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122.チームでの依頼

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 とりあえず気持ちは落ち着いたとはいえ、さすがに黒鷹亭の部屋に二人だけでこもる勇気は俺には無かった。絶対に間が持たない自信がある。

「今日はどうする?」
「んー何か良い依頼が無いか、とりあえずギルドに行きたいかな」

 まあ、もうお昼が近いこの時間から冒険者ギルドに行っても、良い依頼は残ってないと思うんだけどね。でも宿で二人きりよりは気がまぎれると思うんだ。

 ハルもそれが良いねとあっさりと頷いてくれたから、もしかしたらハルも俺と同じ気持ちなのかもしれない。



 黒鷹亭を出てトライプールの街中を歩いていると、不意に後ろから声がかかった。

「アキトー!」

 元気いっぱいの声に慌てて振り返れば、長身の青年がぶんぶんと手を振っていた。ギルドのランクアップ試験で知り合ったわんこのような年下青年、ブレイズだ。

「あ、ブレイズ!おはよ」
「おはよう、ねぇ今日って暇?」

 挨拶もそこそこに、ブレイズは唐突にそう切り出した。

「これから依頼を見に行くつもりだったんだけど」
「つまり、まだ受けてないってこと?」
「あ、うん」
「じゃあ一緒に依頼受けない?」

 ひたと俺を見据えたブレイズの言葉に、驚いてしまった。

「一緒に?」
「うん!俺の仲間も一緒に!」

 ニコニコ笑顔のブレイズのお誘いに、正直心が揺れた。冒険者になってから、一緒に依頼を受けようなんて誘ってもらったのは初めてだ。受けて良いなら受けたい気持ちはあるけど。俺はちらりとハルを見上げた。

「ランクが上がればチームで依頼を受ける事も増えるし、これは良い機会だと思うよ」

 視線の意味にすぐに気づいてくれたハルは、そう言うと笑顔で頷いてくれた。ハルが良い機会というなら受けておこうかな。ブレイズと一緒に依頼も楽しそうだし。

「どう?興味ある?」
「うん、興味はあるんだけど…」

 依頼内容を聞いてから考えたいと続けようとしたけど、すかさずハルに止められた。

「あ、依頼内容は一緒に依頼を受ける仲間が全員集まってから、依頼票を見ながら確認をするのが一般的だよ」

 あ、そういうものなのか。俺はハルに視線だけでありがとうと返した。

「ちょっとでも興味があるなら、一緒にギルドの酒場に行こうよ。そこに俺の仲間がいるんだ」

 もちろん詳しい話を聞いて無理だとか嫌だと思ったら、遠慮なく断ってくれて良いと断言してくれた事にホッとした。ブレイズは俺と同じDランクだけど、ブレイズの仲間は全員Cランクって言ってたもんな。俺の実力的に無理そうな依頼だったら、申し訳ないけどお断りさせて貰おう。

「分かった」

 笑顔のブレイズと並んで、俺は冒険者ギルドを目指して歩き出した。



 ギルドに辿り着くと、ブレイズは弾むような足取りで中へと入っていく。まだ昼前なのに既に混みあっている酒場の中を、ブレイズはすいすいと進んでいく。

 目的のテーブルは一番奥にあったようだ。三人の人が座っているテーブルに近づいたブレイズは、周りの声に負けないようにと声を張り上げた。

「ウォルター兄ちゃん、助っ人つれてきたよ!」

 最初に振り向いた男性には、見覚えがあった。ランクアップ試験の時に、ブレイズの合格を大声で誉めてたあのマッチョな男性だ。

「は?お前トライプールに知り合いなんていたのか?」
「こんにちは」

 ランクアップ試験で知り合ったんだと、ブレイズは自慢げに報告している。誉めてほしそうな顔がすごくわんこで、ちょっとなごんでしまう。

「よう、ブレイズに無理に連れてこられたのかい?」

 心配そうな顔でそう聞いてくれるのに、俺は手を振って否定した。

「あ、いえ。依頼の話聞きたくて、自分の意思でついてきました」
「そうか、なら良かった。俺は盾使いのウォルターって言うんだ。ちなみに!こいつの実の兄では!無いからな!」
「えー兄ちゃんみたいなものじゃん」

 笑顔で挨拶をしてくれたウォルターさんに、俺は慌てて答えた。

「俺は、えーと、魔法使いのアキトです」

 名前の前の盾使いってのは多分戦い方の事だよな。それなら俺は多分魔法使いだと思う。視界の端でハルが頷いてるから合ってる筈。

「え、アキトってあのアキト?」

 あのアキトとか言われても、困ってしまう。どのアキトですか。

「精霊が見えるっていうあの…?」

 あ、はいそのアキトですとは言わなかったけど、ウォルターさんは勝手に納得してくれたみたいだった。
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