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123.ブレイズの仲間たち
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ウォルターさんはすっと立ち上がると、ブレイズの頭をがしがしと撫でまわし始めた。身長的にはブレイズの方が高いから撫でにくいと思うんだけど、よく見ればブレイズが一瞬で中腰になったおかげで問題は無いみたいだ。
高速で振られている尻尾が、ブレイズの後ろに見える気がする。
「お前、凄い奴連れてきたな…」
「凄い奴?あ、アキトの魔法は確かにすごかったよ!ドロシーさんの弟子なんだって」
ブレイズが何気なく答えた言葉に、えっと大きな声があがった。
「ドロシーさんの弟子なのか!?」
ウォルターさんの後ろからバッと身を乗り出してきたのは、笑顔のまぶしい筋肉質なお兄さんだった。短めの黒髪のせいか、スポーツマンって感じがする爽やかマッチョさんだ。
「俺、魔法使いのファリーマ。なあなあ、お前の得意魔法って何?」
明るく声を掛けてくれたけど、俺は意外な言葉に固まってしまった。
だってあの前衛職ができそうな立派な筋肉で、まさか俺と同じ魔法使いだとは思わないよ。あ、でも、そういわれてみれば、確かに魔法使い用のローブを着てるな。
「えーと…得意魔法は土魔法です」
動揺しながらも何とか答えれば、ファリーマさんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「土魔法か!ちなみに石派?つぶて派?」
続いた質問に答えようとしたけれど、俺よりも先にウォルターさんが口を開いた。
「黙ってろ、魔法馬鹿!」
「魔法馬鹿って何だよ、ウォルターは盾馬鹿だろうが!」
「お前のせいで話が進まないんだよ!」
「はぁ?お前、今ブレイズ撫でてるだけだっただろうが!」
急にそんな言い合いが始まって驚いたけれど、目があったブレイズは口パクで大丈夫と言いながら笑ってくれた。え、どんどんヒートアップしてるし、これちっとも大丈夫じゃないよね。うるさい酒場の中でも、少し視線が集まって来てる気がするし。
「ウォルター、ファリーマ、黙れ」
低い声でぽつりとそう呟いたのは、ウォルターさんの隣に座っている眼鏡をかけたクールそうな男性だった。特別大きな声でも無かったのに、声を掛けられた二人はびくりと体を揺らしと一気に黙り込んだ。
「わるかった」
「ごめん」
素直に謝った二人をじろりと睨みつけてから、俺の方を見た男性はにんまりと笑ってくれた。さっきまではクールな人って感じだったのに、途端に人懐こい雰囲気に変わったのに驚いてしまった。
「本当にごめんね、うちのバカたちが。俺は剣士のルセフっていうんだ」
ルセフさんはそう言うと、立ったままだった俺とブレイズに椅子をすすめてくれた。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「うちのバカたちはいつもこんなだから、びっくりさせてごめんね」
「あ、アキト、ルセフさんが図鑑を読めって言った人だよ!」
「ん?ブレイズ急にどうした?」
不思議そうな表情のルセフさんに、ブレイズは満面の笑みで答える。
「アキトも図鑑を読み込むんだって」
「ああ、それでお前ランクアップ試験後に謝ってきたのか」
ルセフさんは苦笑しながらも、温かい目でブレイズを見つめていた。俺から話を聞くなり謝りたいって言ってたもんな。ちゃんと謝ってる辺りがブレイズって感じだ。
「依頼の話の前に、まあまずは飯でもどうだ?アキトとブレイズの分は俺がおごるよ」
「え、良いんですか?」
「アキト、ルセフさんはね。気に入った人にはおごりたい人なんだよ」
「でも会ったばっかりなのに」
