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32.一緒に冒険がしたい
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結局、5万グルだけ現金で受け取って、残りは全てカードに入金してもらった。
俺たちが泊まってる黒鷹亭も、ハルおすすめの武器屋も防具屋もカード支払いが出来るって聞いたから、すぐに必要なのは食事代くらいなんだ。屋台はともかくレストランならほとんどでカード支払いができるらしいから、重たいし現金はいらないかなって一瞬思ったんだけど、ハルからある程度のお金は持っておくべきだって言われたんだよね。
依頼途中で何かがあった時、急に周りの人から素材やアイテムを譲ってもらうなんていう事態になったら、その場でカードでは支払えないからだって。説明を聞いたらなるほどって納得したから、現金も用意したんだ。いざという時の備え、すごく大事。
「じゃあ、すぐに依頼を受けてみる?」
簡単な採取依頼ぐらいなら、今からでも達成できるよなんて教えてくれるハルに、俺は小さく首を振った。俺は早く宿に帰りたい。
「じゃあ、このまま買い物に行こうか?」
そう聞いてくれるハルに、またしても小さく首を振る。おすすめの武器屋と防具屋に案内してくれるってさっき言ってたもんな。それも楽しみだけど、今は宿だ。
「んー…いったん宿に帰る?」
やっと出て来た俺の希望通りの予定にこくんと小さく頷けば、ハルはすぐにギルドの出口に向かって歩き出した。すかさず俺も隣に並んで歩き出す。
ギルドからの帰り道は行きとは全く違う道を選んでくれたようで、お店の並ぶ通りを見物しながら歩いていくと、あっという間に宿の前まで辿り着いていた。
部屋に入ってしっかり鍵まで閉めた俺は、すぐにハルに向き直った。
「ハル!」
「アキト、高くなるのを知ってたのに黙ってたことなら、ごめん!」
先手必勝とばかりに、ハルは申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。あんなに高いなら言ってよとは確かに思ったけど、今言いたいのはそれじゃないんだ。
「そうじゃなくて、ハル!」
「どうしたんだい?」
ぐるぐる考えすぎて、何て言えば良いのか分からなくなってきた。こうなったら直球勝負だ。それしかない。
「ハルってリスリーロの花が心残りじゃなかったのか?まだ消えない?」
「え…たぶんまだ消えないよ」
たぶんはついてたけど、まだ消えないとハルの口から聞けたのが嬉しい。
「あのさ、ハルはこれから一人で行きたい所とかあったり…するの?」
「特にないけど」
「じゃあ!これからも、俺のそばにいてくれる?俺は、ハルと一緒に冒険したい」
一番言いたかったことを、やっと口にできた。ギルドマスターの部屋にいた時から、ずっと伝えたかった言葉だ。ハルは驚いた顔で俺を見つめていたけど、ふわりと笑ってくれた。
「いるよ、一緒に」
「本当に?」
「うん、いつまでいられるかは俺にも分からないけれど、俺もアキトと一緒にいたいと思ってるから」
ハルの優しい笑顔が、じわりと滲んできた。
「一緒に冒険しようよ」
リスリーロの花がハルの心残りなのかなって、出会った頃は冷静に考えられてた。でも、ハルの存在は、俺の中ではどんどん大きくなっていった。ふと気づくと、ハルが消えたらら俺はどうすれば良いのかとまで考えるようになってた。
カルツさんと別れた時に思ったんだ。ハルにも家族とか行きたい場所があるのかもしれないって。俺はハルにとっては、リスリーロの花を届けるためのただの同行者で、一緒に冒険してくれるなんて保証はないとそう思ってた。
だからこそ、一緒に冒険したいと言ってくれて、本当に嬉しかったんだ。
「泣かないで、アキト」
「泣いてない!」
「いや、泣いてるでしょ」
「泣いてないっ!」
