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147.三体目の魔物
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二頭のアグアウルフは一定の距離を保ったままで、前衛の二人と睨みあっている。最初の攻撃を弾かれた事で警戒しているのか、すぐに攻撃に転じそうな様子は今のところ無いようだ。
「ルセフ、敵は三体だって言ったよな?」
ウォルターさんがそう小声で尋ねると、ルセフさんもすぐに口を開いた。
「ああ、もう一体も確実にいる。姿が無くても気配はあるからな…」
「あーそれもアグアウルフだったら、最悪だよなー」
軽い口調のファリーマさんの言葉に、ウォルターさんが即座に叫び返す。
「口にするな、現実になったらどうする!」
あ、そういう考え方ってこの世界にもあるんだ。俺の世界だとゲン担ぎとかフラグとか言うあれだな。それにしても、あんなに巨大な狼達と睨みあいながら、普通に会話ができるとかすごいメンタルだよな。感心しながら見つめていると、ファリーマさんは不意に俺たちを振り返った。
「アキト、ブレイズ、俺たちで探すぞ」
「はい」
「はーい」
野営地から見える範囲全てに目を凝らして探してみても、なかなかもう一体は見つからなかった。せめてどこにいるかだけでも分からないと、戦闘中に不意打ちを食らうなんていう笑えない事態になってしまう。
一体どこにいるんだと焦りながら視線を彷徨わせていると、ふと景色が歪んで見える場所がある事に気づいた。その場所だけが、水の膜越しに見ているみたいな奇妙な違和感があった。
「あの木の辺り、景色が歪んでませんか?」
自信は全くなかったけれどそう声に出せば、次の瞬間ファリーマさんが叫んだ。
「ヒュージスライムだ!」
「なっ!よりによって!?」
ヒュージスライムは中級の図鑑に載っていたから、知識として知ってはいた。
普通のスライムは駆け出し冒険者でも倒せる魔物だが、ヒュージスライムはかなり厄介な魔物だ。
擬態能力が高くてなかなか気づけない上に、捕食を繰り返しどんどん大きくなっていく。その大きな体に取り込まれたら、人間だってあっさりと溶かされてしまう。酸を飛ばしての遠距離攻撃まで使いこなしてくるだけの知能がある。
低級のスライムと同じ心構えで挑めば、危険極まりない魔物だ。
「厄介な共生関係を作ってやがったみたいだな…」
「後衛でヒュージスライムを牽制してくれるか」
ルセフさんの言葉に、俺はすぐに手をあげた。
「俺、ヒュージスライムに行きます!」
「あ、アキトがやるなら俺も!」
ブレイズが即座に俺に続いてくれた。
「分かった。俺はアグアウルフだな!」
「すぐに終わらせてそっち行くから、無理はすんなよ!」
「はい」
「はーい」
俺とブレイズ、そしてハルはヒュージスライムがいる森の方へと歩き出した。
野営地の中をゆっくりと移動して行くと、不意にハルが声を上げた。
「アキト、近づいて良いのはここまでだよ」
「ブレイズ、これ以上近づくと遠距離攻撃が来るかも」
「ああ、酸で攻撃するんだっけ?」
「うん、図鑑にはそう書いてあった」
ハルが教えてくれた安全な距離で立ち止まって、俺達はじっとヒュージスライムを観察した。視線の先にいるヒュージスライムは、擬態がばれたことに気づいたのか、今は半透明の水まんじゅうのような姿に戻っていた。
見た目は普通のスライムと似ているんだけど、大きさだけが異常なほどに大きい。目測だけど、あれは150cm以上あるんじゃないかな。一体どれだけの量を捕食したらこんなに大きくなれるんだろう。
俺たちで倒せるかな。そんな言葉が一瞬だけ頭をよぎった。
「ヒュージスライムは、気づかずに近づかれた時が一番危険なんだ。姿を見せている今は遠距離攻撃にさえ気をつければ大丈夫だよ」
そう教えてくれたハルは、俺の顔をそっと覗き込むとにこっと笑ってくれた。そのいつも通りの優しい笑みに、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。うん、大丈夫だ。
「ブレイズ。簡単じゃないと思うけど、コアを狙おう」
言いながら俺がじっと見つめるのは、ヒュージスライムの体内に浮かんでいるコアだ。大きな体に反して、その真っ白なコアは握りこぶしほどの大きさしか無い。
「それしかないと思うけど…あの大きさだときっとコアも移動できるよね」
スライムのコアというのは、体内ならどこにでも移動できるものだ。それは下級のスライムもこの中級のスライムも一緒だ。
「できると思う。だから簡単じゃないよ」
「アキト、俺たちだけで倒すつもり?」
反対なのかなと見返したブレイズは、俺以上に好戦的な瞳をしていた。俺よりもやる気の顔してるじゃないか。
