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81.【ハル視点】串焼き屋ではメロウも一緒に
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マーゴット商会の建物から出たアキトは、そのまま早歩きで路地まで移動した。見送りに出てきていたジェイデンから見えない所まで移動してから、ようやくふうと息を吐く。
「あー疲れた…」
「何がそんなに疲れたんだい?楽しそうに見えたけど」
「うん、楽しかったけど…年上の人に敬語で丁寧に対応されるのがさ、慣れてないから」
アキトの住んでいた国には身分制度は無いと以前言っていたな。店員であっても軽い敬語で対応されるものだから、あそこまで丁寧な対応だと緊張するそうだ。
「ああ、そうなのか。こればっかりは慣れだろうね。でも、アキトが気に入る本があって良かったよ」
「うん、読むの楽しみ!」
本を読むことを想像してか、ニコニコ笑顔のアキトはとても可愛かった。
「よし、じゃあそろそろ、アジーの串焼き屋に向かおうか」
「待ってましたー」
アジーの串焼き屋の前に辿り着いた時、アキトの興奮は最高潮だった。マーゴット商会にはあれほど緊張するのに、この建物は大丈夫なんだな。大きさも同じぐらいなんだが、アキトの判断基準はどこなんだろう。派手か地味かなんて話なんだろうか。
「ただこのお店は、注文の仕方がちょっと変わってるんだ」
店内に入る前にと説明すれば、アキトはふふと柔らかく笑い出した。何がそんなに面白かったのかが分からず、俺は不思議そうな顔でアキトを見つめた。
アキトは俺の視線に気づくと、あとでと口を動かして答えてくれた。
「「「いらっしゃいませー」」」
「アジーの串焼き屋にようこそ!」
活気あふれる店内を見渡したアキトは、楽し気にメニューを見て選びだす。
「お勧めはやっぱり串焼きだけど、ここは肉の種類が3種類、味付けも3種類あるんだ。全部食べたいならこの全種セットにして、後は小ぶりのパンを追加する人が多いかな」
しばらく悩んでいたアキトは、すぐに列の後ろに並んだ。決めるのが早いなと感心しながら、追加で注文もできると伝えれば嬉しそうな笑顔が返ってきた。
アキトは結局俺が勧めた串焼きの全種セットに、野菜串とパンを追加、酒を一杯だけ注文したようだ。焼きたての串焼きを見ているアキトがあまりに幸せそうに笑うから、俺は完全に気を抜いていた。街中だから危険は無いと思っていたというのもあるが、メロウに気づかなかった原因はアキトの可愛さのせいだ。
「こんにちは、やっぱりアキトさんでしたか」
「あれ、メロウさん、こんにちは」
「アキトさんもこのお店がお好きだったんですね」
「いえ、それが初めてなんです。せっかく休みだしと思って」
「なるほど。私も今日はお休みなんですよ。もしよろしければ、ご一緒しても良いですか?」
すぐにぜひと返すだろうと思っていた俺は、まっすぐにぶつかったアキトの視線に驚いてしまった。良いかな?と言いたげな視線に、俺は笑顔で許可を出した。今日は二人でおでかけしようと言ったから、わざわざ俺の意見を聞いてくれたんだろうな。こういうところが、たまらなく好きだ。
アキトの食べっぷりはもちろん知っていたけれど、メロウがこれほど食べるなんて知らなかった。そういえば顔を合わせる事は多かったけれど、一緒に食事をする機会なんて無かったな。
二人は美味しいと笑い合ったり、楽しそうにあれこれと話しながら食べ進めていく。周りの席からも視線が集まっているが、嫌な視線では無さそうだ。
「パンにすこし切れ込みを入れて、この串を挟んで食べるのも美味しいですよ」
「うわー絶対美味しいやつですね!やってみます」
「はい、ぜひ」
メロウの提案した食べ方に、アキトの後ろの席に座っていた客達は顔を見合わせた後、ひとりの客が席を立った。おそらくパンを追加するためだろう。
メロウはそれに気づいて楽しそうに笑っているが、アキトは全く気付かずに肉を挟んだパンにかぶりついていた。
「美味しいっ!この食べ方すっごく美味しいです!」
「でしょう?」
二人の食べっぷりと影響されている周りの対比を楽しんでいるうちに、二人はあっという間に綺麗に食べつくしてしまった。
ちらちらとメニューの方を見ているアキトは、まだ食べれると言いたげだなと見つめていれば、メロウは申し訳無さそうに話し始めた。
深刻そうな顔に一体何事かと身構えてしまったけれど、アキトが昇格試験を受けれるようになったという話だった。そうか、もう5種類の魔物退治が終わったんだな。
「納品されたあの素材に驚いてしまったせいで、伝えるのを忘れてしまったんです。私の失態です。申し訳ありませんでした」
頭を下げようとするメロウを、アキトはさっと手で止めた。
「いえ、そんなに気にしなくて大丈夫ですから」
「ありがとうございます。それで、ランクアップはすぐにされますか?」
メロウの質問に、アキトはちらりと俺の方を見た。
「ランクアップは受けれるようになったらすぐに受けたら良いよ。もし合格できなくても何度でも挑戦はできるからね」
虚空を見て固まるアキトを見ても、メロウはもう俺の鑑定をしようとはしなかった。銀月水桃の蜜を納品した事で、精霊が見える事はメロウの中では確定事項になったんだろう。
「メロウさん、できればすぐに受けたいです」
「EからDランクへの昇格試験は、5日おきに実施されています」
「あ、そうなんですか」
「次はちょうど明日なので、折角ここで会えたなら伝えておきたいなと思ったんです。突然こんなところでこんな話をしてすみません」
なるほど。それでこんな人目の多いところで話題に出したのか。
とはいえ、メロウは配慮もきちんとしていた。銀月水桃の蜜と言わずにあの素材と言ったことだ。これならギルドの受付と冒険者が一緒にいるくらいに、周りには思われているだろう。
「それでわざわざ教えてくださったんですね、ありがとうございます」
「いえ、手違いがあったせいでご迷惑をかけるよりは…と思っただけですから」
「じゃあ明日、試験を受けに行って良いですか?」
「はい、試験は11時から、当日参加で大丈夫ですので、受付でお声がけください」
「わかりました!」
メロウはふうと肩の力を抜くと、追加の料理を頼もうかと提案した。アキトは満面の笑みでその提案に飛びついた。
ということは、明日は冒険者ギルドで昇給試験を受けるって事だな。明日の朝は何時に起こそうかと考えながら、俺は真剣にメニューを相談している二人の姿を見つめていた。
「あー疲れた…」
「何がそんなに疲れたんだい?楽しそうに見えたけど」
「うん、楽しかったけど…年上の人に敬語で丁寧に対応されるのがさ、慣れてないから」
アキトの住んでいた国には身分制度は無いと以前言っていたな。店員であっても軽い敬語で対応されるものだから、あそこまで丁寧な対応だと緊張するそうだ。
「ああ、そうなのか。こればっかりは慣れだろうね。でも、アキトが気に入る本があって良かったよ」
「うん、読むの楽しみ!」
本を読むことを想像してか、ニコニコ笑顔のアキトはとても可愛かった。
「よし、じゃあそろそろ、アジーの串焼き屋に向かおうか」
「待ってましたー」
アジーの串焼き屋の前に辿り着いた時、アキトの興奮は最高潮だった。マーゴット商会にはあれほど緊張するのに、この建物は大丈夫なんだな。大きさも同じぐらいなんだが、アキトの判断基準はどこなんだろう。派手か地味かなんて話なんだろうか。
「ただこのお店は、注文の仕方がちょっと変わってるんだ」
店内に入る前にと説明すれば、アキトはふふと柔らかく笑い出した。何がそんなに面白かったのかが分からず、俺は不思議そうな顔でアキトを見つめた。
アキトは俺の視線に気づくと、あとでと口を動かして答えてくれた。
「「「いらっしゃいませー」」」
「アジーの串焼き屋にようこそ!」
活気あふれる店内を見渡したアキトは、楽し気にメニューを見て選びだす。
「お勧めはやっぱり串焼きだけど、ここは肉の種類が3種類、味付けも3種類あるんだ。全部食べたいならこの全種セットにして、後は小ぶりのパンを追加する人が多いかな」
しばらく悩んでいたアキトは、すぐに列の後ろに並んだ。決めるのが早いなと感心しながら、追加で注文もできると伝えれば嬉しそうな笑顔が返ってきた。
