格よりも少し高めに買い取ってくれるらしい。むしろ直接依頼だからこそ買取価格は下がるのかと、勝手に思ってたんだけどな。

「ギルドからの依頼をまかせられるような信頼できる冒険者には、また依頼を受けて貰いたいからね。そのための高価買取だよ」

 よほど不思議そうな顔をしていたのか、ハルがこそっと教えてくれた。確かに報酬が美味しいとかの理由が無いと、いくらギルドからの依頼でも受ける人はいなくなるもんな。そう考えれば、高めの報酬と買取価格も理解はできる。

「報酬は5等分でよろしいですか?」
「はい、それでお願いします」
「現金で受取りたい方はいらっしゃいますか?」

 メロウさんの確認の言葉には、誰一人声を上げなかった。それでは手続きに移りますねと前置きして、メロウさんは流れるようにギルドカードに入金してくれた。

 俺のギルドカードって、今いくらぐらい入ってるんだろうな。いつか大きな買い物をする日までは、金額を把握するのはやめておきたい。俺のメンタルのためにも。まあそんな予定は、今の所全く無いんだけど。

 現実逃避していると、ルセフさんが軽く手をあげて口を開いた。

「あ、今回の食費は全員3000で」
「はーい」
「おう」
「じゃあこれ」

 みんな言われるがままに普通にお金を取り出して渡してるんだけど、俺はその金額のあまりの安さに驚いてしまった。屋台で買い食いしただけでも600グル~1000グルはかかるんだよ。何ならお店で食べたら1500グル~って感じなのに、4日間の食費が3000グルって事は無いだろう。しかもあの豪華な料理が、そんな値段な筈が無い。

「あの、本当にそんなに安いんですか?」
「ああ、今回は一角ボアの肉も手に入ったしね。これでも俺が損はしない金額にしてるよ」

 差額は俺が貰うことになるけどねと笑っているけど、それはチームを組む前に言われていたから問題は無い。むしろ手間賃とかも取って欲しいぐらいなんだけど、きっと受け取ってくれないんだろうな。

「…損は無いって言うのは本当ですか?」
「ああ、誓って嘘は言ってない」
「じゃあ、これ。美味しいごはん、ありがとうございました!」

 そう声をかけると、ブレイズも近づいてきて俺の隣に並んだ。

「俺もー!今回も美味しいごはんありがとう、ルセフさん!」
「あー…やっぱりブレイズとアキトは可愛いな」

 そう言うとルセフさんは俺たちの頭をぐしぐしと撫でだした。にこにこ笑顔で上機嫌の姿を、メロウさんは珍しいものを見たと言いたげな顔でじっと見つめている。俺とブレイズの前ではよくしてる表情だけどな。

「アキト。これは全員で相談して決めた事だから、ただの俺の思いつきで言うんじゃないんだけどな…?」

 突然真剣な顔で前置きをしたルセフさんに、俺は一体何の話かと身構えた。真剣な顔に相応しいように、できる限り真剣な顔で俺も答える。

「はい」
「アキトさえ良ければ、うちのチームに入らないか?」

 え、チームに入るって言った?驚いて周りを見渡せば、チームの皆は真剣な顔で俺の返答を待っていた。雰囲気からして、冗談とかノリじゃなくて本気で勧誘してもらってるってことか?

 やっと俺がそう理解した時、ふと目が合ったウォルターさんが口を開いた。

「アキトは実力も人柄も良いから歓迎するぜ?」
「俺は魔法の話がもっと聞きたいから大歓迎!」

 ファリーマさんの理由は、どこまでもファリーマさんらしいものだった。

「アキトがチームに入ってくれたら、俺も嬉しいよ!絶対楽しくなる!」

 ブレイズはそう言うとワクワクした顔で見つめてくる。

「チームの奴との相性も良いし、一緒にいて楽しいってのは大事な理由だよ」

 ルセフさんは軽い調子でそう続けた。
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