潜魔窟物語

STEEL-npl

文字の大きさ
上 下
16 / 30
第二章『いざ潜魔窟へ』

第十五話『強敵との戦い』

しおりを挟む
一夜明け、ナシャ達3人は野営地を撤去し、潜魔窟の探索を再開した。

この日も順調に探索を進め、数時間後には特に危険なこともなく6フロア目の探索を終えることができた。

しかし、7フロア目に入った途端、ナシャは周囲に漂う異様な雰囲気を察知した。

フロアは3人横並びでも問題ないほどの幅の通路が奥へと続く一本道で、一見して何の変哲もないが、空気が澱み、何者かの唸り声が奥からかすかに聞こえていた。

「ウル殿……」
先導するウルに声をかける。

「おそらく強い敵がいる」
声をかけられた理由を察しているウルが、緊張感を含んだ声でナシャの求める答えを告げた。


「わ、私はど、ど、どうしたらいいですか?」
今までにない緊張感に飲まれ、恐怖で顔色を悪くしているハーシマ。

「敵がどんなのかわからぬので、敵が現れたら、ひとまずハーシマ殿は私を補助する魔法をお願いする。あとはウル殿とハーシマ殿の守りを固める魔法を」
未知の敵に対して、ナシャはまずは負けないような準備をすることを選択し、ハーシマはコクコクと頷いた。

罠に注意を払いつつ一歩一歩進み、薄暗がりの奥に何者かが見えるようになったところで、ナシャが隊列の先頭に立った。

ハーシマがナシャに活力上昇の魔法を唱えたところで、奥にいた敵が雄叫びを上げながらナシャ達の元へ一気に駆けてきた。

敵はラエブのような大型の肉食獣の顔と2ケーブ(1ケーブ=1.8メートル)に迫ろうかという巨人の身体をしていた。
獣人イントアという種の怪物だ。

恐ろしいほど発達した両腕で巨大な斧を持っている。
その一撃を食らえば、何人であってもひとたまりもないことは容易に想像できた。


ナシャは、チラリと後ろを確認し、イントアの目の前に躍り出た。

イントアは、ナシャが自分を侮って近付いてきたと感じ、怒りと共に斧を大きく振りかぶり、ナシャの頭上へと振り下ろした。

当然、ナシャはその場に立ったままなはずもなく、ヒラリと避ける。
次の攻撃も回避する。
ハーシマの魔法のおかげで、身体が軽く動くような感覚があった。

ナシャがイントアを牽制している間にハーシマは、ウルと自身に魔法を唱える。

2人を薄幕の魔法の防具が身を包んだのを確認したナシャは、イントアの顔面めがけてメイスを振るった。

イントアは器用に巨躯を捻りナシャの攻撃を避けると、素手でナシャの腹を殴った。
鎧越しにかなりの衝撃が伝わり、ナシャは一瞬息が止まりそうになったが、なんとか耐え、1度距離をとった。

イントアは、上半身を非常に発達した筋肉で覆われているが、下半身は幾分頼りない。
ナシャにはそう思えた。

ナシャは短く高い口笛を吹くと、再びイントアの顔面にメイスを振るった。
イントアも再びナシャの腹を殴ろうとしたが、ナシャはメイスを振るった勢いをそのままに身体を大きくねじり、腹への一撃の衝撃を逃した。

ナシャを上手く殴ることができずたたらを踏んだイントアは、次の瞬間、顔めがけて飛んできた火球に顔を焼かれた。

顔面を狙ったナシャの身体を死角にして、ハーシマが上手く魔法を当てたのだ。

突然の痛みにイントアは悶えた。

その隙にナシャのメイスがイントアの膝を砕いた。

立てなくなり、目を焼かれて何も見えなくなったイントアは、なおも必死に斧を振るいナシャ達への攻撃を試みるが、後ろに回り込んだウルに首筋に短剣を突き立てられたことで、ビクンッと大きく身体を震わせて絶命した。


「だ、大丈夫ですか!?」
ナシャに駆け寄り、回復の魔法を唱えながら、ハーシマは心配そうにナシャを見た。

「問題ない、ありがとう」
かなりの衝撃ではあったものの、ナシャの骨にはダメージがなく、ハーシマの活力上昇の魔法のおかげもあり、ナシャはほぼ無傷であった。

「あいつはイントアってバケモンだ。なかなか強いんだが、背後に弱点が多いから、にいちゃんたちが正面から攻撃してくれて助かったぜ」
トドメを刺したウルが、イントアの落とした宝箱を持ってきた。

実のところ、ウルにとっては大振りな攻撃が多く背後に回り込みやすいイントアは恐れる敵ではなかったが、それでもナシャとハーシマの連携には目を見張るものを感じていた。


ウルにより罠が解除され、開けるように促されたナシャは「さて、剣は出てくれるか……」と言いながら宝箱を意気揚々と開けたが、中にあったのは疲労回復を抑える女性用の首飾りであり、ナシャはガクッと肩を落とした。

もちろん、お宝はハーシマのものとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...