アキトは結局俺が勧めた串焼きの全種セットに、野菜串とパンを追加、酒を一杯だけ注文したようだ。焼きたての串焼きを見ているアキトがあまりに幸せそうに笑うから、俺は完全に気を抜いていた。街中だから危険は無いと思っていたというのもあるが、メロウに気づかなかった原因はアキトの可愛さのせいだ。
「こんにちは、やっぱりアキトさんでしたか」
「あれ、メロウさん、こんにちは」
「アキトさんもこのお店がお好きだったんですね」
「いえ、それが初めてなんです。せっかく休みだしと思って」
「なるほど。私も今日はお休みなんですよ。もしよろしければ、ご一緒しても良いですか?」
すぐにぜひと返すだろうと思っていた俺は、まっすぐにぶつかったアキトの視線に驚いてしまった。良いかな?と言いたげな視線に、俺は笑顔で許可を出した。今日は二人でおでかけしようと言ったから、わざわざ俺の意見を聞いてくれたんだろうな。こういうところが、たまらなく好きだ。
アキトの食べっぷりはもちろん知っていたけれど、メロウがこれほど食べるなんて知らなかった。そういえば顔を合わせる事は多かったけれど、一緒に食事をする機会なんて無かったな。
二人は美味しいと笑い合ったり、楽しそうにあれこれと話しながら食べ進めていく。周りの席からも視線が集まっているが、嫌な視線では無さそうだ。
「パンにすこし切れ込みを入れて、この串を挟んで食べるのも美味しいですよ」
「うわー絶対美味しいやつですね!やってみます」
「はい、ぜひ」
メロウの提案した食べ方に、アキトの後ろの席に座っていた客達は顔を見合わせた後、ひとりの客が席を立った。おそらくパンを追加するためだろう。
メロウはそれに気づいて楽しそうに笑っているが、アキトは全く気付かずに肉を挟んだパンにかぶりついていた。
「美味しいっ!この食べ方すっごく美味しいです!」
「でしょう?」
二人の食べっぷりと影響されている周りの対比を楽しんでいるうちに、二人はあっという間に綺麗に食べつくしてしまった。
ちらちらとメニューの方を見ているアキトは、まだ食べれると言いたげだなと見つめていれば、メロウは申し訳無さそうに話し始めた。
深刻そうな顔に一体何事かと身構えてしまったけれど、アキトが昇格試験を受けれるようになったという話だった。そうか、もう5種類の魔物退治が終わったんだな。
「納品されたあの素材に驚いてしまったせいで、伝えるのを忘れてしまったんです。私の失態です。申し訳ありませんでした」
頭を下げようとするメロウを、アキトはさっと手で止めた。
「いえ、そんなに気にしなくて大丈夫ですから」
「ありがとうございます。それで、ランクアップはすぐにされますか?」
メロウの質問に、アキトはちらりと俺の方を見た。
「ランクアップは受けれるようになったらすぐに受けたら良いよ。もし合格できなくても何度でも挑戦はできるからね」
虚空を見て固まるアキトを見ても、メロウはもう俺の鑑定をしようとはしなかった。銀月水桃の蜜を納品した事で、精霊が見える事はメロウの中では確定事項になったんだろう。
「メロウさん、できればすぐに受けたいです」
「EからDランクへの昇格試験は、5日おきに実施されています」
「あ、そうなんですか」
「次はちょうど明日なので、折角ここで会えたなら伝えておきたいなと思ったんです。突然こんなところでこんな話をしてすみません」
なるほど。それでこんな人目の多いところで話題に出したのか。
とはいえ、メロウは配慮もきちんとしていた。銀月水桃の蜜と言わずにあの素材と言ったことだ。これならギルドの受付と冒険者が一緒にいるくらいに、周りには思われているだろう。
「それでわざわざ教えてくださったんですね、ありがとうございます」
「いえ、手違いがあったせいでご迷惑をかけるよりは…と思っただけですから」
「じゃあ明日、試験を受けに行って良いですか?」
「はい、試験は11時から、当日参加で大丈夫ですので、受付でお声がけください」
「わかりました!」
メロウはふうと肩の力を抜くと、追加の料理を頼もうかと提案した。アキトは満面の笑みでその提案に飛びついた。
ということは、明日は冒険者ギルドで昇給試験を受けるって事だな。明日の朝は何時に起こそうかと考えながら、俺は真剣にメニューを相談している二人の姿を見つめていた。
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