141 / 1,112
140.ストイン湖に到着
しおりを挟む
昨夜の不気味さが嘘のように、朝の森の中は穏やかだった。空気もなんだか新鮮な気がするし、朝露に濡れた植物がキラキラしているのがすごく綺麗だ。
「晴れて良かったな」
「前の調査依頼の日は、確か土砂降りだったな」
前衛組のそんな会話を聞きながら歩いていると、ふと気になる植物が目に留まった。今回は移動中は採取をしないと事前に決められていたため、たとえ気になる植物があっても立ち止まる事はできない。
あれって中級の図鑑で見たやつかな。そう考えながらじっと見つめていると、俺の視線の先に気づいたハルがそっと教えてくれた。
「あれはバーキス草だね。特に腹痛に効く薬草の一種で、中級の図鑑に載ってたやつだよ」
あ、やっぱりそうなんだ。ありがとうと小さくお辞儀をすれば、ハルはどういたしましてと言いながら柔らかく笑ってくれた。
そこからはチームの皆ともたまに話しながら歩いていたんだけど、ふと気になる物があるとすかさずハルが教えてくれるんだよね。
しかもあれは常時買取の薬草だとか、あれは食べられる実だとかそんなちょっとした情報ばかり教えてくれるんだ。図鑑にメモしたいと覆わない程度のちょっとした情報に、俺はワクワクしながら耳を傾けていた。
「アキト、疲れてない?」
「まだ大丈夫!ありがと、ブレイズ」
むしろ昨日よりも元気な気がすると思いながら歩いていると、木々の切れ目から不意に綺麗に澄んだ水面が見えた。
「あれって…もしかして?」
同じ景色を見つめていたブレイズがそう声を上げれば、ルセフさんはすぐに答えた。
「ああ、目的地だな」
「なかなか綺麗な湖みたいだな」
「こんな所に湖があるなんて知らなかったぜ」
そんな事をわいわいと話しながら、皆で一緒に進んでいく。目的地がもうすぐそことなれば、進むスピードだって自然と速くなる。俺たちは競うように、小走りでストイン湖へと辿り着いた。
まず目に飛び込んできたのは澄み切った水を湛えた湖と、わずかばかりの平地、そして鬱蒼とした木々に覆われた森だった。
「今の所、魔物の気配は無いな」
「よっしゃ!」
ルセフさんがそう言った瞬間、チームのメンバーはバラバラに散らばっていった。
ウォルターさんは木々の方へ一直線だったし、ファリーマさんは森の辺りの茂みを覗き込んでいる。ルセフさんは平地に進んでいくと、どさりと荷物を下ろしている。
「なあ、アキト、湖見に行こう!」
「あ、うん!」
ブレイズに誘ってもらった俺は、まっすぐ湖へと近づいていった。ハルも当然後ろから着いてくる。
水底にある藻や水草まで視認できる水の透明度に、俺とブレイズは思わず歓声を上げた。小魚が泳いでいるのも見えたから、大きな魚もいるかもしれない。
「おーい、満足したら集合してくれー」
ルセフさんの言葉で、散っていたメンバーが集合した。
「皆、お疲れ様!」
「お疲れー」
「お疲れ様です」
「お疲れ、無事に辿り着けたな」
「ああ…ちょっと魔物の気配が無さすぎるのが気になるんだがな…」
「それもそうだな」
会話の意味が分からなくて首を傾げると、俺の隣でブレイズも同じく首を傾げていた。
「ああ、アキトとブレイズはまだ知らないよな」
調査依頼での目的地というのは、今までギルドでは活用されていなかった場所ばかりが対象になる。冒険者があまり来ない場所というのは、それだけ魔物が多くなる傾向にあるらしい。まあ、ちょっと考えれば納得だよね。
「そこまで強いのが出るとかじゃないんだけどな、単純に数が多い事が多いんだよ」
事前に討伐のためだけの依頼も出ていた筈だから、そいつらが張り切っただけならまあ良いんだけどな。そう呟いたルセフさんは、眉間にしわを寄せたまま、そっと辺りを見渡した。
