121 / 1,179
120.【ハル視点】薬の治療
しおりを挟む
領都の中を歩くというただそれだけの行為に、これほど気を使ったのは初めてだ。そう断言できるぐらい、俺は慎重に道を選びながら黒鷹亭を目指した。
じわじわと効いてくる薬の成分のせいで、頬が熱いし目も潤んでいる。そんな状態のアキトを、誰にも見られたくない一心で俺は必死に足を動かした。
怪しい気配が近くに無い事を探ってから、俺はようやく辿り着いた黒鷹亭の中へと入っていった。
「おう。お帰り、アキト」
受付のレーブンは、おまえそんな風に笑えたのかと二度見したくなる笑顔でアキトを出迎えた。ぐっと奥歯を噛み締めてから、俺は笑顔で答えた。
「ただいま帰りました」
「トルマルはどうだった?」
「すごく楽しかったです!お土産があるので、明日渡しますね」
アキトならきっとこう言うだろう。そう思って演じてみたが、レーブンは怪訝そうな顔でまじまじと見つめてきた。
「なんか、雰囲気が違うな。アキト、何かあったか」
やっぱりそう簡単に誤魔化されてはくれないか。
「あーちょっと飲みすぎました」
あえて照れくさそうに笑ってみせれば、雰囲気が違うのは酒のせいかと一応は納得してくれたみたいだ。
「ああ、それで…かな。まあ、ゆっくりしてくれ」
「ありがとうございます」
差し出された鍵をさっと受け取ると、俺はおやすみなさいと挨拶をしながら部屋に向かった。
部屋に入って、まずはきっちりと鍵を閉めた。防音結界が発動するのを感じて、ふうと一気に肩の力が抜けた。身の安全はとりあえず確保できた。
「アキト、主導権を戻して大丈夫かな?」
薬に対する耐性訓練を受けている俺でも、これほどにつらい薬だ。できればアキトに主導権を戻したくはないけれど、このままでいるのもまずい気がする。感覚的なものだが、俺の存在がアキトの存在を蝕んでいくような気がする。
「あまり長い間主導権を奪ってると、どうなるか分からないから…」
「うん。大丈夫戻して」
ベッドの上に腰かけてから憑依を解くと、アキトはそのままベッドにぼすんと横たわってしまった。そっとアキトの顔を覗き込む。真っ赤な頬のアキトは潤んだ目で俺を見上げてきた。
「アキト、大丈夫?」
「だ、じょ…ぶ……」
何とか搾りだした声に、あの男たちへの殺意が湧いてくる。
「あの通りの店は評判が良くなかったが、あんな事までしてるとは…」
「ル、ごめ…ひとりに…して」
アキトは切なげにそう囁いた。黒鷹亭に辿り着いて安心したせいで、一気に薬が回ったんだろう。
「その反応は多分禁制の媚薬だと思う。出さないとおさまらない」
「わか…た」
つらそうなアキトには申し訳ないが、もうひとつだけ確認しておきたいことがあった。
「手は動かせる?」
アキトはハッと目を見開いてから固まった。俺が主導権を奪った影響で、手ぐらいは動かないかと期待してみたが甘かったようだ。
絶望した表情のまま身じろぐアキトの姿をじっと見つめる。このままアキトにつらい思いをさせたくは無い。俺が憑依してアキトの手を動かすのは、アキト的にはどうなんだろう。ただの治療で、ただの自慰だと言い聞かせれば受け入れてくれるだろうか。
「分かった…俺がやるよ」
ぼんやりとうつろな目で見上げてくるアキトは、言葉の意味を理解できなかったようだ。説明するよりもやってみせた方が早いだろう。俺はそっとアキトの手に手を重ねた。
「安心して、主導権は貰わないよ」
薬を抜くための治療だとしても俺に触れられたくないと思うなら、アキトの気持ちだけで拒否はできるよと伝える。
「大丈夫、これはただの治療だからね、アキト」
怖がらせないように、できるだけ優しい声で囁いた。
「しても良い?」