「もちろん!倒してアグアウルフの手伝いに行くよ!」
「さすがアキト!最高っ!」
ブレイズの嬉しそうな声に弾かれるように、俺たちはヒュージスライムに向けて駆け出した。
「ルセフ、敵は三体だって言ったよな?」
ウォルターさんがそう小声で尋ねると、ルセフさんもすぐに口を開いた。
「ああ、もう一体も確実にいる。姿が無くても気配はあるからな…」
「あーそれもアグアウルフだったら、最悪だよなー」
軽い口調のファリーマさんの言葉に、ウォルターさんが即座に叫び返す。
「口にするな、現実になったらどうする!」
あ、そういう考え方ってこの世界にもあるんだ。俺の世界だとゲン担ぎとかフラグとか言うあれだな。それにしても、あんなに巨大な狼達と睨みあいながら、普通に会話ができるとかすごいメンタルだよな。感心しながら見つめていると、ファリーマさんは不意に俺たちを振り返った。
「アキト、ブレイズ、俺たちで探すぞ」
「はい」
「はーい」
野営地から見える範囲全てに目を凝らして探してみても、なかなかもう一体は見つからなかった。せめてどこにいるかだけでも分からないと、戦闘中に不意打ちを食らうなんていう笑えない事態になってしまう。
一体どこにいるんだと焦りながら視線を彷徨わせていると、ふと景色が歪んで見える場所がある事に気づいた。その場所だけが、水の膜越しに見ているみたいな奇妙な違和感があった。
「あの木の辺り、景色が歪んでませんか?」
自信は全くなかったけれどそう声に出せば、次の瞬間ファリーマさんが叫んだ。
「ヒュージスライムだ!」
「なっ!よりによって!?」
ヒュージスライムは中級の図鑑に載っていたから、知識として知ってはいた。
普通のスライムは駆け出し冒険者でも倒せる魔物だが、ヒュージスライムはかなり厄介な魔物だ。
擬態能力が高くてなかなか気づけない上に、捕食を繰り返しどんどん大きくなっていく。その大きな体に取り込まれたら、人間だってあっさりと溶かされてしまう。酸を飛ばしての遠距離攻撃まで使いこなしてくるだけの知能がある。
低級のスライムと同じ心構えで挑めば、危険極まりない魔物だ。
「厄介な共生関係を作ってやがったみたいだな…」
「後衛でヒュージスライムを牽制してくれるか」
ルセフさんの言葉に、俺はすぐに手をあげた。
「俺、ヒュージスライムに行きます!」
「あ、アキトがやるなら俺も!」
ブレイズが即座に俺に続いてくれた。
「分かった。俺はアグアウルフだな!」
「すぐに終わらせてそっち行くから、無理はすんなよ!」
「はい」
「はーい」
俺とブレイズ、そしてハルはヒュージスライムがいる森の方へと歩き出した。
野営地の中をゆっくりと移動して行くと、不意にハルが声を上げた。
「アキト、近づいて良いのはここまでだよ」
「ブレイズ、これ以上近づくと遠距離攻撃が来るかも」
「ああ、酸で攻撃するんだっけ?」
「うん、図鑑にはそう書いてあった」
ハルが教えてくれた安全な距離で立ち止まって、俺達はじっとヒュージスライムを観察した。視線の先にいるヒュージスライムは、擬態がばれたことに気づいたのか、今は半透明の水まんじゅうのような姿に戻っていた。
見た目は普通のスライムと似ているんだけど、大きさだけが異常なほどに大きい。目測だけど、あれは150cm以上あるんじゃないかな。一体どれだけの量を捕食したらこんなに大きくなれるんだろう。
俺たちで倒せるかな。そんな言葉が一瞬だけ頭をよぎった。
「ヒュージスライムは、気づかずに近づかれた時が一番危険なんだ。姿を見せている今は遠距離攻撃にさえ気をつければ大丈夫だよ」
そう教えてくれたハルは、俺の顔をそっと覗き込むとにこっと笑ってくれた。そのいつも通りの優しい笑みに、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。うん、大丈夫だ。
「ブレイズ。簡単じゃないと思うけど、コアを狙おう」
言いながら俺がじっと見つめるのは、ヒュージスライムの体内に浮かんでいるコアだ。大きな体に反して、その真っ白なコアは握りこぶしほどの大きさしか無い。
「それしかないと思うけど…あの大きさだときっとコアも移動できるよね」
スライムのコアというのは、体内ならどこにでも移動できるものだ。それは下級のスライムもこの中級のスライムも一緒だ。
「できると思う。だから簡単じゃないよ」
「アキト、俺たちだけで倒すつもり?」
反対なのかなと見返したブレイズは、俺以上に好戦的な瞳をしていた。俺よりもやる気の顔してるじゃないか。
「もちろん!倒してアグアウルフの手伝いに行くよ!」
「さすがアキト!最高っ!」
ブレイズの嬉しそうな声に弾かれるように、俺たちはヒュージスライムに向けて駆け出した。
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