こんなふざけたやりとりが、これから先も出来る。ハルの意志で、これからも俺と一緒に冒険してくれる。
そう思うだけで、俺の涙は止まりそうになかった。
俺たちが泊まってる黒鷹亭も、ハルおすすめの武器屋も防具屋もカード支払いが出来るって聞いたから、すぐに必要なのは食事代くらいなんだ。屋台はともかくレストランならほとんどでカード支払いができるらしいから、重たいし現金はいらないかなって一瞬思ったんだけど、ハルからある程度のお金は持っておくべきだって言われたんだよね。
依頼途中で何かがあった時、急に周りの人から素材やアイテムを譲ってもらうなんていう事態になったら、その場でカードでは支払えないからだって。説明を聞いたらなるほどって納得したから、現金も用意したんだ。いざという時の備え、すごく大事。
「じゃあ、すぐに依頼を受けてみる?」
簡単な採取依頼ぐらいなら、今からでも達成できるよなんて教えてくれるハルに、俺は小さく首を振った。俺は早く宿に帰りたい。
「じゃあ、このまま買い物に行こうか?」
そう聞いてくれるハルに、またしても小さく首を振る。おすすめの武器屋と防具屋に案内してくれるってさっき言ってたもんな。それも楽しみだけど、今は宿だ。
「んー…いったん宿に帰る?」
やっと出て来た俺の希望通りの予定にこくんと小さく頷けば、ハルはすぐにギルドの出口に向かって歩き出した。すかさず俺も隣に並んで歩き出す。
ギルドからの帰り道は行きとは全く違う道を選んでくれたようで、お店の並ぶ通りを見物しながら歩いていくと、あっという間に宿の前まで辿り着いていた。
部屋に入ってしっかり鍵まで閉めた俺は、すぐにハルに向き直った。
「ハル!」
「アキト、高くなるのを知ってたのに黙ってたことなら、ごめん!」
先手必勝とばかりに、ハルは申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。あんなに高いなら言ってよとは確かに思ったけど、今言いたいのはそれじゃないんだ。
「そうじゃなくて、ハル!」
「どうしたんだい?」
ぐるぐる考えすぎて、何て言えば良いのか分からなくなってきた。こうなったら直球勝負だ。それしかない。
「ハルってリスリーロの花が心残りじゃなかったのか?まだ消えない?」
「え…たぶんまだ消えないよ」
たぶんはついてたけど、まだ消えないとハルの口から聞けたのが嬉しい。
「あのさ、ハルはこれから一人で行きたい所とかあったり…するの?」
「特にないけど」
「じゃあ!これからも、俺のそばにいてくれる?俺は、ハルと一緒に冒険したい」
一番言いたかったことを、やっと口にできた。ギルドマスターの部屋にいた時から、ずっと伝えたかった言葉だ。ハルは驚いた顔で俺を見つめていたけど、ふわりと笑ってくれた。
「いるよ、一緒に」
「本当に?」
「うん、いつまでいられるかは俺にも分からないけれど、俺もアキトと一緒にいたいと思ってるから」
ハルの優しい笑顔が、じわりと滲んできた。
「一緒に冒険しようよ」
リスリーロの花がハルの心残りなのかなって、出会った頃は冷静に考えられてた。でも、ハルの存在は、俺の中ではどんどん大きくなっていった。ふと気づくと、ハルが消えたらら俺はどうすれば良いのかとまで考えるようになってた。
カルツさんと別れた時に思ったんだ。ハルにも家族とか行きたい場所があるのかもしれないって。俺はハルにとっては、リスリーロの花を届けるためのただの同行者で、一緒に冒険してくれるなんて保証はないとそう思ってた。
だからこそ、一緒に冒険したいと言ってくれて、本当に嬉しかったんだ。
「泣かないで、アキト」
「泣いてない!」
「いや、泣いてるでしょ」
「泣いてないっ!」
こんなふざけたやりとりが、これから先も出来る。ハルの意志で、これからも俺と一緒に冒険してくれる。
そう思うだけで、俺の涙は止まりそうになかった。
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