「…して」
そっと手を動かすと、まずはアキトの下着をずり下ろした。すでに先走りまで滲んでいる勃起しきった性器が、勢いよく飛び出してくる。この状態で放置されるのは、辛すぎるだろう。
「んあっ…うっ…」
俺の操る手がやさしくそこに触れた瞬間、びくりとアキトの体が揺れた。
「まずは一度イっておいた方が良いね」
拒否されなかったとはいえ、アキトが望んで受け入れたわけではない。焦らすよりも早くイかせて終わらせてやりたい。その一心で俺は手を動かした。
先走りのせいかなめらかに滑る俺の手は、ぐちゅりと塗れた音を立てながら確実に速度を上げていく。
「あぁっ…んっ…でっ…る…あああっ」
達するアキトの声はあまりに官能的だったが、きっかけを思うと全く喜べない。ここでアキトの痴態を喜んでしまったら、俺はあいつらとおなじ屑になり下がる気がする。
理性を総動員した俺は、できるだけ視線を逸らしながら落ち着いた声で話しかけた。
「上手にイケたね」
うん、我ながら最悪の言葉の選択だな。動揺しているのがバレバレだ。手の中にあるアキトの性器は少しも萎えていなかった。
「ちょ…ハ…んぁっ」
ゆるゆると手を動かすと、アキトがちいさく喘いだ。
「あっ…も…だいじょ、ぶ…だかっ…らっ」
「まだ勃ってるのに?」
この薬が禁制になっているのは、体の自由を奪ってから発情させるその卑劣さと、あまりにきつい発情効果のせいだ。たった一回出した程度で終わるわけが無い。
「う…で、もっ…あぁっん…っくっ」
アキトはそう声を上げると、ふるふると首を振った。本当に拒絶したいと言うよりは、恥ずかしいから止めたいという感じだな。冷静に分析しながら、俺は更に指を動かした。
「やっ…あっ、も…ん、んっ…」
「良いよ、満足するまで何回でも付き合うから」
薬が抜けきってから罵倒されても良いから、少しでもアキトを楽にしてやりたかった。
じわじわと効いてくる薬の成分のせいで、頬が熱いし目も潤んでいる。そんな状態のアキトを、誰にも見られたくない一心で俺は必死に足を動かした。
怪しい気配が近くに無い事を探ってから、俺はようやく辿り着いた黒鷹亭の中へと入っていった。
「おう。お帰り、アキト」
受付のレーブンは、おまえそんな風に笑えたのかと二度見したくなる笑顔でアキトを出迎えた。ぐっと奥歯を噛み締めてから、俺は笑顔で答えた。
「ただいま帰りました」
「トルマルはどうだった?」
「すごく楽しかったです!お土産があるので、明日渡しますね」
アキトならきっとこう言うだろう。そう思って演じてみたが、レーブンは怪訝そうな顔でまじまじと見つめてきた。
「なんか、雰囲気が違うな。アキト、何かあったか」
やっぱりそう簡単に誤魔化されてはくれないか。
「あーちょっと飲みすぎました」
あえて照れくさそうに笑ってみせれば、雰囲気が違うのは酒のせいかと一応は納得してくれたみたいだ。
「ああ、それで…かな。まあ、ゆっくりしてくれ」
「ありがとうございます」
差し出された鍵をさっと受け取ると、俺はおやすみなさいと挨拶をしながら部屋に向かった。
部屋に入って、まずはきっちりと鍵を閉めた。防音結界が発動するのを感じて、ふうと一気に肩の力が抜けた。身の安全はとりあえず確保できた。
「アキト、主導権を戻して大丈夫かな?」
薬に対する耐性訓練を受けている俺でも、これほどにつらい薬だ。できればアキトに主導権を戻したくはないけれど、このままでいるのもまずい気がする。感覚的なものだが、俺の存在がアキトの存在を蝕んでいくような気がする。
「あまり長い間主導権を奪ってると、どうなるか分からないから…」
「うん。大丈夫戻して」
