ある休憩室で突然一目惚れをした話

リツキ

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 背中全面に失意のオーラをまといながら、玲は抄介の部屋から静かに退室して行った。
 後ろ姿を静かに見つめていたが、複雑な気持ちで抄介は座りながら頭を抱えた。
 正直、今すぐなんて無理だと思った。
 知らなかった事実を今夜初めて知り、これをどれだけ自分の中で咀嚼できるか自信がない。

 そして初めて見た、俳優としての玲の姿。

 まさかこんなところで玲と再会するとは予想外で、それだけでも動揺していたのだ。
 外が少し騒がしかったので女中に声をかけたところ、映画の撮影が始まるらしくそのせいでギャラリーが押し寄せていると聞いた。
 抄介は二週間前からここに滞在していて、一カ月間ほど泊まる予定をしていた。
 理由はずっと仕事詰めの生活からようやく解放され、そして玲との突然の別れもこたえていて現実を忘れたかったのだ。
 山の風景に癒されたり、部屋で本を読んだりネットで動画を見たりと、かなりぐうたら生活をしていたのだが、それを見兼ねた世話好きの女中さんが、その撮影風景を見に行かないかと誘われたのだ。
 確かに映画の撮影なんてなかなか見られないかもしれないと思い、その誘いに乗って行ったのだが、目の間に過去、恋焦がれ、そして裏切られたと思っていた相手が役者として演じている姿を目にするとは予想外の展開だったのだ。
 実は最初、玲だと気づかずしばらく見ていたのだが、徐々に彼だと気づき始めた。
 髪の色も黒色になっていたから余計にわからなかったのだ。
 玲だと気づいた瞬間、彼と偶然にも目が合ってしまった。その瞬間、反射的に身を翻し旅館に籠ってしまったのだ。
 目の前にある現実と忘れようとした苦い思い出が一気に駆け巡り、冷静になれなかった。
 夕食もあまり食べられず、ぼんやりしていた矢先、再び部屋に玲が現れたのだ。
 どうするべきかと迷ったが、彼は芸能人という立場でありながら自分の下へ来たということがどういう意味か理解し、とにかく部屋へ入れたのだ。
 どこで誰が聞いているかわからない。それは仕事を辞めるきっかけになった事件で嫌というほど味わった。

 部屋に入ってきた玲は、以前より痩せたように見え少しだけ抄介は心配になったが、彼寄りに気持ちが傾くことが怖くて、慌てて顔を逸らした。
 彼の事を心配する気持ちと裏切られた気持ちが複雑に絡んで、どういう態度で接していいかわからなかった。
 けれど玲の言い分は聞くべきだと思い彼の話を全て聞いているうち、更に抄介は混乱してしまった。
 この二カ月間、裏切られたと思い込んでいたのが全てくつがえってしまい、あの時生まれた怒りの感情の行き場を失ってしまってどうしたらいいかわからなくなった。
 そしてもう一度やり直したいと言われて、更に返答に困ってしまったのだ。
(いや待ってくれ。だって俺は一般人だと思って玲と付き合っていたんだ)
 まさか本当の姿は俳優をしている芸能人だったなんて誰が思うのだろうか。
 休憩室で会っていた時の玲と演技をしている玲の顔は別人で、その戸惑いは大きい。
(まだ結論を出すことはできない)
 玲が去った後の部屋は、どこか空虚な雰囲気が漂っていた。





 次の日の朝、抄介は昨夜あまり眠れなかったせいもあって、体が少しだるかった。
 顔を洗い軽く身支度を済ますと、まだ頭が動かない状態でぼおっとしながら大広間で朝食を取るが、あまり食欲が沸かない。
 食が進まない姿を見た、昨日撮影の見学を誘った女中が心配そうに声をかけて来た。
「お口に合いませんでしたか?」
「あ、いや・・・違います。俺自身があまり食欲なくて」
 苦笑いする抄介に女中は、そうですかと言った。
「もしかして昨日夜にご案内した俳優さんのことで何かあったんですか?」
 痛い所を突かれた抄介は、少し口籠る。
「喧嘩でもされたのかなと勝手に思っていたのですが・・・最初、俳優さんと合わせていいものか悩んだんですけど、お相手様があまりにも必死でしたのでお願いを聞いてしまいました」
「そ、そうなんですか。大丈夫ですよ。もう話し合えたので」
 薄く笑う抄介に女中も気を遣い笑った。
「そうですか。よかったです。それでは失礼しますね」
 頭を下げ抄介の元を去るが、大きく溜息を再び吐くしかなかった。
 話し合いは終わったが解決はしていない。
 本来、あの時受けた傷と、働き続けた日々の体を癒す為にここへ来ようと思ったのだ。
 元々その案を出してくれたのはアキラだった。
 仕事を辞めたその日、ぶらりとアキラの店へ行って仕事を辞めたことを話した際、どこかゆっくりできるとこへ旅行に行ったらどうだと言われたのだ。
 確かに仕事三昧の生活だったので貯金だけはかなりあり、いい機会だったので、貯めたお金を使って旅行へ行くことにしたのだ。
(気持ちの切り替えの為にここへ来たのに・・・)
 まさかここで再び悩まされることになるとは思わなかった。



