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130.森の中の道

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129話と130話の予約投稿の順番を失敗してました。
読んで下さっていた方、ごめんなさい。
129話も合わせて読んで頂けると助かります。

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 今回の調査依頼の目的地であるストイン湖は、双子山と呼ばれているふたつの山の間に位置しているらしい。ストイン湖への行き方は何通りも存在しているが、この森の道を選んだ理由は他の道よりも高低差が少ないからだそうだ。

「街道から行くと、登山みたいになるんだってルセフが言ってたぞ」

 ファリーマさんはブレイズと俺を振り返ると、爽やかな笑顔でそう教えてくれた。

 もしそのルートを選ばれてたら、体力に自信の無い俺は絶対に苦戦しただろうな。この道を選んでくれて、本当に良かった。

 今俺たちが歩いているのは、しっかりと踏み固められてできた獣道のような道だ。

 伸びた枝が道を塞いでいることもあるが、先行しているウォルターさんとルセフさんが障害物を取り除いてくれるから、後衛の俺たちは歩く事だけに集中できる。

 この世界に来てすぐの頃だったら、正直もっと苦戦していたと思う。でも今は、ハルと色んな森に行った経験がある。特に遅れることもなく着いていけることに、俺はホッと安堵した。

「アキト、まだ疲れてない?」
「大丈夫だよ。ありがとう、ブレイズ」
「ルセフさんに頼まれたんだから、ちゃんと見張ってるからね」

 無理はしちゃだめだよとにこにこ笑顔のブレイズに癒されながら、俺たちは並んで歩き続けた。



「そろそろ休憩にするか」

 ルセフさんがそう声をかけてくれたのは、ちょっと疲れてきたかなと思った頃だった。あまりにすごいタイミングに、思わずハルを見上げてしまった。ハルには不思議そうな顔をされてしまったけどね。

 ハルもルセフさんも、一体どうやって他人の疲れ具合を測ってるんだろう。ちょっと謎だ。

「ファリーマ、頼む」

 ルセフさんの言葉で、ファリーマさんが鞄から取り出したのはセウカだった。ナルクアの森で採取したことのある、あの蛍光青色の果物だ。

 ファリーマさんが水魔法を使って冷やしたセウカは、すぐにルセフさんの手に渡った。ルセフさんは調理用のナイフを使って五等分に切り分けると、手ずから配ってくれた。

「いただきます」

 一声かけてかじりつけば、乾いた喉にほんのり甘くてジューシーな冷たい果汁が染み渡る。

 火魔法で温めたことはあったけど、水魔法で冷やすのはまだやった事がなかったな。今度果物か何かで挑戦してみようと、俺は密かに決意した。

「俺、セウカ好きなんだよねー」
「うん、美味しいよね」

 近くにあった倒木にブレイズと二人並んで腰を下ろし、大きく口を開けてセウカの実にかぶりつく。バラ―ブ村でそのまま食べた時も美味しかったけど、セウカって冷やした方が美味しさが増すんだな。

「これも飲んどけよ」

 ウォルターさんが渡してくれたコップの水は、口に運ぶとふわりと柑橘の風味が広がった。ちょっと砂糖と塩も入っている気がする。スポーツドリンクみたいな味だ。

「美味しい!水じゃないんですね?」
「ああ、俺特製の果実水ってとこかな。水よりも疲れが取れるんだよ」

 自慢げに笑ったルセフさんが、今日の朝から仕込んでくれたらしい。あの早朝の待ち合わせ時間より前に仕込んでくれてたとか感謝しか無い。

「すごく美味しいです」
「それは良かった」



 時々休憩を挟みながら進み続けていると、唐突に開けた場所に出た。

 ルセフさんによればここは冒険者や狩人が休憩するために、わざわざ開拓した休憩所らしい。わざと切り株を残してくれているので、座る場所にも困らなさそうだ。

「じゃあ、ここでお昼にしようか」

 ルセフさんが取り出したのは大きめのパンに切り込みを入れ、その切り込みに野菜と焼いたお肉をたっぷり挟んだものだった。

 お肉はジューシーで鶏肉っぽいから、これはもしかしてマルックスかな。味付けは塩胡椒だけでかなりシンプルなんだけど、トマトのような野菜とよく合っていてめちゃくちゃ美味しい。

「ルセフさん、これすっごく美味しいです!」

 思わず大きな声でそう言ってしまったが、ルセフさんは嬉しそうに笑ってくれた。

「アキトは可愛いな」
「俺もこれすごい好き!」
「うん、ブレイズも可愛いな」

 ルセフさんは満面の笑みを浮かべると、俺とブレイズの頭をそっと撫でてくれた。
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