生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
上 下
162 / 1,179

161.勧誘

しおりを挟む
 今回の調査依頼の報酬は、思わず現実逃避をしたくなるような金額だった。

 おおよその金額の予想がついていたらしい大人組とハルは落ち着いて聞いてたけど、俺とブレイズは金額を聞くなり挙動不審になった。高すぎる報酬によっぽど俺たちが遠い目をしていたのか、メロウさんは苦笑しながらも詳しく説明してくれた。

「アグアウルフ二頭とヒュージスライム、それにクラ―ウ茸が高額買取ですし、それ以外もたくさんの素材を採ってきて頂いてますからね」

 メロウさんによると、今回はギルドからの直接依頼だから、全ての素材を一般価格よりも少し高めに買い取ってくれるらしい。むしろ直接依頼だからこそ買取価格は下がるのかと、勝手に思ってたんだけどな。

「ギルドからの依頼をまかせられるような信頼できる冒険者には、また依頼を受けて貰いたいからね。そのための高価買取だよ」

 よほど不思議そうな顔をしていたのか、ハルがこそっと教えてくれた。確かに報酬が美味しいとかの理由が無いと、いくらギルドからの依頼でも受ける人はいなくなるもんな。そう考えれば、高めの報酬と買取価格も理解はできる。

「報酬は5等分でよろしいですか?」
「はい、それでお願いします」
「現金で受取りたい方はいらっしゃいますか?」

 メロウさんの確認の言葉には、誰一人声を上げなかった。それでは手続きに移りますねと前置きして、メロウさんは流れるようにギルドカードに入金してくれた。

 俺のギルドカードって、今いくらぐらい入ってるんだろうな。いつか大きな買い物をする日までは、金額を把握するのはやめておきたい。俺のメンタルのためにも。まあそんな予定は、今の所全く無いんだけど。

 現実逃避していると、ルセフさんが軽く手をあげて口を開いた。

「あ、今回の食費は全員3000で」
「はーい」
「おう」
「じゃあこれ」

 みんな言われるがままに普通にお金を取り出して渡してるんだけど、俺はその金額のあまりの安さに驚いてしまった。屋台で買い食いしただけでも600グル~1000グルはかかるんだよ。何ならお店で食べたら1500グル~って感じなのに、4日間の食費が3000グルって事は無いだろう。しかもあの豪華な料理が、そんな値段な筈が無い。

「あの、本当にそんなに安いんですか?」
「ああ、今回は一角ボアの肉も手に入ったしね。これでも俺が損はしない金額にしてるよ」

 差額は俺が貰うことになるけどねと笑っているけど、それはチームを組む前に言われていたから問題は無い。むしろ手間賃とかも取って欲しいぐらいなんだけど、きっと受け取ってくれないんだろうな。

「…損は無いって言うのは本当ですか?」
「ああ、誓って嘘は言ってない」
「じゃあ、これ。美味しいごはん、ありがとうございました!」

 そう声をかけると、ブレイズも近づいてきて俺の隣に並んだ。

「俺もー!今回も美味しいごはんありがとう、ルセフさん!」
「あー…やっぱりブレイズとアキトは可愛いな」

 そう言うとルセフさんは俺たちの頭をぐしぐしと撫でだした。にこにこ笑顔で上機嫌の姿を、メロウさんは珍しいものを見たと言いたげな顔でじっと見つめている。俺とブレイズの前ではよくしてる表情だけどな。

「アキト。これは全員で相談して決めた事だから、ただの俺の思いつきで言うんじゃないんだけどな…?」

 突然真剣な顔で前置きをしたルセフさんに、俺は一体何の話かと身構えた。真剣な顔に相応しいように、できる限り真剣な顔で俺も答える。

「はい」
「アキトさえ良ければ、うちのチームに入らないか?」

 え、チームに入るって言った?驚いて周りを見渡せば、チームの皆は真剣な顔で俺の返答を待っていた。雰囲気からして、冗談とかノリじゃなくて本気で勧誘してもらってるってことか?

 やっと俺がそう理解した時、ふと目が合ったウォルターさんが口を開いた。

「アキトは実力も人柄も良いから歓迎するぜ?」
「俺は魔法の話がもっと聞きたいから大歓迎!」

 ファリーマさんの理由は、どこまでもファリーマさんらしいものだった。

「アキトがチームに入ってくれたら、俺も嬉しいよ!絶対楽しくなる!」

 ブレイズはそう言うとワクワクした顔で見つめてくる。

「チームの奴との相性も良いし、一緒にいて楽しいってのは大事な理由だよ」

 ルセフさんは軽い調子でそう続けた。
しおりを挟む
感想 329

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...