145 / 1,179
144.素材の調査ノート
しおりを挟む
ストイン湖近くの森は、本当にたくさんの素材で溢れていた。俺だけが知っている素材もあれば、ブレイズだけが知っている素材ももちろんある。
「あ、これはウォル草って言う薬草だよ。たぶん上級素材!」
ブレイズが指差したのは、目にも鮮やかな真っ青の草だった。葉っぱの感じはちょっとほうれん草に似ている。
「へー知らなかった!よく知ってたね」
「ウォルター兄ちゃんが、俺の名前に似てるだろって自慢してたんだ」
「なるほど。そういう理由だと覚えやすいね」
ばっちり採取していって、後でウォルターさんに覚えてたよって自慢するんだって。満面の笑みを浮かべたブレイズは、今日も癒し系だね。ハルも可愛いわんこを見つめるみたいな顔してたのには、ちょっと笑ってしまった。
そんな調子で作業を続けていけば、残ったのは全く知らない謎の素材たちだ。
それぞれ手分けして調べた方が効率は良いのかもしれないけれど、俺たちはゲーム感覚で競い合う方法を選んだ。
これと決めた素材を、それぞれが図鑑を調べて探すという単純なゲームだ。
とはいっても、ここには下級と中級の図鑑しかないから、どうしても見つからないのは後でルセフさんに聞くために別のノートに書きとめることになった。ハルが用意した方が良いって教えてくれたノートが、ついに役立ったよ。ちらっと視線を向ければ、ハルは嬉しそうに笑ってくれた。
わいわいと騒ぎながら二人で競い合って調べるのは意外と楽しくて、気づけばかなりの量の素材調査が終わっていた。
「結構調べられたよね!」
「うん、ページ数もかなりあるよ」
「あ、ほんとだ。っていうか書き込み細かっ!」
「え、細かすぎる?」
「いや、これルセフさんは絶対喜ぶよ!」
力強く断言してくれたブレイズに、俺はホッと息を吐いた。
「ルセフさんに確認してもらいたいのもあるし、一旦戻ろうか」
「そうだねー」
元来た道をのんびりと戻って行くと、ルセフさんはノートを手に近くの倒木に腰を下ろしていた。どうやらこちらもある程度の調査は終わっていたみたいだ。
「ルセフさーん」
「お、ブレイズ、アキト。お疲れ」
「お疲れ様です」
「どうだった?」
ルセフさんの質問に、俺はすぐに調査ノートを取り出した。口で説明するよりも見てもらった方が早いと思ったからだ。ブレイズも自分の鞄をじっと見つめていたけど、さすがにここで採取したものを出すのは邪魔になるからと我慢してるみたいだ。
「どうぞ」
「ああ、確認させてもらうな」
調査ノートを受け取ったルセフさんは、倒木に座ったまま真剣な顔で読み始めた。なんとなく目の前で採点されてる気持ちで、そわそわしてしまう。
「うん。細かい説明まであってすごく分かりやすいな!」
ほら、いった通りでしょと言いたげなブレイズに、俺もにこりと笑みを返す。隣で黙ってみていたハルは、ルセフさんの評価に満足げに頷いている。
「よく書けてたから当然の評価だよ。頑張ったね、アキト」
なんてキラキラの笑顔で言ってくれたのには、ちょっと参った。誉めてくれるのは嬉しいんだけど、反応できない時にはできれば控えて欲しい。突然頬を赤くしたら、すごく不自然だろ。ありがとね。
「あと、これなんですけど」
そう前置きして俺が差し出したもう一冊のノートに、ルセフさんは不思議そうに首を傾げた。
「下級と中級の図鑑に載ってなかった、気になった素材です。上級図鑑なら載ってるかと…」
ぱらぱらっとノートを見たルセフさんは黙り込むと、俺とブレイズをじっと見つめながらふらりと立ち上がった。何か駄目だったかなと思った瞬間、俺とブレイズの頭をわしわしと撫で始めた。
「ここまでしてくれると思って無かったわ…おまえら最高!」
ルセフさんに褒められたんだとやっと理解した俺たちは、顔を見合わせてから思わず笑ってしまった。気が済むまで俺たちの頭を撫でてから、ルセフさんはノートを手に持ったまま歩き出した。
「ここまでしてくれたんだから、今すぐ確認に行くぞ」
