123 / 1,112
122.チームでの依頼
しおりを挟む
とりあえず気持ちは落ち着いたとはいえ、さすがに黒鷹亭の部屋に二人だけでこもる勇気は俺には無かった。絶対に間が持たない自信がある。
「今日はどうする?」
「んー何か良い依頼が無いか、とりあえずギルドに行きたいかな」
まあ、もうお昼が近いこの時間から冒険者ギルドに行っても、良い依頼は残ってないと思うんだけどね。でも宿で二人きりよりは気がまぎれると思うんだ。
ハルもそれが良いねとあっさりと頷いてくれたから、もしかしたらハルも俺と同じ気持ちなのかもしれない。
黒鷹亭を出てトライプールの街中を歩いていると、不意に後ろから声がかかった。
「アキトー!」
元気いっぱいの声に慌てて振り返れば、長身の青年がぶんぶんと手を振っていた。ギルドのランクアップ試験で知り合ったわんこのような年下青年、ブレイズだ。
「あ、ブレイズ!おはよ」
「おはよう、ねぇ今日って暇?」
挨拶もそこそこに、ブレイズは唐突にそう切り出した。
「これから依頼を見に行くつもりだったんだけど」
「つまり、まだ受けてないってこと?」
「あ、うん」
「じゃあ一緒に依頼受けない?」
ひたと俺を見据えたブレイズの言葉に、驚いてしまった。
「一緒に?」
「うん!俺の仲間も一緒に!」
ニコニコ笑顔のブレイズのお誘いに、正直心が揺れた。冒険者になってから、一緒に依頼を受けようなんて誘ってもらったのは初めてだ。受けて良いなら受けたい気持ちはあるけど。俺はちらりとハルを見上げた。
「ランクが上がればチームで依頼を受ける事も増えるし、これは良い機会だと思うよ」
視線の意味にすぐに気づいてくれたハルは、そう言うと笑顔で頷いてくれた。ハルが良い機会というなら受けておこうかな。ブレイズと一緒に依頼も楽しそうだし。
「どう?興味ある?」
「うん、興味はあるんだけど…」
依頼内容を聞いてから考えたいと続けようとしたけど、すかさずハルに止められた。
「あ、依頼内容は一緒に依頼を受ける仲間が全員集まってから、依頼票を見ながら確認をするのが一般的だよ」
あ、そういうものなのか。俺はハルに視線だけでありがとうと返した。
「ちょっとでも興味があるなら、一緒にギルドの酒場に行こうよ。そこに俺の仲間がいるんだ」
もちろん詳しい話を聞いて無理だとか嫌だと思ったら、遠慮なく断ってくれて良いと断言してくれた事にホッとした。ブレイズは俺と同じDランクだけど、ブレイズの仲間は全員Cランクって言ってたもんな。俺の実力的に無理そうな依頼だったら、申し訳ないけどお断りさせて貰おう。
「分かった」
笑顔のブレイズと並んで、俺は冒険者ギルドを目指して歩き出した。
ギルドに辿り着くと、ブレイズは弾むような足取りで中へと入っていく。まだ昼前なのに既に混みあっている酒場の中を、ブレイズはすいすいと進んでいく。
目的のテーブルは一番奥にあったようだ。三人の人が座っているテーブルに近づいたブレイズは、周りの声に負けないようにと声を張り上げた。
「ウォルター兄ちゃん、助っ人つれてきたよ!」
最初に振り向いた男性には、見覚えがあった。ランクアップ試験の時に、ブレイズの合格を大声で誉めてたあのマッチョな男性だ。
「は?お前トライプールに知り合いなんていたのか?」
「こんにちは」
ランクアップ試験で知り合ったんだと、ブレイズは自慢げに報告している。誉めてほしそうな顔がすごくわんこで、ちょっとなごんでしまう。
「よう、ブレイズに無理に連れてこられたのかい?」
心配そうな顔でそう聞いてくれるのに、俺は手を振って否定した。
「あ、いえ。依頼の話聞きたくて、自分の意思でついてきました」
「そうか、なら良かった。俺は盾使いのウォルターって言うんだ。ちなみに!こいつの実の兄では!無いからな!」
「えー兄ちゃんみたいなものじゃん」
笑顔で挨拶をしてくれたウォルターさんに、俺は慌てて答えた。
「俺は、えーと、魔法使いのアキトです」
名前の前の盾使いってのは多分戦い方の事だよな。それなら俺は多分魔法使いだと思う。視界の端でハルが頷いてるから合ってる筈。
「え、アキトってあのアキト?」
あのアキトとか言われても、困ってしまう。どのアキトですか。
「精霊が見えるっていうあの…?」
あ、はいそのアキトですとは言わなかったけど、ウォルターさんは勝手に納得してくれたみたいだった。