 食事を終え、抄介はぶらりと外に出て散歩を始めた。
 時間は午前九時頃になっており、アスファルト舗装をしている道路を道なりに歩いていくと、趣のある神社を途中で見かけ、鳥居の前で映画を撮影している風景が遠目に入ってきた。
 そこには玲はいなかったが、昨日、玲と一緒に共演していた30代くらいの男性と有名なベテラン俳優の姿はあった。
 周りには撮影スタッフたちが何人かに囲まれ、撮影をしている。
 抄介のように撮影を見たくて集まっている人たちもいたが、邪魔にならないように遠くから見ている人たちもいた。

 撮影風景を見つめながら玲のことを思う。
 彼の人生はこういう世界で生きている人だ。
 抄介の生活の中では味わったことがない世界で、この特殊な世界に生きている人間と再び仲良くなんてできるのだろうかと疑問に思った。
(そもそもどうやって玲と一緒に過ごせていたのか思い出せない)
 あの時は一般人だと思って接していたから何も考えていなかったけど、芸能人だと分かった瞬間、二人の間の次元が変わったように感じた。
(俺は何に対して不安に思ってるんだろう)
 抄介は玲に対して感じている不安はきっと、違う世界の人間だと感じたから距離を感じたのだと思う。
(異世界の存在のように思えたんだ。一気に距離が離れたような感覚に陥ったんだと思う)
 だからこそ戸惑いを覚え、玲に対して引いてしまったのだ。
 自分なりに色々分析しながら考えるが、それでも玲との関係に結論には至らなかった。
 大きく溜息を吐くと、踵を返し別のルートへと散歩を続けた。





 映画撮影が始まってから三日程経った時だった。
 お昼頃、抄介は再び散歩へと出かけ気ままに歩いていたのだが、再び道中で撮影現場に出くわした。
 そこには何人かの俳優人が撮影しており、そこには玲の姿も見えた。
 自分と会話した時の玲ではなく、真剣な目つきをし、雰囲気もどこか陰鬱な感じでいつもの玲とは真逆な感じがした。
(これが役者ってやつなんだろうな)
 そんなことを思いながらぼんやり撮影風景を見ていると、抄介の傍に誰かが近寄ってきた。
 見ると、そこには凛とした30代前後のキツイ顔立ちのパンツスーツを着衣している女性が立っていた。
「こんにちは」
「・・・こんにちは」
 誰だろうと思いながら抄介はその女性を見る。
 女性は暫し抄介を見ると、にっこりと笑みを作りながら言った。
「あなた、倉沢抄介さんよね?」
「え?」
 自分の名前を知っていることに驚き、思わず声が出た。
「ごめんなさい。急に名前を言われてびっくりするわよね。私、三雲玲のマネージャーの桜川と言います」
「マネージャー?」
 一瞬ドキっとして抄介は思わず距離を置いた。
「怖がらなくてもいいわ。あなたと玲の関係は知っているので安心して」
「い、いやそういうことじゃなくて、なんで俺が倉沢だってわかったんですか?」
 不安を覚えながら問う抄介に桜川はにっこりと微笑んだ。
「写真よ。あなた、玲と一緒に写真を撮ったでしょ?会社の携帯にしっかり残っていたから。あなたのLINEから送った物よね?」
 しっかり見られていたらしく、抄介は気まずい表情をした。
「それで覚えていたのよ。随分玲とは関係が深かったみたいね」
「・・・何が言いたいんですか?」
 含むような言い方に抄介は少し引っ掛かりを感じ、尋ねた。
「言葉通りよ。あなた達は・・・付き合っていた。でも今はそれが終わっている」
 彼女の物言いはどこか嫌味を感じ、抄介は段々不愉快な気持ちになってきた。
「その方がおたくには良かったんじゃないんですか?一般人のおまけに相手は男・・・」
 自分で言って胸の痛みを感じた抄介だったが、桜川は更に淡々と問いかけた。
「そうね、本音は。でも離れたはずのあなたがここにいる。これってどういうこと?もしかして玲の後を追ってきたの?」
「まさか!!」
 抄介は大きな声で即答した。
 完全に否定したので桜川は顔を歪め問い質してきた。
「じゃあなんでいるわけ?」
「俺はここへ傷心旅行に来ているんです。いろんなことに振り回されてすっかり疲れてしまったので」
 嫌味で返す抄介に対し、桜川は意外な反応を示した。
「・・・知ってるわ。あなたが仕事を辞めたこと。それに対しては申し訳ないと思ってる」
 ごめんなさいと言って頭を下げる桜川に抄介は少し焦って否定した。
「辞めたのは事件が理由ではありません。いいきっかになったのは事実ですけど。でも違います」
「え、そうなの?じゃあ辞めたきっかけって何?」
 深く問い質す桜川に少し不快な気持ちになり、手短に答えた。
「いわゆるブラック企業ってやつで、いい加減疲れてしまって辞めたんです。玲との事件がある意味きっかけだっただけです」
 抄介の話に桜川は本気で驚いた表情になって言った。
「そうだったのね。じゃあここで会ったのも本当に偶然ということなの?」
「ええ、俺もびっくりしました。忘れたくてここへ来たのに」
 言って抄介は横を向くと彼の様子を見ながら桜川は答えた。
「そうだったの、だったら安心したわ。ストーカーに追われてるなんてスキャンダルのネタになるものね」
 嫌味っぽく桜川は言い、話を続けた。
「これ以上あの子にスキャンダルは止めて欲しい。あの子は今後、もっと俳優として伸びていく子よ。それだけの才能があるの」
 きっぱりと強い口調で言い切った。
「あの子の性格は他人への共感能力が強いのよ。相手に共感し相手の気持ちに寄り添えることができる。その能力は俳優として大事な部分だと思っているわ。役柄に寄り添える力がないとリアリティに演じるのは難しいからよ。小手先だけをいじって演じる俳優にはなって欲しくないの」
 桜川の話を聞いているうち、思い当たる節があった。
 仕事の悩みを口にした時、優しく自分がしてきた行動に否定せず寄り添うように言ってくれた。
 つまり抄介の気持ちになって励ましてくれていたのだ。そして抄介は楽になり、癒されたことも思い出した。
「確かに、玲はそういう子だったと思います。優しい子だったと」
「そうね。思いやれる子であり無邪気な子。その無邪気さが時々、悪い方に向いて自分自身を追い詰めるの。それが本当に惜しいって思っているわ」
「でもその無邪気さは玲にとっての魅力ですよ」
 抄介から言い返され桜川はムッとした表情になる。
 二人は暫し睨むように見合っていたが、ふと桜川は抄介に問われたくないことを尋ねてきた。
「あなたは今、あの子にどんな感情を抱いているの?」
「どうって・・・」
 今の感情は正直わからなかったので言葉を濁した。
「正直、私はこのまま離れていて欲しい。でも今のあの子は光を失っている気がするの」
「え?」
 そう桜川から言われて抄介は驚いた。
「あなたと別れてからかなり痩せたし、笑っていても心からは笑っていない。あなたと付き合っていた時は本当に輝いていた」
 複雑な表情になって桜川は抄介を見た。
「でも思うの。将来のことを考えた時、今は確かに充分ではなくても、いつかあなたのことをすっかり忘れて他の人の事をあなた以上に好きになれば、また輝きを取り戻せるんじゃないかって。それまで私は待てばいいんじゃないかって。何もあなたに拘らなくても出会いはいくらでもあるって」
 そうはっきり言われ抄介は言葉がなかった。

 確かにそうだ。自分じゃなくても他の出会いがあれば自分のことは忘れるだろう。
 思い出しても、そんなこともあったなと思い出となって終わる。
(別に俺に拘らなくても・・・)
 その言葉が抄介の胸の中に深く刻まれ、少しずつ気落ちしていくのがわかった。
 抄介の反応を見ながら桜川は言った。
「だからこれ以上、玲の近くには来ないで欲しい。何度か撮影現場であなたの姿を目にしたから今日、敢えて話しかけたのよ」
「・・・だったら早く言って下さい。もう二度と近寄りませんから」
 抄介はそう言って桜川を睨んだ。
「そうね。早く言うべきだったわね。あなたも他の人と幸せになって。玲とは生きる世界が違う。それがお互いの為なのよ」
 そう言い抄介の下を去って行った。
 抄介はグッと拳を握り締め、足元を見つめることしかできなかった。


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