【完結】クラーク伯爵令嬢は、卒業パーティーで婚約破棄されるらしい

根古川ゆい

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卒業パーティー

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 窓から差し込む夕陽に照らされたホール内は、繊細な彫刻が息を呑むほど美しく、訪れた人の目を楽しませています。

 今日ここで行われるのは、ロンディーネ学園の卒業パーティーです。

 
 王立ロンディーネ学園は、平民と貴族が共に学ぶ国内最大規模の学校です。

 ちょうど王都の隣に位置する学園は広大な敷地を有しており、寮や学舎さらには各種店舗までが集まっています。もはやちょっとした町のような規模で、初めて王都に訪れた人が間違って迷い込んでしまうこともよくある、とても巨大な学園なのです。

 そんな何でも揃った学園ですが、さすがに夜会用の会場は存在していません。今日の卒業パーティーは、王都内にある王家の夜会用のホールが、特別に解放されるのです。

 特別扱いはそれだけではありません。事前に申請さえすれば無料で貸し出しをしてもらえるドレスや礼服、さらには着替えを手伝ってくれる侍女や侍従の方々までしっかりと用意されています。そのおかげで、参加者は身分を問わずしっかりと着飾って参加できるのです。

 卒業生と学園の関係者のみが参加できる、一夜限りの特別な夜会。
 
 ある人は仲の良かった友人と名残を惜しみ、ある人は人脈づくりに勤しんだりと、会場内はなかなかに賑やかです。

 王家からのお祝いの品だという、貴族でもなかなかお目にかかれない程の贅を尽くした豪華な料理に、目を輝かせている生徒も多いです。

 会場内を楽し気に歩いている女生徒たちは、淡いピンクや黄色、爽やかな水色など、華やかなふわふわのドレスに身を包んでいます。

 楽しそうにパーティーを満喫している周囲をぼんやりと見ながら、私リナティエラは、今日何度目かのため息を飲み込みました。

 派手な金髪でさらに長身の私には、ふわふわのドレスや柔らかい色は似合いません。今日は両親が用意してくれた、スリムなシルエットの鮮やかな青色のドレスに身を包んでいますが、はっきり言って周りからは浮いています。

 ちらちらと自分の周りに視線が集まって来るのが、煩わしくて仕方がありません。皆さま、遠慮なく見すぎですよと、文句の一つも言いたくなりますが、口にはもちろん表情にも出しません。これぐらいの事は貴族令嬢の嗜みですからね。

 とはいえ、集まってくる視線の原因が、私の服装だけでは無いのも分かっています。これは全て、卒業パーティーの1週間程前から、学園内で流れた噂が原因です。



―クラーク伯爵令嬢は、卒業パーティーで婚約破棄されるらしい
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