「今日はどうする?」
「んー何か良い依頼が無いか、とりあえずギルドに行きたいかな」
まあ、もうお昼が近いこの時間から冒険者ギルドに行っても、良い依頼は残ってないと思うんだけどね。でも宿で二人きりよりは気がまぎれると思うんだ。
ハルもそれが良いねとあっさりと頷いてくれたから、もしかしたらハルも俺と同じ気持ちなのかもしれない。
黒鷹亭を出てトライプールの街中を歩いていると、不意に後ろから声がかかった。
「アキトー!」
元気いっぱいの声に慌てて振り返れば、長身の青年がぶんぶんと手を振っていた。ギルドのランクアップ試験で知り合ったわんこのような年下青年、ブレイズだ。
「あ、ブレイズ!おはよ」
「おはよう、ねぇ今日って暇?」
挨拶もそこそこに、ブレイズは唐突にそう切り出した。
「これから依頼を見に行くつもりだったんだけど」
「つまり、まだ受けてないってこと?」
「あ、うん」
「じゃあ一緒に依頼受けない?」
ひたと俺を見据えたブレイズの言葉に、驚いてしまった。
「一緒に?」
「うん!俺の仲間も一緒に!」
ニコニコ笑顔のブレイズのお誘いに、正直心が揺れた。冒険者になってから、一緒に依頼を受けようなんて誘ってもらったのは初めてだ。受けて良いなら受けたい気持ちはあるけど。俺はちらりとハルを見上げた。
「ランクが上がればチームで依頼を受ける事も増えるし、これは良い機会だと思うよ」
視線の意味にすぐに気づいてくれたハルは、そう言うと笑顔で頷いてくれた。ハルが良い機会というなら受けておこうかな。ブレイズと一緒に依頼も楽しそうだし。
「どう?興味ある?」
「うん、興味はあるんだけど…」
依頼内容を聞いてから考えたいと続けようとしたけど、すかさずハルに止められた。
「あ、依頼内容は一緒に依頼を受ける仲間が全員集まってから、依頼票を見ながら確認をするのが一般的だよ」
あ、そういうものなのか。俺はハルに視線だけでありがとうと返した。
「ちょっとでも興味があるなら、一緒にギルドの酒場に行こうよ。そこに俺の仲間がいるんだ」
もちろん詳しい話を聞いて無理だとか嫌だと思ったら、遠慮なく断ってくれて良いと断言してくれた事にホッとした。ブレイズは俺と同じDランクだけど、ブレイズの仲間は全員Cランクって言ってたもんな。俺の実力的に無理そうな依頼だったら、申し訳ないけどお断りさせて貰おう。
「分かった」
笑顔のブレイズと並んで、俺は冒険者ギルドを目指して歩き出した。
ギルドに辿り着くと、ブレイズは弾むような足取りで中へと入っていく。まだ昼前なのに既に混みあっている酒場の中を、ブレイズはすいすいと進んでいく。
目的のテーブルは一番奥にあったようだ。三人の人が座っているテーブルに近づいたブレイズは、周りの声に負けないようにと声を張り上げた。
「ウォルター兄ちゃん、助っ人つれてきたよ!」
最初に振り向いた男性には、見覚えがあった。ランクアップ試験の時に、ブレイズの合格を大声で誉めてたあのマッチョな男性だ。
「は?お前トライプールに知り合いなんていたのか?」
「こんにちは」
ランクアップ試験で知り合ったんだと、ブレイズは自慢げに報告している。誉めてほしそうな顔がすごくわんこで、ちょっとなごんでしまう。
「よう、ブレイズに無理に連れてこられたのかい?」
心配そうな顔でそう聞いてくれるのに、俺は手を振って否定した。
「あ、いえ。依頼の話聞きたくて、自分の意思でついてきました」
「そうか、なら良かった。俺は盾使いのウォルターって言うんだ。ちなみに!こいつの実の兄では!無いからな!」
「えー兄ちゃんみたいなものじゃん」
笑顔で挨拶をしてくれたウォルターさんに、俺は慌てて答えた。
「俺は、えーと、魔法使いのアキトです」
名前の前の盾使いってのは多分戦い方の事だよな。それなら俺は多分魔法使いだと思う。視界の端でハルが頷いてるから合ってる筈。
「え、アキトってあのアキト?」
あのアキトとか言われても、困ってしまう。どのアキトですか。
「精霊が見えるっていうあの…?」
あ、はいそのアキトですとは言わなかったけど、ウォルターさんは勝手に納得してくれたみたいだった。
360
お気に入りに追加
4,145
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる