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3.第一異世界人発見!
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歩けば歩く程、ここは異世界だという実感が湧いてくる。
生き物の姿はあの鬼ネズミ(仮)から見てはいないが、聞いた事もない鳥の鳴き声が聞こえてくるし、見渡す限り花や木の実、果物、全てが見た事が無いものばかりだ。
しかもそのどれもが、今までの常識からしてなかなか受け入れ難い色をしている。
「なんか毒のありそうな色ばっかりなんだよなぁ…」
最初に見かけたのは蛍光ピンクに紫と黒のマーブルだった。それから澄み渡った空の色、赤と青のグラデーション、赤みがかった黒に、赤に白の水玉模様、淡い紫や何ならうっすら光っているものまであった。
これだけ見た目から違っていると、食べられる物なのか食べられない物なのかすら判別できない。そもそも、こっちのお金も無ければ身分証も無いんだけど、どうにかなるのかな。一瞬疑問がよぎったが、あえて考えるのをやめた。どうせなるようにしかならないんだし、うだうだ考えても無駄だ。
ひたすらに足を進めていけば、20分程も歩いたところでうっすらと水の音が聞こえてきた。思わず安堵の息が漏れた。
音を頼りに歩いていけば、澄み切った水の流れる小さめの川に辿り着いた。
あんなにカラフルなものばかりの森だったけど、水はちゃんと透明だった。さすがに蛍光ブルーとか黒い水だったら違和感ありすぎて飲めないと思う。
ありがとう。透明でいてくれてありがとう、水。
心の底から透明な水に感謝していると、川の向こうにある大きな岩の近くに、誰かが立っている事に気づいた。木の陰に隠れてこっそりと覗いてみれば、金髪の身ぎれいな恰好をした男性だった。この見た目で盗賊ってことは無いだろう。
第一異世界人発見か!
わくわくと近づいていくが、向こうはまだこちらに気づいてはいない。近くにある淡い水色の百合に似た花を、じっと見つめているようだった。
「こんにちは」
何も考えずに声をかけてから、言葉が通じなかったらどうしようとすこし焦った。よし、通じなかったら身振り手振りで頑張ろう。
覚悟を決めている間に振り返った男は、まばゆい金髪に紫の瞳だ。俺とおそらくは同世代ぐらい。ほりが深く整った鼻筋は、外国の映画俳優のようだ。10人に聞いたら10人全員がイケメンと認めるだろう、その美形っぷりに少し怯んだ。だってこの男の人、その整った顔で無反応かつ無表情なんだぞ。それは怯むだろう。
「あのー」
それでも逃がしてなるものかとさらに声をかければ、男は驚いたようにゆっくりと瞬きをしてからにっこりと笑ってくれた。さっきまでの冷たそうな雰囲気が消えて、一気に親しみやすい雰囲気に変わる。
「ああ、こんにちは。こんなとこに人がいるなんて珍しい」
「言葉通じた!」
助かった!言葉はきちんと通じるんだ。第一関門を突破した気分で思わず口にすれば、男は律儀に答えてくれる。
「うん、通じてるね」
「あ、すみません、そのいくつか質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「あの、ここはどこでしょう?」
変な質問をするなって怒り出さないでくれたら良いんだけど。俺がそう聞かれたら、まずは酔っ払いか何かの罰ゲームかを疑うと思う。まあ迷子の幽霊にはよく聞かれるから、俺的には慣れた質問なんだけど。自分がしたのは初めてだ。
「ここはマールクロア王国にあるナルクアの森だよ」
こちらの心配に反して、男は穏やかな声で答えてくれた。
「俺からもいくつか質問して良いかな?」
「あ、はい」
思わず反射的に肯定してしまったけど、俺に答えられる事なんてそんなに無い。
「君はどこから来たの?ここはナルクアの森の中でもかなり深部だし、一人でくるような場所じゃないけど」
「えーと」
正直に話して良いものかと躊躇っていると、男は楽しそうに笑いながら続けた。
「それに…俺が見えてしかも話せるなんて、普通じゃない、でしょ?」
その言葉に思わずバッと男の足元を見れば、たしかにそこに影は無かった。見慣れない場所で初めて人を見つけた安心感で、いつもなら癖になっている確認作業を忘れていたらしい。
「第一異世界人じゃなくて第一異世界幽霊だった…」
「その第一なんとかはわからないけど、異世界?君は異世界から来たのか?」
長年の経験からして、悪意のある霊は目が違う。見た目はどれだけ取り繕っても、よどんだ目や濁った目をしているんだ。こんなに透き通った綺麗な目をして、まっすぐ見返してくれる人なら大丈夫だろう。人でも幽霊でも、情報をくれるなら一緒だ。
「あ、はい、たぶんそうです」