ベッドの上に腰かけてから憑依を解くと、アキトはそのままベッドにぼすんと横たわってしまった。そっとアキトの顔を覗き込む。真っ赤な頬のアキトは潤んだ目で俺を見上げてきた。
「アキト、大丈夫?」
「だ、じょ…ぶ……」
何とか搾りだした声に、あの男たちへの殺意が湧いてくる。
「あの通りの店は評判が良くなかったが、あんな事までしてるとは…」
「ル、ごめ…ひとりに…して」
アキトは切なげにそう囁いた。黒鷹亭に辿り着いて安心したせいで、一気に薬が回ったんだろう。
「その反応は多分禁制の媚薬だと思う。出さないとおさまらない」
「わか…た」
つらそうなアキトには申し訳ないが、もうひとつだけ確認しておきたいことがあった。
「手は動かせる?」
アキトはハッと目を見開いてから固まった。俺が主導権を奪った影響で、手ぐらいは動かないかと期待してみたが甘かったようだ。
絶望した表情のまま身じろぐアキトの姿をじっと見つめる。このままアキトにつらい思いをさせたくは無い。俺が憑依してアキトの手を動かすのは、アキト的にはどうなんだろう。ただの治療で、ただの自慰だと言い聞かせれば受け入れてくれるだろうか。
「分かった…俺がやるよ」
ぼんやりとうつろな目で見上げてくるアキトは、言葉の意味を理解できなかったようだ。説明するよりもやってみせた方が早いだろう。俺はそっとアキトの手に手を重ねた。
「安心して、主導権は貰わないよ」
薬を抜くための治療だとしても俺に触れられたくないと思うなら、アキトの気持ちだけで拒否はできるよと伝える。
「大丈夫、これはただの治療だからね、アキト」
怖がらせないように、できるだけ優しい声で囁いた。
「しても良い?」
「…して」
そっと手を動かすと、まずはアキトの下着をずり下ろした。すでに先走りまで滲んでいる勃起しきった性器が、勢いよく飛び出してくる。この状態で放置されるのは、辛すぎるだろう。
「んあっ…うっ…」
俺の操る手がやさしくそこに触れた瞬間、びくりとアキトの体が揺れた。
「まずは一度イっておいた方が良いね」
拒否されなかったとはいえ、アキトが望んで受け入れたわけではない。焦らすよりも早くイかせて終わらせてやりたい。その一心で俺は手を動かした。
先走りのせいかなめらかに滑る俺の手は、ぐちゅりと塗れた音を立てながら確実に速度を上げていく。
「あぁっ…んっ…でっ…る…あああっ」
達するアキトの声はあまりに官能的だったが、きっかけを思うと全く喜べない。ここでアキトの痴態を喜んでしまったら、俺はあいつらとおなじ屑になり下がる気がする。
理性を総動員した俺は、できるだけ視線を逸らしながら落ち着いた声で話しかけた。
「上手にイケたね」
うん、我ながら最悪の言葉の選択だな。動揺しているのがバレバレだ。手の中にあるアキトの性器は少しも萎えていなかった。
「ちょ…ハ…んぁっ」
ゆるゆると手を動かすと、アキトがちいさく喘いだ。
「あっ…も…だいじょ、ぶ…だかっ…らっ」
「まだ勃ってるのに?」
この薬が禁制になっているのは、体の自由を奪ってから発情させるその卑劣さと、あまりにきつい発情効果のせいだ。たった一回出した程度で終わるわけが無い。
「う…で、もっ…あぁっん…っくっ」
アキトはそう声を上げると、ふるふると首を振った。本当に拒絶したいと言うよりは、恥ずかしいから止めたいという感じだな。冷静に分析しながら、俺は更に指を動かした。
「やっ…あっ、も…ん、んっ…」
「良いよ、満足するまで何回でも付き合うから」
薬が抜けきってから罵倒されても良いから、少しでもアキトを楽にしてやりたかった。
346
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる