【完結】クラーク伯爵令嬢は、卒業パーティーで婚約破棄されるらしい

根古川ゆい

文字の大きさ
上 下
11 / 15

【マシューside】学園の剣の指導者

しおりを挟む
婚約から11年の時が過ぎた。リナは17歳、俺は20歳になった。
 リナが卒業したらすぐに結婚できるとはいえ、もう待ちきれない気持ちでいっぱいだった。

 第一騎士団でも将軍の息子という肩書はついて回ってきた。

 入ってすぐ、王都近くに出た大型魔物の討伐作戦では俺に任務が回ってきた。

 もちろん通常なら新人騎士に来るような任務では無い。その上、第一騎士団の中から誰かを選び、ペアで任務に当たれと言われたのだ。普通の討伐作戦なら、一部隊10人程で挑むものなのに、だ。

 ここで出来ないと言ってしまえば、おそらく将軍の息子は大したことが無いとでも言いふらすつもりなんだろう。そこまで考えて俺の気持ちは決まった。

「なあレックス、お前俺と二人で大型魔物討伐作戦に行く気はあるか?」
「二人で?」

 騎士団本部の裏庭でうまくサボっていたレックスに声をかける。

「そう、誰かを選んで任務に当たれと言われた」
「あーそういうことか…うん、二人でもフェンリルぐらい余裕だし良いよ」

 あっさりと受けてくれたレックスには、感謝しかなかった。

 結果?もちろん二人でばっちり倒してから報告書を上げて、ついでに二人で行って来いと言われた件の詳細な報告書を騎士団本部上層部に直接提出した。あっという間に馬鹿な部隊長はどこかに行った。

 一部隊を率いて良いから、この件は騎士団預かりにさせて欲しいと言われた。王家にまで伝われば、ありえない失態になるからだ。

 レックスが副部隊長なら受けると言ったら、それもあっさり通ってしまった。子爵家からこんなに早く出世したのは、俺が最初じゃないかなとレックスは笑って喜んでくれた。

 全てが終わってから、ようやく報告を受けたらしい父から呼び出された。

「良い友人が出来て良かったな」
「レックスはたしかに良い奴です。強いですし。それで他に言うことは無いんですか?」
「詫びとしてひとつ良いことを教えようか」
「なんでしょう?」

 その時まで、俺はロンディーネ学園に、剣の指導者の枠が存在している事すら知らなかった。しかも第一騎士団員があたるという不文律まであるらしい。

「つまり、その枠に入れば、リナに学園でも会える?」
「もうひとつ教えてやろう」

 もったいぶった声で悪戯っぽく言う父は、思ってもみない事を口にした。

「卒業パーティーには学校関係者の出席が認められている…分かるか?」

 それはつまり、必ず誰かと踊らなければならないという卒業パーティーに自分が参加できるということだ。誰か他の男と踊るリナを心配しながら遠くで待たなくて良い。何なら自分が踊りに誘えば良い。そういうことだ。

「ありがとうございます。何が何でもその枠をもぎ取ります」
「もうもらってきたよ」

 にんまりと笑った父は、目だけは笑っていなかった。

「お前とレックスくんの強さのおかげで助かったとは言え、任務を理由に新人騎士を命の危機に追いやったんだ、これぐらいは貰わないとねぇ?これだけで済ますつもりもないけれど」

 徹底的に膿を搾り取る気の父に、俺は素直にお礼を言ってから喜々としてリナに会いにいった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

記憶喪失を理由に婚約破棄を言い渡されるけど、何も問題ありませんでした

天宮有
恋愛
 記憶喪失となった私は、伯爵令嬢のルクルらしい。  私は何も思い出せず、前とは違う言動をとっているようだ。  それを理由に婚約者と聞いているエドガーから、婚約破棄を言い渡されてしまう。  エドガーが不快だったから婚約破棄できてよかったと思っていたら、ユアンと名乗る美少年がやってくる。  ユアンは私の友人のようで、エドガーと婚約を破棄したのなら支えたいと提案してくれた。

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

めぐめぐ
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

お約束の異世界転生。計画通りに婚約破棄されたので去ります──って、なぜ付いてくる!?

リオール
恋愛
ご都合主義設定。細かい事を気にしない方向けのお話です。 5話完結。 念押ししときますが、細かい事は気にしないで下さい。

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 その王立学園の一大イベント・舞踏会の場で、アリシアは突然婚約破棄を言い渡された。 まったく心当たりのない理由をつらつらと言い連ねられる中、アリシアはとある理由で激しく動揺するが、そこに現れたのは──。

処理中です...