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97.港町トルマルに到着!
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港町トルマルは、ここから北にまっすぐいった所に位置しているらしい。
「じゃあ、ここから北上するだけ?」
「そうだね」
「よっし、じゃあ北を目指して出発!」
馬車も通れないぐらい狭いこの道は、ロズア村からトルマルを目指す人以外はあまり使わない道なんだって。つまりハルと話し放題って事じゃないかと、俺の気分は上がった。
「トルマルに着いたらまずは宿を探さないとね」
「そうだなーハルのお勧めの所はある?」
「いくつかあるけど、料理で選ぶか…それとも温泉で選ぶか…」
「温泉で!」
思わず食い気味に言えば、ハルは楽しそうに笑ってくれた。
「じゃあ、温泉が良い所にしようか。料理は宿で食べなくても良いし」
「あ、それも良いなー魚料理楽しみだー」
「魚とか貝類の屋台が多いから、それも好きそうだよね」
「屋台から違うんだ!うわーそれは楽しみだなー!」
トルマルについても色々教えてもらったんだけど、この世界では海水浴しないんだって。俺の世界では男女問わず水着を着て泳ぐんだよと伝えれば、ハルには絶句されてしまった。
泳ぐのが大好きってわけじゃないから泳げないのはまあ良いんだけど、それでも海に行ったら裸足になって波で遊ぶぐらいはしたい。そう伝えてみたけど、それにもハルは良い顔をしなかった。
「何で駄目なの?」
「海にも魔物はいるからね。海の魔物を討伐する際にやむを得ず泳ぐことはあっても、それを娯楽にはできないよ」
思ったよりも重い理由だった。うん、それは無理だなと納得してしまった。俺だって別に命がけで海遊びがしたいわけじゃないもんな。眺めるだけで満足しておこう。
話しながら歩いていると、木々の向こうで何かが太陽の光を反射してきらりと輝いた。
「今見えたの海かな」
「んーここからはまだ見えない筈だけどな」
「あ、そうなんだ」
「この坂を登ったら見える筈だよ」
ハルの言葉にウキウキしながら、少しずつ勾配を登っていく。傾斜はそこまで強くないけど、結構な上り坂だ。何とか坂道を登りきると、一気に視界が開けた。
遥か遠くまで続く美しい海と、いくつもの建物が集まってできた立派な大きな街が一望できる。まず海の色が、俺の想像と違ってた。写真でしか見たことのない南国の海みたいな、綺麗なエメラルドグリーンなんだよ。
「うわーすっごい!綺麗な海だー!」
ハルは引かないって知ってるから、俺も遠慮なくはしゃがせてもらった。想像を超える海の綺麗さに興奮してしまった俺が落ち着くまで、ハルは笑って待っててくれた。
「あとはここから下るだけだよ」
「うん、分かった」
「門の近くまで来たら、俺の言葉に返事はしないようにね」
わざわざそう念を押してくれたのは、多分俺が浮かれすぎてるからだろうな。だって好きな人と一緒に海って、何かこう特別感があるよね。ハルの言葉に、俺は笑顔のままで大きく頷いてみせた。
白と青で彩られた港町トルマルは、近くで見ても圧倒される美しさだった。
屋根の青色には色の幅があるんだけど、壁は全て真っ白。もしかして、そういう規則でもあるのかな。建物が同じような色合いなのを補うためなのか、それともただの趣味なのか、窓の所には色とりどりの花の植木鉢なんかがおいてあって、思わず目が引き寄せられる。
「こんにちは、旅人さん」
「こんにちは」
「ここは初めてかい?」
「あ、はい」
街の大門をくぐるなり街並みに気を取られていた俺に、たまたま巡回していた衛兵さんが声をかけてくれた。筋肉質な体と爽やかな笑みでモテそうな男性だ。
「案内は必要かな?」
「アキト、詳しい人と会うからって言って」
「あ、いえ。詳しい人と会うので大丈夫です。ありがとうございます」
「そっか…じゃあトルマルを楽しんでね」
衛兵さんは残念そうにしながらも、そう言ってくれた。そんなに案内したかったんだろうか。郷土愛的な奴なのかな。