「図鑑を読み込む同士には久しぶりに会ったからなぁ」
ルセフさんはそう言うと、鞄から下位の図鑑を取り出して見せてくれた。
ぱらぱらとめくって見せてくれた図鑑は、ページの隅がちぎれたり折れたりしている。この世界の紙の質の問題だろうか。どれだけ丁寧に扱っていても、使い込むうちにどうしても劣化してしまうんだよな。
これは確かに同士だなと納得しながら、俺もそっと鞄から下位の図鑑を取り出した。俺のものも同じように劣化しているのを見て、ルセフさんは実に楽しそうに笑い出した。
「書き込みもしてるのか?」
「あ、してます」
「自分の図鑑を作る派か」
「はい!」
言いながらちらりとハルを見つめてしまったのは、もう癖みたいなものだった。ルセフさんの図鑑を覗き込んでいたハルは、俺の視線に気づくとにこりと笑ってくれた。
「ああ、ますます気に入った!」
「自分の図鑑って何?」
「ブレイズはそこからか…まあまずは飯だ」
「わーい」
「何が食べたいとかあるか?」
ルセフさんの質問に、ブレイズは元気いっぱいで答える。
「俺おまかせで!」
「あ、じゃあ俺もおまかせでお願いします」
好き嫌いを確認したルセフさんは店員に軽く手を上げると、注文をし始めた。定番の人気の料理から、聞いたことのない料理まで手際よく注文していく姿を思わずじっと見つめてしまう。そこまで大きな声でも無いのに、ちゃんとオーダーが通ってるんだよ。正直に言えば、羨ましい。
「とりあえずこんなもんかな、足りなければ追加するから遠慮はするなよ」
「ありがとうございます」
「で、ウォルター、ファリーマ。お前らは注文はしないのか?」
ルセフさんがそう問いかければ、ウォルターさんとファリーマさんは弾かれたように顔を上げた。さっき叱られてから、ずっと静かにうなだれてたから気になってたんだよね。
「こっちマルックスのグリル!」
「俺は日替わりのナーパ草のシチューとパン!」
急に何事も無かったように元気いっぱいで注文をし出した二人に、ルセフさんは呆れ顔だ。ブレイズは俺に顔を近づけると、そっと耳元で囁いた。
「俺の仲間、面白いでしょう?」
高速で振られている尻尾が、ブレイズの後ろに見える気がする。
「お前、凄い奴連れてきたな…」
「凄い奴?あ、アキトの魔法は確かにすごかったよ!ドロシーさんの弟子なんだって」
ブレイズが何気なく答えた言葉に、えっと大きな声があがった。
「ドロシーさんの弟子なのか!?」
ウォルターさんの後ろからバッと身を乗り出してきたのは、笑顔のまぶしい筋肉質なお兄さんだった。短めの黒髪のせいか、スポーツマンって感じがする爽やかマッチョさんだ。
「俺、魔法使いのファリーマ。なあなあ、お前の得意魔法って何?」
明るく声を掛けてくれたけど、俺は意外な言葉に固まってしまった。
だってあの前衛職ができそうな立派な筋肉で、まさか俺と同じ魔法使いだとは思わないよ。あ、でも、そういわれてみれば、確かに魔法使い用のローブを着てるな。
「えーと…得意魔法は土魔法です」
動揺しながらも何とか答えれば、ファリーマさんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「土魔法か!ちなみに石派?つぶて派?」
続いた質問に答えようとしたけれど、俺よりも先にウォルターさんが口を開いた。
「黙ってろ、魔法馬鹿!」
「魔法馬鹿って何だよ、ウォルターは盾馬鹿だろうが!」
「お前のせいで話が進まないんだよ!」
「はぁ?お前、今ブレイズ撫でてるだけだっただろうが!」
急にそんな言い合いが始まって驚いたけれど、目があったブレイズは口パクで大丈夫と言いながら笑ってくれた。え、どんどんヒートアップしてるし、これちっとも大丈夫じゃないよね。うるさい酒場の中でも、少し視線が集まって来てる気がするし。
「ウォルター、ファリーマ、黙れ」
