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160.ギルドに報告

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 元々俺はそんなに繊細じゃないから野営地でも眠れてはいたんだけど、それでもやっぱり黒鷹亭の個室で眠るのは別格の幸せだった。

 当たり前だけど魔物の心配をしなくて良いし、ベッドはとっても寝心地が良い。翌日の待ち合わせはゆっくりめなお昼頃だし、ギリギリになっても起きなかったら俺が起こすよというハルの優しい言葉もあった。

 おかげで何も心配せずにぐっすりと眠れたから、すっかりここ数日の野営の疲れも吹き飛んだ。

 起きた時点で食堂はもう閉まってる時間だったから、魔道収納鞄にあったパンや果物で軽めの朝食を済ませた。前に市場でもらった珍しい果物が美味しすぎてびっくりした。今度見かけたら絶対買う。

「ハル、ちょっと早いかもしれないけど、行こっか」
「昼前って言ってたから、ちょうど良いんじゃないか」
「そうかな?まあ時間早くても、待てば良いだけだし」

 ハルと二人でのんびりと歩いて向かった冒険者ギルドの前には、ブレイズがぽつんと一人で待っていた。

「アキト、おはよ」
「おはよう、ブレイズ。待たせちゃった?」
「ううん。ルセフさんはもう中だけど、俺以外はまだだよ」

 アキトは早く来るかなと思ってたと、ブレイズは自慢げな笑みを浮かべた。

「あ、そうだ。昨日の屋台のパン美味しかったよ!」
「あれ美味しいよねー」
「ジャム入りも美味しかったけど、特に肉チーズはすごかった!」

 甘辛いお肉とたっぷりチーズがすっごく合ってて、チーズ入りも美味しかったけど今度は二個とも肉チーズで良いかも。

「あ、ジャム入りはメニューに加えるかもって言ってたよ」
「本当?絶対買いに行く!」

 真剣な顔で宣言した俺を笑いながら、ブレイズは自分のおすすめ屋台を教えてくれた。

 なんでも南側の大門にあるフルーツを凍らせてから砕いた氷菓が、最近のお気に入りらしい。果物を凍らせて削ったかき氷があるとか、大学で聞いた事はあったけど食べた事は無い。機会があれば食べてみたいから、ちゃんと覚えておかないと。ワクワクしながら情報交換を続ける俺たちを、ハルは楽しそうに見守っていた。

 待ち合わせ時刻ぎりぎりになって、ファリーマさんがウォルターさんを引きずってやってきた。

「おまたせ!」
「待たせて悪かったな!」
「いえ、気にしてません」
「まだ時間前だけど、ルセフさんは待ってるから早く行こ!」

 ブレイズの言葉に、全員で急いでギルドの中へ入っていく。ちょうど昼時なこともあって、今日も酒場は大賑わいだった。名物の叫ぶような注文の声を聞きながら、俺たちは暇そうな受付に向かった。

「調査依頼を受けていたチームの者です。ルセフはどこにいますか?」

 ファリーマさんがギルドカードを提示して声をかければ、受付にいたギルド職員さんはは笑顔で地下へと案内してくれた。

「いつも地下に来るんですか?」
「いや、いつもは俺たちの借りてる家か、酒場で済ますんだが…」

 ウォルターさんとファリーマさんも不思議そうだったけれど、ギルド職員さんの後を追って階段を下りていく。

 案内されたのは、魔法の勉強の時に使った教室のような部屋だった。

 ギルド職員さんが開けてくれたドアからそっと中を覗くと、そこにはサブギルマス兼受付係のメロウさんとルセフさんの姿があった。

「今日はギルドの好意でこの部屋を借りた。あとメロウさんは全員の依頼の処理と、おれたちの分配の処理をするためにいてもらってる」
「お邪魔致します」

 丁寧なお辞儀をしたメロウさんは、今日もいつもの癒し系の笑顔だ。目が合ったのでニコッと笑いかければ、メロウさんも柔らかく笑いかけてくれた。

「報告自体はもう終わってる…満点だそうだ」

 おおーと歓声を上げたウォルターさんとファリーマさんに、ブレイズと俺が首を傾げる。

 ルセフさんいわく、調査依頼というのは他の依頼と違って採点方式なんだって。

「本当に素晴らしい調査内容でした」

 メロウさんはそう言うと、俺たちの調査内容を褒めちぎった。

 素材調査はノートも分かりやすくまとめてあるし、採取した素材もきっちりと分けられている。アグアウルフ二頭とヒュージスライムという珍しい魔物の討伐。更にクラ―ウ茸の発見と報告も加点がついて、文句なしの10点満点だそうだ。

「もしダンジョンの外にもクラ―ウ茸が広がりだしているなら、きちんと調べて周知しなくては冒険者の命に関わりますからね」

 クラ―ウ茸の件は、専門家を雇ってもう一度調査に向かわせるそうだ。

「メロウさんが手配するなら安心だ」

  ルセフさんは笑顔で頷いた。
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