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【マシューside】学園の剣の指導者
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婚約から11年の時が過ぎた。リナは17歳、俺は20歳になった。
リナが卒業したらすぐに結婚できるとはいえ、もう待ちきれない気持ちでいっぱいだった。
第一騎士団でも将軍の息子という肩書はついて回ってきた。
入ってすぐ、王都近くに出た大型魔物の討伐作戦では俺に任務が回ってきた。
もちろん通常なら新人騎士に来るような任務では無い。その上、第一騎士団の中から誰かを選び、ペアで任務に当たれと言われたのだ。普通の討伐作戦なら、一部隊10人程で挑むものなのに、だ。
ここで出来ないと言ってしまえば、おそらく将軍の息子は大したことが無いとでも言いふらすつもりなんだろう。そこまで考えて俺の気持ちは決まった。
「なあレックス、お前俺と二人で大型魔物討伐作戦に行く気はあるか?」
「二人で?」
騎士団本部の裏庭でうまくサボっていたレックスに声をかける。
「そう、誰かを選んで任務に当たれと言われた」
「あーそういうことか…うん、二人でもフェンリルぐらい余裕だし良いよ」
あっさりと受けてくれたレックスには、感謝しかなかった。
結果?もちろん二人でばっちり倒してから報告書を上げて、ついでに二人で行って来いと言われた件の詳細な報告書を騎士団本部上層部に直接提出した。あっという間に馬鹿な部隊長はどこかに行った。
一部隊を率いて良いから、この件は騎士団預かりにさせて欲しいと言われた。王家にまで伝われば、ありえない失態になるからだ。
レックスが副部隊長なら受けると言ったら、それもあっさり通ってしまった。子爵家からこんなに早く出世したのは、俺が最初じゃないかなとレックスは笑って喜んでくれた。
全てが終わってから、ようやく報告を受けたらしい父から呼び出された。
「良い友人が出来て良かったな」
「レックスはたしかに良い奴です。強いですし。それで他に言うことは無いんですか?」
「詫びとしてひとつ良いことを教えようか」
「なんでしょう?」
その時まで、俺はロンディーネ学園に、剣の指導者の枠が存在している事すら知らなかった。しかも第一騎士団員があたるという不文律まであるらしい。
「つまり、その枠に入れば、リナに学園でも会える?」
「もうひとつ教えてやろう」
もったいぶった声で悪戯っぽく言う父は、思ってもみない事を口にした。
「卒業パーティーには学校関係者の出席が認められている…分かるか?」
それはつまり、必ず誰かと踊らなければならないという卒業パーティーに自分が参加できるということだ。誰か他の男と踊るリナを心配しながら遠くで待たなくて良い。何なら自分が踊りに誘えば良い。そういうことだ。
「ありがとうございます。何が何でもその枠をもぎ取ります」
「もうもらってきたよ」
にんまりと笑った父は、目だけは笑っていなかった。
「お前とレックスくんの強さのおかげで助かったとは言え、任務を理由に新人騎士を命の危機に追いやったんだ、これぐらいは貰わないとねぇ?これだけで済ますつもりもないけれど」
徹底的に膿を搾り取る気の父に、俺は素直にお礼を言ってから喜々としてリナに会いにいった。
リナが卒業したらすぐに結婚できるとはいえ、もう待ちきれない気持ちでいっぱいだった。
第一騎士団でも将軍の息子という肩書はついて回ってきた。
入ってすぐ、王都近くに出た大型魔物の討伐作戦では俺に任務が回ってきた。
もちろん通常なら新人騎士に来るような任務では無い。その上、第一騎士団の中から誰かを選び、ペアで任務に当たれと言われたのだ。普通の討伐作戦なら、一部隊10人程で挑むものなのに、だ。
ここで出来ないと言ってしまえば、おそらく将軍の息子は大したことが無いとでも言いふらすつもりなんだろう。そこまで考えて俺の気持ちは決まった。
「なあレックス、お前俺と二人で大型魔物討伐作戦に行く気はあるか?」
「二人で?」
騎士団本部の裏庭でうまくサボっていたレックスに声をかける。
「そう、誰かを選んで任務に当たれと言われた」
「あーそういうことか…うん、二人でもフェンリルぐらい余裕だし良いよ」
あっさりと受けてくれたレックスには、感謝しかなかった。
結果?もちろん二人でばっちり倒してから報告書を上げて、ついでに二人で行って来いと言われた件の詳細な報告書を騎士団本部上層部に直接提出した。あっという間に馬鹿な部隊長はどこかに行った。
一部隊を率いて良いから、この件は騎士団預かりにさせて欲しいと言われた。王家にまで伝われば、ありえない失態になるからだ。
レックスが副部隊長なら受けると言ったら、それもあっさり通ってしまった。子爵家からこんなに早く出世したのは、俺が最初じゃないかなとレックスは笑って喜んでくれた。
全てが終わってから、ようやく報告を受けたらしい父から呼び出された。
「良い友人が出来て良かったな」
「レックスはたしかに良い奴です。強いですし。それで他に言うことは無いんですか?」
「詫びとしてひとつ良いことを教えようか」
「なんでしょう?」
その時まで、俺はロンディーネ学園に、剣の指導者の枠が存在している事すら知らなかった。しかも第一騎士団員があたるという不文律まであるらしい。
「つまり、その枠に入れば、リナに学園でも会える?」
「もうひとつ教えてやろう」
もったいぶった声で悪戯っぽく言う父は、思ってもみない事を口にした。
「卒業パーティーには学校関係者の出席が認められている…分かるか?」
それはつまり、必ず誰かと踊らなければならないという卒業パーティーに自分が参加できるということだ。誰か他の男と踊るリナを心配しながら遠くで待たなくて良い。何なら自分が踊りに誘えば良い。そういうことだ。
「ありがとうございます。何が何でもその枠をもぎ取ります」
「もうもらってきたよ」
にんまりと笑った父は、目だけは笑っていなかった。
「お前とレックスくんの強さのおかげで助かったとは言え、任務を理由に新人騎士を命の危機に追いやったんだ、これぐらいは貰わないとねぇ?これだけで済ますつもりもないけれど」
徹底的に膿を搾り取る気の父に、俺は素直にお礼を言ってから喜々としてリナに会いにいった。
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