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90.ロズア村に到着
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カーブを曲がると見えてきた見慣れない景色に、自然と声が出てしまった。
「わっ!これはすごいな!」
ロズア村は農業が盛んだと聞いてはいたけれど、まさかここまで大きな畑がいくつも連なってるとは想像していなかった。種類までは分からないが、穀物らしきものから、カラフルな野菜まで数多くの畑が並んでいる。
「初めて見ると、皆さん驚くんですよ」
突然大きな声を出してしまったけれど、振り返ったアメリアさんは嬉しそうにそう言ってくれた。迷惑だったかなと視線を走らせてみたけれど、ロズア村の人達は皆、誇らし気に笑っていた。
「ここまでの畑は他の土地には無いからなぁ」
「トライプールの野菜もロズア村産が多いんだよ」
「穀物から野菜、果物まで育ててますからね」
乗客達は嬉しそうに笑いながら、口々にそう教えてくれる。
「そうなんですね!俺まだこの領に来てからそんなに経ってなくて」
「そうなのか!」
「じゃあロズア村の野菜をぜひ食べていってくれよ」
「あ、お土産も買いたいな」
思わず呟けば、ハルはにっこりと笑ってくれた。
「レーブンに、だね」
うん、正解です。お土産にお勧めの野菜や果物を聞いているうちに、馬車はゆっくりと速度を落としていき、やがて停車した。
「着いたぞ!」
ぞろぞろと動き出す乗客たちを先に行かせて、俺は最後に馬車を降りた。ヨウと御者さんにしっかりとお礼を言ってから乗車券を手渡す。
楽しい馬車の旅もこれで終わりかぁ。異世界の馬車は、思った以上に快適な移動手段だったな。技術が無いからすぐには無理だけど、いつか馬車じゃなくて馬にも乗ってみたいななんて考えながら俺はヨウに手を振った。
村の入口まで歩いていくと、そこではアメリアさんが一人で俺を待ち構えていた。
「本当にこのまま向かうんですか?一休みしてからでも…」
「いえ、この後の事もあるので、すぐに行ってきます」
「分かりました。くれぐれも無理はしないで下さいね。お気をつけて」
困ってるって言ってたのに、ちゃんと俺の事まで心配してくれるんだな。温かい言葉に笑顔で頷いて、俺は歩き出した。
「アキト、こっちの道の先がロズア湖だよ」
ハルの誘導に従って、俺は村の端にひっそりとある道へと足を進めた。
しばらくして見えてきたのは、大きな看板だった。はっきりとした文字で、湖への道は危険なため封鎖中だと書かれている。
「さすがに対応が早いな」
感心するハルと一緒に看板を超えて更に歩いていくと、今度は大柄な体格のおじさんが道の真ん中に座っていた。木の椅子まで用意しての見張り番みたいだ。
「旅人か?今はロズア湖は危険だから封鎖中だ。せっかく来てもらったのに申し訳ないがここは通せない」
髭をはやしたおじさんは、眉を下げて申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あ、依頼を受けてきました、冒険者です」
そう言いながら依頼票を取り出してみせれば、男性は大きく目を見開いた。
「あー…その…ギルドカードも見せてくれるか?」
「あ、はい」
そうか、ランク制限がついてる依頼の時は、ギルドカードも見せないと駄目なんだな。支払いで使うとか以外だと、初めて人に見せたかもしれない。素直にカードを見せると、おじさんはまじまじと俺のカードを見つめた。
「本当にDランクだな…疑ってすまなかった」
わざわざ頭を下げて謝ってくれたおじさんに、俺はにこっと笑ってみせる。
「遠距離からの攻撃手段が無いと危険だから、確認してくれたんですよね」
俺が弱そうに見えたのもあるだろうけど、おじさんがわざわざチェックしたのは俺の事を心配してくれたからだ。そう思うと怒りは湧いてこなかった。
「あんた、良い奴だな」
「おじさんも良い人ですね」
そんな風に軽口で返せば、おじさんは笑いだした。
「悪い、名乗るのを忘れてたな、俺はこの村の村長ジョージだ」
「え、村長さんって、アメリアさんの旦那さんで、テッサさんのお父さん?」
「なんだ、二人を知ってるのか?」
「同じ馬車に乗ってたんです」
「ああ、なるほど。まさかこんなに早く冒険者が来てくれるとは思ってなくてな」
「それアメリアさんとテッサさんにも言われました。俺はアキトです」
「アキト。先に伝えておくが群れは30体以上いる。しかも、ロズア湖を縄張り認定してるから厄介だ」
「ということは、入った時点で敵とみなされるって事ですね」
図鑑にもそう書いてあったと口にすれば、ジョージさんは満足そうに頷いた。
「アキトの魔法の精度なら大丈夫だよ。多分10体程倒せば、諦めて去っていくよ」
「魔法の腕なら自信があるので」
「そうか、くれぐれも気をつけて。無理だと思ったら引き返してくれよ」
アメリアさんと全く同じ事をいうジョージさんに、俺は思わず笑ってしまった。やっぱり夫婦って似てくるって本当なのかな。俺の事を気にしてくれる二人のためにも、頑張らないと。
もう少しで湖が見えるという場所まで進んだ所で、ハルは急に立ち止まった。縄張りに入る前の作戦会議だ。
「さっきも言ったけど、10体程倒せば去っていくから深追いは禁止だよ」
「うん、分かった」
素直に頷けば、ハルはそっと顔を覗き込んできた。
「何か質問はある?」
「魔法の指定って何かある?」
「指定では無いけれど、アキトは土魔法が一番得意だからそれが良いかな」
「土魔法ね、了解」
「マルックスの方が速いくらいだから、アキトなら大丈夫だよ」