ハルが案内してくれるから、お気持ちだけもらっておきます。
「行こう、アキト」
ハルに促されて、俺はゆっくりと街の中を歩き出した。
「じゃあ、ここから北上するだけ?」
「そうだね」
「よっし、じゃあ北を目指して出発!」
馬車も通れないぐらい狭いこの道は、ロズア村からトルマルを目指す人以外はあまり使わない道なんだって。つまりハルと話し放題って事じゃないかと、俺の気分は上がった。
「トルマルに着いたらまずは宿を探さないとね」
「そうだなーハルのお勧めの所はある?」
「いくつかあるけど、料理で選ぶか…それとも温泉で選ぶか…」
「温泉で!」
思わず食い気味に言えば、ハルは楽しそうに笑ってくれた。
「じゃあ、温泉が良い所にしようか。料理は宿で食べなくても良いし」
「あ、それも良いなー魚料理楽しみだー」
「魚とか貝類の屋台が多いから、それも好きそうだよね」
「屋台から違うんだ!うわーそれは楽しみだなー!」
トルマルについても色々教えてもらったんだけど、この世界では海水浴しないんだって。俺の世界では男女問わず水着を着て泳ぐんだよと伝えれば、ハルには絶句されてしまった。
泳ぐのが大好きってわけじゃないから泳げないのはまあ良いんだけど、それでも海に行ったら裸足になって波で遊ぶぐらいはしたい。そう伝えてみたけど、それにもハルは良い顔をしなかった。
「何で駄目なの?」
「海にも魔物はいるからね。海の魔物を討伐する際にやむを得ず泳ぐことはあっても、それを娯楽にはできないよ」
思ったよりも重い理由だった。うん、それは無理だなと納得してしまった。俺だって別に命がけで海遊びがしたいわけじゃないもんな。眺めるだけで満足しておこう。
話しながら歩いていると、木々の向こうで何かが太陽の光を反射してきらりと輝いた。
「今見えたの海かな」
「んーここからはまだ見えない筈だけどな」
「あ、そうなんだ」
「この坂を登ったら見える筈だよ」
ハルの言葉にウキウキしながら、少しずつ勾配を登っていく。傾斜はそこまで強くないけど、結構な上り坂だ。何とか坂道を登りきると、一気に視界が開けた。
遥か遠くまで続く美しい海と、いくつもの建物が集まってできた立派な大きな街が一望できる。まず海の色が、俺の想像と違ってた。写真でしか見たことのない南国の海みたいな、綺麗なエメラルドグリーンなんだよ。
「うわーすっごい!綺麗な海だー!」
ハルは引かないって知ってるから、俺も遠慮なくはしゃがせてもらった。想像を超える海の綺麗さに興奮してしまった俺が落ち着くまで、ハルは笑って待っててくれた。
「あとはここから下るだけだよ」
「うん、分かった」
「門の近くまで来たら、俺の言葉に返事はしないようにね」
わざわざそう念を押してくれたのは、多分俺が浮かれすぎてるからだろうな。だって好きな人と一緒に海って、何かこう特別感があるよね。ハルの言葉に、俺は笑顔のままで大きく頷いてみせた。
白と青で彩られた港町トルマルは、近くで見ても圧倒される美しさだった。
屋根の青色には色の幅があるんだけど、壁は全て真っ白。もしかして、そういう規則でもあるのかな。建物が同じような色合いなのを補うためなのか、それともただの趣味なのか、窓の所には色とりどりの花の植木鉢なんかがおいてあって、思わず目が引き寄せられる。
「こんにちは、旅人さん」
「こんにちは」
「ここは初めてかい?」
「あ、はい」
街の大門をくぐるなり街並みに気を取られていた俺に、たまたま巡回していた衛兵さんが声をかけてくれた。筋肉質な体と爽やかな笑みでモテそうな男性だ。
「案内は必要かな?」
「アキト、詳しい人と会うからって言って」
「あ、いえ。詳しい人と会うので大丈夫です。ありがとうございます」
「そっか…じゃあトルマルを楽しんでね」
衛兵さんは残念そうにしながらも、そう言ってくれた。そんなに案内したかったんだろうか。郷土愛的な奴なのかな。
ハルが案内してくれるから、お気持ちだけもらっておきます。
「行こう、アキト」
ハルに促されて、俺はゆっくりと街の中を歩き出した。
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