鼻歌を歌い出しそうなほどに上機嫌なルセフさんの後を、俺たちは慌てて追いかけた。
「あ、これはウォル草って言う薬草だよ。たぶん上級素材!」
ブレイズが指差したのは、目にも鮮やかな真っ青の草だった。葉っぱの感じはちょっとほうれん草に似ている。
「へー知らなかった!よく知ってたね」
「ウォルター兄ちゃんが、俺の名前に似てるだろって自慢してたんだ」
「なるほど。そういう理由だと覚えやすいね」
ばっちり採取していって、後でウォルターさんに覚えてたよって自慢するんだって。満面の笑みを浮かべたブレイズは、今日も癒し系だね。ハルも可愛いわんこを見つめるみたいな顔してたのには、ちょっと笑ってしまった。
そんな調子で作業を続けていけば、残ったのは全く知らない謎の素材たちだ。
それぞれ手分けして調べた方が効率は良いのかもしれないけれど、俺たちはゲーム感覚で競い合う方法を選んだ。
これと決めた素材を、それぞれが図鑑を調べて探すという単純なゲームだ。
とはいっても、ここには下級と中級の図鑑しかないから、どうしても見つからないのは後でルセフさんに聞くために別のノートに書きとめることになった。ハルが用意した方が良いって教えてくれたノートが、ついに役立ったよ。ちらっと視線を向ければ、ハルは嬉しそうに笑ってくれた。
わいわいと騒ぎながら二人で競い合って調べるのは意外と楽しくて、気づけばかなりの量の素材調査が終わっていた。
「結構調べられたよね!」
「うん、ページ数もかなりあるよ」
「あ、ほんとだ。っていうか書き込み細かっ!」
「え、細かすぎる?」
「いや、これルセフさんは絶対喜ぶよ!」
力強く断言してくれたブレイズに、俺はホッと息を吐いた。
「ルセフさんに確認してもらいたいのもあるし、一旦戻ろうか」
「そうだねー」
元来た道をのんびりと戻って行くと、ルセフさんはノートを手に近くの倒木に腰を下ろしていた。どうやらこちらもある程度の調査は終わっていたみたいだ。
「ルセフさーん」
「お、ブレイズ、アキト。お疲れ」
「お疲れ様です」
「どうだった?」
ルセフさんの質問に、俺はすぐに調査ノートを取り出した。口で説明するよりも見てもらった方が早いと思ったからだ。ブレイズも自分の鞄をじっと見つめていたけど、さすがにここで採取したものを出すのは邪魔になるからと我慢してるみたいだ。
「どうぞ」
「ああ、確認させてもらうな」
調査ノートを受け取ったルセフさんは、倒木に座ったまま真剣な顔で読み始めた。なんとなく目の前で採点されてる気持ちで、そわそわしてしまう。
「うん。細かい説明まであってすごく分かりやすいな!」
ほら、いった通りでしょと言いたげなブレイズに、俺もにこりと笑みを返す。隣で黙ってみていたハルは、ルセフさんの評価に満足げに頷いている。
「よく書けてたから当然の評価だよ。頑張ったね、アキト」
なんてキラキラの笑顔で言ってくれたのには、ちょっと参った。誉めてくれるのは嬉しいんだけど、反応できない時にはできれば控えて欲しい。突然頬を赤くしたら、すごく不自然だろ。ありがとね。
「あと、これなんですけど」
そう前置きして俺が差し出したもう一冊のノートに、ルセフさんは不思議そうに首を傾げた。
「下級と中級の図鑑に載ってなかった、気になった素材です。上級図鑑なら載ってるかと…」
ぱらぱらっとノートを見たルセフさんは黙り込むと、俺とブレイズをじっと見つめながらふらりと立ち上がった。何か駄目だったかなと思った瞬間、俺とブレイズの頭をわしわしと撫で始めた。
「ここまでしてくれると思って無かったわ…おまえら最高!」
ルセフさんに褒められたんだとやっと理解した俺たちは、顔を見合わせてから思わず笑ってしまった。気が済むまで俺たちの頭を撫でてから、ルセフさんはノートを手に持ったまま歩き出した。
「ここまでしてくれたんだから、今すぐ確認に行くぞ」
鼻歌を歌い出しそうなほどに上機嫌なルセフさんの後を、俺たちは慌てて追いかけた。
353
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる