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92.ジョージさんとアメリアさん

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 虹が消えるのを見届けた俺たちは、すぐにロズア村へと戻ることにした。

「今日中に港町までいけるかな?」
「時間的には大丈夫だと思うよ」

 ハルによるとこの湖までの道は、普段なら人が多い道なんだって。湖で釣りをする人とか、薬草とかの素材を探しに行く人もいるし、こどもたちの遊び場でもあるらしい。でも、今日は道が封鎖されてるおかげで、予定を相談しながら歩けるんだよな。

 二人で予定を考えながらのんびりと歩いていくと、突然進行方向から大きな声が聞こえてきた。何かもめごとかと身構えながら近づいていくと、そこにはジョージさんとアメリアさんの姿があった。

「本当に反省してるの?」
「反省してるって、悪かった!」
「何が悪かったのかはっきり言ってみて」
「非常事態だから村長は家で待機と言われていたのに、勝手に見張りをしていてすみませんでした!」

 うわー何とも気まずいところに帰ってきてしまった。どうしようと思わず足を止めれば、二人の視線がこちらを向いた。助けが来たと言いたげなジョージさんと、恥ずかしそうなアメリアさんに、とりあえず笑いながら会釈を返す。

「アキト、無事だったか。ロズア湖の様子はどうだった?」
「心配してくれてありがとうございます。ウインの群れは去りましたよ」

 笑顔で伝えると、二人は顔を見合わせた。

「疑うわけじゃないんだが、偵察だけじゃなくて倒したのか?」
「はい。あ、倒したウイン見ますか?」

 証拠になるかなと何も考えずにそう言ってしまったけど、これって大丈夫なのかな。

 血とか出たままですけどと慌てて言葉を添えたけど、二人の返事はぜひ見せて欲しいというものだった。二人とも魔物の解体も得意な人だから、忌避感は無いそうだ。ジョージさんはともかくアメリアさんも解体できるんだ。上品で大人しそうな人なのに、すごいな。

 こっそりと感心しながらウインを取り出せば、二人は手を触れずにまじまじと見つめるだけで見分を終えた。

「確かにウインだな」
「見せてくれてありがとうございます。もうしまってもらって大丈夫ですよ」

 言われるままにウインを収納鞄にしまいこめば、二人は深々と頭を下げた。

「アキト、ありがとう」
「素早い解決、ありがとうございます」

 こういう時、俺は依頼を受けただけだし後で報酬をもらうんだからと、どうしてもそういう風に考えてしまう。

 でもこの前、ハルに言われたんだ。感謝の気持ちは素直に受け取った方が良いって。アキトだって感謝の言葉に否定を返されるよりも、素直に受け取ってもらいたいだろうって。
 
 うん、確かに。ハルに言われるどういたしましてって言葉、嬉しいもんな。

「どういたしまして」

 まだまだ言いなれない言葉だけど、ハルの真似と思えばするりと出てきた。慣れない俺の返事を聞いたハルはからかうようなことも言わずに、ただ柔らかく微笑んでくれた。うう、顔が良い。

「アキトさん、お昼がまだでしたら、ぜひうちで食べて行ってください」
「え、良いんですか?」
「もちろんです!テッサも張り切ってたのでぜひ!」
「じゃあご馳走になります」

 どうせ村長の家にお邪魔するって決まってたしと提案を受け入れれば、二人はほっとした様子で笑ってくれた。

「よし、じゃあ俺は急いで湖を確認してくるわ」
「ええ、いってらっしゃい。油断はしないでね。お昼の用意をして待ってるわ」
「ああ、じゃあアキト、またあとでな」

 湖への道を、ジョージさんは慣れた様子で走っていった。



 アメリアさんについて歩きながら、俺はきょろきょろとロズア村の様子を観察する。さっきは依頼の事ばかり考えてたから、村の中はあまりちゃんと見れてなかったんだよね。

 ロズア村の建物は、バラ―ブ村のログハウスっぽい建物とは少し違っていた。木製は木製だけど、きちんと加工した板材を使って建てられているみたいだ。ログハウスと言うよりは、ちょっと高級なコテージ風だな。

 それぞれの家の側には、小さな畑もくっついているみたいで、お年寄りや子どもたちが手入れに励んでいる。家族の分だけ育ててたりするのかな。

 家の前に椅子を出して世間話をしながら野菜を下ごしらえしている女性たちや、その周りを走り回っている元気な子どもたちの姿も見える。うん、のどかな雰囲気で、良い所だな。
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