「晴れて良かったな」
「前の調査依頼の日は、確か土砂降りだったな」
前衛組のそんな会話を聞きながら歩いていると、ふと気になる植物が目に留まった。今回は移動中は採取をしないと事前に決められていたため、たとえ気になる植物があっても立ち止まる事はできない。
あれって中級の図鑑で見たやつかな。そう考えながらじっと見つめていると、俺の視線の先に気づいたハルがそっと教えてくれた。
「あれはバーキス草だね。特に腹痛に効く薬草の一種で、中級の図鑑に載ってたやつだよ」
あ、やっぱりそうなんだ。ありがとうと小さくお辞儀をすれば、ハルはどういたしましてと言いながら柔らかく笑ってくれた。
そこからはチームの皆ともたまに話しながら歩いていたんだけど、ふと気になる物があるとすかさずハルが教えてくれるんだよね。
しかもあれは常時買取の薬草だとか、あれは食べられる実だとかそんなちょっとした情報ばかり教えてくれるんだ。図鑑にメモしたいと覆わない程度のちょっとした情報に、俺はワクワクしながら耳を傾けていた。
「アキト、疲れてない?」
「まだ大丈夫!ありがと、ブレイズ」
むしろ昨日よりも元気な気がすると思いながら歩いていると、木々の切れ目から不意に綺麗に澄んだ水面が見えた。
「あれって…もしかして?」
同じ景色を見つめていたブレイズがそう声を上げれば、ルセフさんはすぐに答えた。
「ああ、目的地だな」
「なかなか綺麗な湖みたいだな」
「こんな所に湖があるなんて知らなかったぜ」
そんな事をわいわいと話しながら、皆で一緒に進んでいく。目的地がもうすぐそことなれば、進むスピードだって自然と速くなる。俺たちは競うように、小走りでストイン湖へと辿り着いた。
まず目に飛び込んできたのは澄み切った水を湛えた湖と、わずかばかりの平地、そして鬱蒼とした木々に覆われた森だった。
「今の所、魔物の気配は無いな」
「よっしゃ!」
ルセフさんがそう言った瞬間、チームのメンバーはバラバラに散らばっていった。
ウォルターさんは木々の方へ一直線だったし、ファリーマさんは森の辺りの茂みを覗き込んでいる。ルセフさんは平地に進んでいくと、どさりと荷物を下ろしている。
「なあ、アキト、湖見に行こう!」
「あ、うん!」
ブレイズに誘ってもらった俺は、まっすぐ湖へと近づいていった。ハルも当然後ろから着いてくる。
水底にある藻や水草まで視認できる水の透明度に、俺とブレイズは思わず歓声を上げた。小魚が泳いでいるのも見えたから、大きな魚もいるかもしれない。
「おーい、満足したら集合してくれー」
ルセフさんの言葉で、散っていたメンバーが集合した。
「皆、お疲れ様!」
「お疲れー」
「お疲れ様です」
「お疲れ、無事に辿り着けたな」
「ああ…ちょっと魔物の気配が無さすぎるのが気になるんだがな…」
「それもそうだな」
会話の意味が分からなくて首を傾げると、俺の隣でブレイズも同じく首を傾げていた。
「ああ、アキトとブレイズはまだ知らないよな」
調査依頼での目的地というのは、今までギルドでは活用されていなかった場所ばかりが対象になる。冒険者があまり来ない場所というのは、それだけ魔物が多くなる傾向にあるらしい。まあ、ちょっと考えれば納得だよね。
「そこまで強いのが出るとかじゃないんだけどな、単純に数が多い事が多いんだよ」
事前に討伐のためだけの依頼も出ていた筈だから、そいつらが張り切っただけならまあ良いんだけどな。そう呟いたルセフさんは、眉間にしわを寄せたまま、そっと辺りを見渡した。
314
お気に入りに追加
4,145
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる