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102.絵画のような景色
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ちょっとだけ仮眠のつもりで寝落ちた俺だけど、目を覚ますと世界は既に朝だった。
異世界には雨戸や遮光カーテンなんてものは無いから、部屋の明るさでだいたいの時間が分かるんだ。正直に言うとまだ眠いんだけど。でもこの明るさは、確実に朝だ。
「んんー」
寝心地最高のベッドの上で、俺は唸りながらごろんと寝返りを打った。
「アキト、起きたの?」
しぱしぱする目で寝転がったまま部屋の中を見回してみると、ハルは窓近くにあるテーブルの椅子に座っていた。
朝の光が差し込む窓を背に、こっちを見つめて柔らかく微笑む王子様系イケメンの破壊力はもの凄かった。うん、ドキドキしすぎて一瞬で目が覚めたよね。
「起きた!おはよ、ハル」
急いで起き上がった俺に、ハルは穏やかに話かけてくれた。
「おはよう、アキト。やっぱり疲れてたんだね。よく眠れて良かった」
「うん、結構疲れてたみたいだ…飲みに行かなくて良かったよ」
もし飲みに行ってて、そこで寝落ちてたら大問題だもんな。周りにも迷惑をかけただろうし、事前に阻止してくれたハルには感謝しか無い。
「アキト、起きられるならこっちに来ない?外、すごいよ」
楽し気なハルの声につられるように、すぐに立ち上がると窓の方へと近づいていく。まだ寝起きの頭で何も考えずに窓の外を覗き込んだ俺は、その景色に息を呑んだ。
見渡す限りに広がったエメラルドグリーンの海が、朝の光を反射してキラキラと輝いている。寄せてくる波の白がアクセントになっていて、絵画でも見ているかのような美しさだ。思わず圧倒されるような、そんなすごい景色だった。
「わーすご…」
「うん、すごいよね」
これだけ綺麗な景色だったら、いくら見ていても見飽きなさそうだ。
「あれは船かな?」
「ああ、あれは商船だね」
景色を眺めながらのんびりとハルと話していた俺は、不意に昨夜の自分の失態に気づいてしまった。せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、俺、温泉に入ってない!
「あああー!」
気づいた瞬間、思わず叫んでしまった。防音結界があるから部屋の外までは響いてないと思うけど、突然の叫び声にハルはびくっと体を揺らした。びっくりさせてごめん。
「ど、どうしたの、アキト?」
「驚かせてごめん。その、せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、温泉に入らずに寝ちゃったって気づいて…」
「ああ、そういうことか」
慌てて説明すれば、ハルは納得してくれたみたいだ。
「もったいない事しちゃった」
あーほんとに昨日の俺の馬鹿と軽い気持ちで続けた言葉に、何故かハルがしょんぼりと肩を落とした。
「アキト、朝まで起こさなくてごめんね?」
そのあまりに予想外の反応にびっくりしすぎて、俺は焦ってハルを見上げた。謝る必要なんてかけらも無いのに、俺の言い方が悪かったせいでハルに謝らせてしまった。その事実に俺は軽くパニックになった。
「わー違う違う!ごめんなさい!勝手に寝落ちた自分が悪いんだし、疲れてる俺を寝かせてくれようとしたハルの優しさは伝わってるし、ハルが謝る必要なんて全く無いんだよ!!」
必死でそう伝えれば、ハルは大きく目を見開いたまま俺を見つめてきた。
「紛らかしい言い方してごめん。本当にハルを責める気なんてほんのひとかけらも無かったんだよ。残念だったから、昨日の俺の馬鹿って思ってつい愚痴っただけ!」
「そ、そうなんだ?」
俺のあまりの勢いにハルは少し引いてるみたいだけど、これはきっちり伝えておかないと後悔する。
「そう!謝らせてごめんなさい!悪いのは全部俺です!」
「いや、アキトも謝らなくて良いよ。俺も勝手に勘違いしてごめんね?」
ハルはそう言って優しく笑ってくれた。
「ごめ…」
「もう良いってば。あ、じゃあ、今から入るっていうのはどうかな?」
再度謝ろうとした俺の言葉を遮ったハルは、そんな嬉しい提案をしてくれた。
異世界には雨戸や遮光カーテンなんてものは無いから、部屋の明るさでだいたいの時間が分かるんだ。正直に言うとまだ眠いんだけど。でもこの明るさは、確実に朝だ。
「んんー」
寝心地最高のベッドの上で、俺は唸りながらごろんと寝返りを打った。
「アキト、起きたの?」
しぱしぱする目で寝転がったまま部屋の中を見回してみると、ハルは窓近くにあるテーブルの椅子に座っていた。
朝の光が差し込む窓を背に、こっちを見つめて柔らかく微笑む王子様系イケメンの破壊力はもの凄かった。うん、ドキドキしすぎて一瞬で目が覚めたよね。
「起きた!おはよ、ハル」
急いで起き上がった俺に、ハルは穏やかに話かけてくれた。
「おはよう、アキト。やっぱり疲れてたんだね。よく眠れて良かった」
「うん、結構疲れてたみたいだ…飲みに行かなくて良かったよ」
もし飲みに行ってて、そこで寝落ちてたら大問題だもんな。周りにも迷惑をかけただろうし、事前に阻止してくれたハルには感謝しか無い。
「アキト、起きられるならこっちに来ない?外、すごいよ」
楽し気なハルの声につられるように、すぐに立ち上がると窓の方へと近づいていく。まだ寝起きの頭で何も考えずに窓の外を覗き込んだ俺は、その景色に息を呑んだ。
見渡す限りに広がったエメラルドグリーンの海が、朝の光を反射してキラキラと輝いている。寄せてくる波の白がアクセントになっていて、絵画でも見ているかのような美しさだ。思わず圧倒されるような、そんなすごい景色だった。
「わーすご…」
「うん、すごいよね」
これだけ綺麗な景色だったら、いくら見ていても見飽きなさそうだ。
「あれは船かな?」
「ああ、あれは商船だね」
景色を眺めながらのんびりとハルと話していた俺は、不意に昨夜の自分の失態に気づいてしまった。せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、俺、温泉に入ってない!
「あああー!」
気づいた瞬間、思わず叫んでしまった。防音結界があるから部屋の外までは響いてないと思うけど、突然の叫び声にハルはびくっと体を揺らした。びっくりさせてごめん。
「ど、どうしたの、アキト?」
「驚かせてごめん。その、せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、温泉に入らずに寝ちゃったって気づいて…」
「ああ、そういうことか」
慌てて説明すれば、ハルは納得してくれたみたいだ。
「もったいない事しちゃった」
あーほんとに昨日の俺の馬鹿と軽い気持ちで続けた言葉に、何故かハルがしょんぼりと肩を落とした。
「アキト、朝まで起こさなくてごめんね?」
そのあまりに予想外の反応にびっくりしすぎて、俺は焦ってハルを見上げた。謝る必要なんてかけらも無いのに、俺の言い方が悪かったせいでハルに謝らせてしまった。その事実に俺は軽くパニックになった。
「わー違う違う!ごめんなさい!勝手に寝落ちた自分が悪いんだし、疲れてる俺を寝かせてくれようとしたハルの優しさは伝わってるし、ハルが謝る必要なんて全く無いんだよ!!」
必死でそう伝えれば、ハルは大きく目を見開いたまま俺を見つめてきた。
「紛らかしい言い方してごめん。本当にハルを責める気なんてほんのひとかけらも無かったんだよ。残念だったから、昨日の俺の馬鹿って思ってつい愚痴っただけ!」
「そ、そうなんだ?」
俺のあまりの勢いにハルは少し引いてるみたいだけど、これはきっちり伝えておかないと後悔する。
「そう!謝らせてごめんなさい!悪いのは全部俺です!」
「いや、アキトも謝らなくて良いよ。俺も勝手に勘違いしてごめんね?」
ハルはそう言って優しく笑ってくれた。
「ごめ…」
「もう良いってば。あ、じゃあ、今から入るっていうのはどうかな?」
再度謝ろうとした俺の言葉を遮ったハルは、そんな嬉しい提案をしてくれた。
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