低い声でぽつりとそう呟いたのは、ウォルターさんの隣に座っている眼鏡をかけたクールそうな男性だった。特別大きな声でも無かったのに、声を掛けられた二人はびくりと体を揺らしと一気に黙り込んだ。
「わるかった」
「ごめん」
素直に謝った二人をじろりと睨みつけてから、俺の方を見た男性はにんまりと笑ってくれた。さっきまではクールな人って感じだったのに、途端に人懐こい雰囲気に変わったのに驚いてしまった。
「本当にごめんね、うちのバカたちが。俺は剣士のルセフっていうんだ」
ルセフさんはそう言うと、立ったままだった俺とブレイズに椅子をすすめてくれた。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「うちのバカたちはいつもこんなだから、びっくりさせてごめんね」
「あ、アキト、ルセフさんが図鑑を読めって言った人だよ!」
「ん?ブレイズ急にどうした?」
不思議そうな表情のルセフさんに、ブレイズは満面の笑みで答える。
「アキトも図鑑を読み込むんだって」
「ああ、それでお前ランクアップ試験後に謝ってきたのか」
ルセフさんは苦笑しながらも、温かい目でブレイズを見つめていた。俺から話を聞くなり謝りたいって言ってたもんな。ちゃんと謝ってる辺りがブレイズって感じだ。
「依頼の話の前に、まあまずは飯でもどうだ?アキトとブレイズの分は俺がおごるよ」
「え、良いんですか?」
「アキト、ルセフさんはね。気に入った人にはおごりたい人なんだよ」
「でも会ったばっかりなのに」
「図鑑を読み込む同士には久しぶりに会ったからなぁ」
ルセフさんはそう言うと、鞄から下位の図鑑を取り出して見せてくれた。
ぱらぱらとめくって見せてくれた図鑑は、ページの隅がちぎれたり折れたりしている。この世界の紙の質の問題だろうか。どれだけ丁寧に扱っていても、使い込むうちにどうしても劣化してしまうんだよな。
これは確かに同士だなと納得しながら、俺もそっと鞄から下位の図鑑を取り出した。俺のものも同じように劣化しているのを見て、ルセフさんは実に楽しそうに笑い出した。
「書き込みもしてるのか?」
「あ、してます」
「自分の図鑑を作る派か」
「はい!」
言いながらちらりとハルを見つめてしまったのは、もう癖みたいなものだった。ルセフさんの図鑑を覗き込んでいたハルは、俺の視線に気づくとにこりと笑ってくれた。
「ああ、ますます気に入った!」
「自分の図鑑って何?」
「ブレイズはそこからか…まあまずは飯だ」
「わーい」
「何が食べたいとかあるか?」
ルセフさんの質問に、ブレイズは元気いっぱいで答える。
「俺おまかせで!」
「あ、じゃあ俺もおまかせでお願いします」
好き嫌いを確認したルセフさんは店員に軽く手を上げると、注文をし始めた。定番の人気の料理から、聞いたことのない料理まで手際よく注文していく姿を思わずじっと見つめてしまう。そこまで大きな声でも無いのに、ちゃんとオーダーが通ってるんだよ。正直に言えば、羨ましい。
「とりあえずこんなもんかな、足りなければ追加するから遠慮はするなよ」
「ありがとうございます」
「で、ウォルター、ファリーマ。お前らは注文はしないのか?」
ルセフさんがそう問いかければ、ウォルターさんとファリーマさんは弾かれたように顔を上げた。さっき叱られてから、ずっと静かにうなだれてたから気になってたんだよね。
「こっちマルックスのグリル!」
「俺は日替わりのナーパ草のシチューとパン!」
急に何事も無かったように元気いっぱいで注文をし出した二人に、ルセフさんは呆れ顔だ。ブレイズは俺に顔を近づけると、そっと耳元で囁いた。
「俺の仲間、面白いでしょう?」
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