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118.治療※

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 憑依したままのハルは、動けない俺の代わりに黒鷹亭に向かってくれた。

 体の主導権をハルが持ってくれたおかげか、今はだいぶ思考能力も戻ってきた気がする。

 もしハルがいなかったらと思うとぞっとする。ハルの注意を真剣に聞いていれば、あんな店には行かずに済んだのに。落ち着いたら、ちゃんとハルに謝罪とお礼を言わないとな。

 そんな事を考えている間に、ハルは黒鷹亭へと辿り着いた。

「おう。お帰り、アキト」

 もうかなり遅い時間なのに、受付のレーブンさんは嬉しそうに笑いながらそう声をかけてくれた。ほんの数日あけただけなのに、すごく久しぶりな気がする。帰ってきたって感じがする。

「ただいま帰りました、レーブンさん」
「トルマルはどうだった?」
「すごく楽しかったです!お土産があるので、明日渡しますね」

 俺の代わりにハルはそう答えてくれた。確かに俺が言いそうな言葉だなと感心していると、レーブンさんは怪訝そうな顔でまじまじと見つめてきた。

「なんか、雰囲気が違うな。アキト、何かあったか?」

 不意に投げかけられた質問に、俺は心の底から驚いた。幽霊の存在も知らないのに、憑依状態が見分けられるわけが無いと思うんだけど。今のハルを見て何かを感じ取れるって、レーブンさんすごすぎないかな。

「あーちょっと飲みすぎました」

 ハルは少しも慌てずに、照れくさそうに笑いながらそう返した。ああ、それも俺なら言いそうだな。

「ああ、それで…かな。お疲れ、今日はゆっくりしてくれ」
「はい、ありがとうございます」

 レーブンさんが差し出した鍵をさっと受け取ると、ハルはおやすみなさいと挨拶をしながら部屋に向かった。



 部屋に入ったハルは、まずはきっちりと鍵を閉めてくれた。

「アキト、主導権を戻して大丈夫か?」

 ハルはできれば返したくないと言いたげなつらそうな顔をしながら、俺にそう聞いてくれた。

「あまり長い間主導権を奪ってると、どうなるか分からないから…」

 うん、ハルの言いたい事は分かる。というか、多分俺の方が詳しいと思う。

 憑依にも二種類あって、普通の憑依は体を動かしたりできるだけだ。主導権は宿主にあって、宿主が絶対に嫌だと思うことは拒否もできる。

 一方で主導権を奪うような高度な憑依は、そのまま長時間続けていると宿主の側に様々な不具合が起きてしまう。ハルはそれを本能的に察したんだろうな。

「うん。大丈夫、戻して」

 覚悟を決めて答えれば、ハルはきちんとベッドの上に座ってから憑依を解いてくれた。途端にずしりと体の重さを感じた。そのままベッドにぼすんと横たわれば、心配そうなハルにのぞき込まれる。

「アキト、大丈夫?」
「だ、じょ…ぶ……」

 言葉は、何とかしぼりだすことが出来た。

「あの通りの店は評判が良くなかったが、あんな事までしてるとは…」
「ル、ごめ…ひとりに…して」

 話してくれてる所悪いけれど、薬が回ってきたのか全身が熱くてたまらない。着ている服がこすれる刺激すら、今の俺には耐えられない。どんどんちんこに熱が貯まっていくのが分かる。これを思うさま擦りたいと、もうそれしか考えられなくなってくる。

「その反応は多分禁制の媚薬だと思う。出さないとおさまらない」
「わか…た」

 わかった。わかったから出て行ってほしい。必死で答えた俺に、ハルは言い難そうにしながらも尋ねた。

「手は動かせる?」

 ぼんやりとしていた俺は、ハルの言葉にハッと目を見開いた。そうだ、俺今体が動かないんだった。え、どうしよう。動かそうとしてみたけれど、手どころか腕にもまだ力が入らない。

 出せないとおさまらないけど、出すこともできないって詰んだ。

 何とか手を動こうとしてみるけれど、もぞもぞと身じろぐことしかできない。そんな俺の姿をじっと見つめていたハルは、何かを決意した様子で口を開いた。

「分かった…俺がやるよ」

 やるって何を。ぼんやりとしか物事を考えられない頭では、ハルがやることなんて何も思いつかなかった。ハルの手が俺の手の平に重なる。一瞬の車酔いのような感覚でようやく気づいた。ああ、また憑依したんだ。

「安心して、主導権は貰わないよ」

 そう言われても、少しも安心できない。だってこのタイミングで憑依って、やるってそういう意味でしょう?

 駄目だろ。ハルにこんなことさせちゃ駄目だ。俺はハルがそういう意味で好きだけど、ハルは別に俺の事を好きなわけじゃないのに。

「大丈夫、これはただの治療だからね、アキト」

 聞こえてくるのは俺の声だけど、優しい囁きは間違いなくハルの言葉だった。

 ただの治療。そうか優しいハルは治療のためだったら、こういうこともできるのかもしれない。うん、大丈夫。俺の事を好きなのかもなんて、そんな勘違いなんてしないから。

 だから今だけ触れて欲しい。

「しても良い?」
「…して」

 覚悟を決めて口にした言葉をきっかけに、俺の指はゆっくりと動き出した。本当は俺の手だけどハルの意思で動いてるから、これはハルの指だ。俺はそう思い込むことにした。

 下着を一気にひきずり下ろされると、すでに先走りの汁まで滲んでいる勃起しきったちんこが元気よく飛び出してきた。ああ、見られちゃった。そんなことを熱に浮かされながら、ぼんやりと思った。

「んあっ…うっ…」

 ハルの手がやさしくそこに触れた瞬間、びりりと電流が走った。

「まずは一度イっておいた方が良いね」

 そう囁いたハルの手に、一切の容赦はなかった。

 手のひら全体を使って、すこしきつめに握られる。自分でする時よりも強めの力加減に、本当にこの手をハルが動かしてるんだと意識させられた。

 そのまま上下にゆっくりと擦られると、あまりの気持ちよさに涙が滲んできた。先走りのせいかなめらかに滑るハルの手は、ぐちゅりぐちゅりと塗れた音を立てながら確実に速度を上げていく。

「あぁっ…んっ…でっ…る…あああっ」

 あっさりと達してしまったのは薬のせいであって、俺が早漏だからではない。そんなくだらない事を考えられるくらいには、すこしだけ思考能力が戻ってきた。

「上手にイケたね」

 うん、こんなことでそんな風に誉められても、どう反応したら良いのか分からないので止めてください。

「ちょ…ハ…んぁっ」

 ハルの手が達したばかりの俺のちんこを、まるであやすみたいにいじり続けてるせいでどうしても声が出てしまう。

「あっ…も…だいじょ、ぶ…だかっ…らっ」
「まだ勃ってるのに?」

 薬のせいももちろんあるけど、何よりハルの手がって考えたら途端に気持ちよくなる俺の体って素直すぎるだろう。

「う…で、もっ…あぁっん…っくっ」

 これ以上甘えちゃだめだろうとふるふると首を振ったけれど、ハルの手は止まらなかった。

「やっ…あっ、も…ん、んっ…」
「良いよ、満足するまで何回でも付き合うから」
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