「じゃあ詳しく話そうか」
手招きに応じて近くに転がっていた石に座ると、俺の前に立った男は話し始めた。
生き物の姿はあの鬼ネズミ(仮)から見てはいないが、聞いた事もない鳥の鳴き声が聞こえてくるし、見渡す限り花や木の実、果物、全てが見た事が無いものばかりだ。
しかもそのどれもが、今までの常識からしてなかなか受け入れ難い色をしている。
「なんか毒のありそうな色ばっかりなんだよなぁ…」
最初に見かけたのは蛍光ピンクに紫と黒のマーブルだった。それから澄み渡った空の色、赤と青のグラデーション、赤みがかった黒に、赤に白の水玉模様、淡い紫や何ならうっすら光っているものまであった。
これだけ見た目から違っていると、食べられる物なのか食べられない物なのかすら判別できない。そもそも、こっちのお金も無ければ身分証も無いんだけど、どうにかなるのかな。一瞬疑問がよぎったが、あえて考えるのをやめた。どうせなるようにしかならないんだし、うだうだ考えても無駄だ。
ひたすらに足を進めていけば、20分程も歩いたところでうっすらと水の音が聞こえてきた。思わず安堵の息が漏れた。
音を頼りに歩いていけば、澄み切った水の流れる小さめの川に辿り着いた。
あんなにカラフルなものばかりの森だったけど、水はちゃんと透明だった。さすがに蛍光ブルーとか黒い水だったら違和感ありすぎて飲めないと思う。
ありがとう。透明でいてくれてありがとう、水。
心の底から透明な水に感謝していると、川の向こうにある大きな岩の近くに、誰かが立っている事に気づいた。木の陰に隠れてこっそりと覗いてみれば、金髪の身ぎれいな恰好をした男性だった。この見た目で盗賊ってことは無いだろう。
第一異世界人発見か!
わくわくと近づいていくが、向こうはまだこちらに気づいてはいない。近くにある淡い水色の百合に似た花を、じっと見つめているようだった。
「こんにちは」
何も考えずに声をかけてから、言葉が通じなかったらどうしようとすこし焦った。よし、通じなかったら身振り手振りで頑張ろう。
覚悟を決めている間に振り返った男は、まばゆい金髪に紫の瞳だ。俺とおそらくは同世代ぐらい。ほりが深く整った鼻筋は、外国の映画俳優のようだ。10人に聞いたら10人全員がイケメンと認めるだろう、その美形っぷりに少し怯んだ。だってこの男の人、その整った顔で無反応かつ無表情なんだぞ。それは怯むだろう。
「あのー」
それでも逃がしてなるものかとさらに声をかければ、男は驚いたようにゆっくりと瞬きをしてからにっこりと笑ってくれた。さっきまでの冷たそうな雰囲気が消えて、一気に親しみやすい雰囲気に変わる。
「ああ、こんにちは。こんなとこに人がいるなんて珍しい」
「言葉通じた!」
助かった!言葉はきちんと通じるんだ。第一関門を突破した気分で思わず口にすれば、男は律儀に答えてくれる。
「うん、通じてるね」
「あ、すみません、そのいくつか質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「あの、ここはどこでしょう?」
変な質問をするなって怒り出さないでくれたら良いんだけど。俺がそう聞かれたら、まずは酔っ払いか何かの罰ゲームかを疑うと思う。まあ迷子の幽霊にはよく聞かれるから、俺的には慣れた質問なんだけど。自分がしたのは初めてだ。
「ここはマールクロア王国にあるナルクアの森だよ」
こちらの心配に反して、男は穏やかな声で答えてくれた。
「俺からもいくつか質問して良いかな?」
「あ、はい」
思わず反射的に肯定してしまったけど、俺に答えられる事なんてそんなに無い。
「君はどこから来たの?ここはナルクアの森の中でもかなり深部だし、一人でくるような場所じゃないけど」
「えーと」
正直に話して良いものかと躊躇っていると、男は楽しそうに笑いながら続けた。
「それに…俺が見えてしかも話せるなんて、普通じゃない、でしょ?」
その言葉に思わずバッと男の足元を見れば、たしかにそこに影は無かった。見慣れない場所で初めて人を見つけた安心感で、いつもなら癖になっている確認作業を忘れていたらしい。
「第一異世界人じゃなくて第一異世界幽霊だった…」
「その第一なんとかはわからないけど、異世界?君は異世界から来たのか?」
長年の経験からして、悪意のある霊は目が違う。見た目はどれだけ取り繕っても、よどんだ目や濁った目をしているんだ。こんなに透き通った綺麗な目をして、まっすぐ見返してくれる人なら大丈夫だろう。人でも幽霊でも、情報をくれるなら一緒だ。
「あ、はい、たぶんそうです」
「じゃあ詳しく話そうか」
手招きに応じて近くに転がっていた石に座ると、俺の前に立った男は話し始めた。
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