ハルはにっこりと笑うと、あっさりとそう言い切ってくれた。期待に応えられるように頑張るよ。
「わっ!これはすごいな!」
ロズア村は農業が盛んだと聞いてはいたけれど、まさかここまで大きな畑がいくつも連なってるとは想像していなかった。種類までは分からないが、穀物らしきものから、カラフルな野菜まで数多くの畑が並んでいる。
「初めて見ると、皆さん驚くんですよ」
突然大きな声を出してしまったけれど、振り返ったアメリアさんは嬉しそうにそう言ってくれた。迷惑だったかなと視線を走らせてみたけれど、ロズア村の人達は皆、誇らし気に笑っていた。
「ここまでの畑は他の土地には無いからなぁ」
「トライプールの野菜もロズア村産が多いんだよ」
「穀物から野菜、果物まで育ててますからね」
乗客達は嬉しそうに笑いながら、口々にそう教えてくれる。
「そうなんですね!俺まだこの領に来てからそんなに経ってなくて」
「そうなのか!」
「じゃあロズア村の野菜をぜひ食べていってくれよ」
「あ、お土産も買いたいな」
思わず呟けば、ハルはにっこりと笑ってくれた。
「レーブンに、だね」
うん、正解です。お土産にお勧めの野菜や果物を聞いているうちに、馬車はゆっくりと速度を落としていき、やがて停車した。
「着いたぞ!」
ぞろぞろと動き出す乗客たちを先に行かせて、俺は最後に馬車を降りた。ヨウと御者さんにしっかりとお礼を言ってから乗車券を手渡す。
楽しい馬車の旅もこれで終わりかぁ。異世界の馬車は、思った以上に快適な移動手段だったな。技術が無いからすぐには無理だけど、いつか馬車じゃなくて馬にも乗ってみたいななんて考えながら俺はヨウに手を振った。
村の入口まで歩いていくと、そこではアメリアさんが一人で俺を待ち構えていた。
「本当にこのまま向かうんですか?一休みしてからでも…」
「いえ、この後の事もあるので、すぐに行ってきます」
「分かりました。くれぐれも無理はしないで下さいね。お気をつけて」
困ってるって言ってたのに、ちゃんと俺の事まで心配してくれるんだな。温かい言葉に笑顔で頷いて、俺は歩き出した。
「アキト、こっちの道の先がロズア湖だよ」
ハルの誘導に従って、俺は村の端にひっそりとある道へと足を進めた。
しばらくして見えてきたのは、大きな看板だった。はっきりとした文字で、湖への道は危険なため封鎖中だと書かれている。
「さすがに対応が早いな」
感心するハルと一緒に看板を超えて更に歩いていくと、今度は大柄な体格のおじさんが道の真ん中に座っていた。木の椅子まで用意しての見張り番みたいだ。
「旅人か?今はロズア湖は危険だから封鎖中だ。せっかく来てもらったのに申し訳ないがここは通せない」
髭をはやしたおじさんは、眉を下げて申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あ、依頼を受けてきました、冒険者です」
そう言いながら依頼票を取り出してみせれば、男性は大きく目を見開いた。
「あー…その…ギルドカードも見せてくれるか?」
「あ、はい」
そうか、ランク制限がついてる依頼の時は、ギルドカードも見せないと駄目なんだな。支払いで使うとか以外だと、初めて人に見せたかもしれない。素直にカードを見せると、おじさんはまじまじと俺のカードを見つめた。
「本当にDランクだな…疑ってすまなかった」
わざわざ頭を下げて謝ってくれたおじさんに、俺はにこっと笑ってみせる。
「遠距離からの攻撃手段が無いと危険だから、確認してくれたんですよね」
俺が弱そうに見えたのもあるだろうけど、おじさんがわざわざチェックしたのは俺の事を心配してくれたからだ。そう思うと怒りは湧いてこなかった。
「あんた、良い奴だな」
「おじさんも良い人ですね」
そんな風に軽口で返せば、おじさんは笑いだした。
「悪い、名乗るのを忘れてたな、俺はこの村の村長ジョージだ」
「え、村長さんって、アメリアさんの旦那さんで、テッサさんのお父さん?」
「なんだ、二人を知ってるのか?」
「同じ馬車に乗ってたんです」
「ああ、なるほど。まさかこんなに早く冒険者が来てくれるとは思ってなくてな」
「それアメリアさんとテッサさんにも言われました。俺はアキトです」
「アキト。先に伝えておくが群れは30体以上いる。しかも、ロズア湖を縄張り認定してるから厄介だ」
「ということは、入った時点で敵とみなされるって事ですね」
図鑑にもそう書いてあったと口にすれば、ジョージさんは満足そうに頷いた。
「アキトの魔法の精度なら大丈夫だよ。多分10体程倒せば、諦めて去っていくよ」
「魔法の腕なら自信があるので」
「そうか、くれぐれも気をつけて。無理だと思ったら引き返してくれよ」
アメリアさんと全く同じ事をいうジョージさんに、俺は思わず笑ってしまった。やっぱり夫婦って似てくるって本当なのかな。俺の事を気にしてくれる二人のためにも、頑張らないと。
もう少しで湖が見えるという場所まで進んだ所で、ハルは急に立ち止まった。縄張りに入る前の作戦会議だ。
「さっきも言ったけど、10体程倒せば去っていくから深追いは禁止だよ」
「うん、分かった」
素直に頷けば、ハルはそっと顔を覗き込んできた。
「何か質問はある?」
「魔法の指定って何かある?」
「指定では無いけれど、アキトは土魔法が一番得意だからそれが良いかな」
「土魔法ね、了解」
「マルックスの方が速いくらいだから、アキトなら大丈夫だよ」
ハルはにっこりと笑うと、あっさりとそう言い切ってくれた。期待に応えられるように頑張るよ。
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