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第二章『いざ潜魔窟へ』
第十五話『強敵との戦い』
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一夜明け、ナシャ達3人は野営地を撤去し、潜魔窟の探索を再開した。
この日も順調に探索を進め、数時間後には特に危険なこともなく6フロア目の探索を終えることができた。
しかし、7フロア目に入った途端、ナシャは周囲に漂う異様な雰囲気を察知した。
フロアは3人横並びでも問題ないほどの幅の通路が奥へと続く一本道で、一見して何の変哲もないが、空気が澱み、何者かの唸り声が奥からかすかに聞こえていた。
「ウル殿……」
先導するウルに声をかける。
「おそらく強い敵がいる」
声をかけられた理由を察しているウルが、緊張感を含んだ声でナシャの求める答えを告げた。
「わ、私はど、ど、どうしたらいいですか?」
今までにない緊張感に飲まれ、恐怖で顔色を悪くしているハーシマ。
「敵がどんなのかわからぬので、敵が現れたら、ひとまずハーシマ殿は私を補助する魔法をお願いする。あとはウル殿とハーシマ殿の守りを固める魔法を」
未知の敵に対して、ナシャはまずは負けないような準備をすることを選択し、ハーシマはコクコクと頷いた。
罠に注意を払いつつ一歩一歩進み、薄暗がりの奥に何者かが見えるようになったところで、ナシャが隊列の先頭に立った。
ハーシマがナシャに活力上昇の魔法を唱えたところで、奥にいた敵が雄叫びを上げながらナシャ達の元へ一気に駆けてきた。
敵はラエブのような大型の肉食獣の顔と2ケーブ(1ケーブ=1.8メートル)に迫ろうかという巨人の身体をしていた。
獣人イントアという種の怪物だ。
恐ろしいほど発達した両腕で巨大な斧を持っている。
その一撃を食らえば、何人であってもひとたまりもないことは容易に想像できた。
ナシャは、チラリと後ろを確認し、イントアの目の前に躍り出た。
イントアは、ナシャが自分を侮って近付いてきたと感じ、怒りと共に斧を大きく振りかぶり、ナシャの頭上へと振り下ろした。
当然、ナシャはその場に立ったままなはずもなく、ヒラリと避ける。
次の攻撃も回避する。
ハーシマの魔法のおかげで、身体が軽く動くような感覚があった。
ナシャがイントアを牽制している間にハーシマは、ウルと自身に魔法を唱える。
2人を薄幕の魔法の防具が身を包んだのを確認したナシャは、イントアの顔面めがけてメイスを振るった。
イントアは器用に巨躯を捻りナシャの攻撃を避けると、素手でナシャの腹を殴った。
鎧越しにかなりの衝撃が伝わり、ナシャは一瞬息が止まりそうになったが、なんとか耐え、1度距離をとった。
イントアは、上半身を非常に発達した筋肉で覆われているが、下半身は幾分頼りない。
ナシャにはそう思えた。
ナシャは短く高い口笛を吹くと、再びイントアの顔面にメイスを振るった。
イントアも再びナシャの腹を殴ろうとしたが、ナシャはメイスを振るった勢いをそのままに身体を大きくねじり、腹への一撃の衝撃を逃した。
ナシャを上手く殴ることができずたたらを踏んだイントアは、次の瞬間、顔めがけて飛んできた火球に顔を焼かれた。
顔面を狙ったナシャの身体を死角にして、ハーシマが上手く魔法を当てたのだ。
突然の痛みにイントアは悶えた。
その隙にナシャのメイスがイントアの膝を砕いた。
立てなくなり、目を焼かれて何も見えなくなったイントアは、なおも必死に斧を振るいナシャ達への攻撃を試みるが、後ろに回り込んだウルに首筋に短剣を突き立てられたことで、ビクンッと大きく身体を震わせて絶命した。
「だ、大丈夫ですか!?」
ナシャに駆け寄り、回復の魔法を唱えながら、ハーシマは心配そうにナシャを見た。
「問題ない、ありがとう」
かなりの衝撃ではあったものの、ナシャの骨にはダメージがなく、ハーシマの活力上昇の魔法のおかげもあり、ナシャはほぼ無傷であった。
「あいつはイントアってバケモンだ。なかなか強いんだが、背後に弱点が多いから、にいちゃんたちが正面から攻撃してくれて助かったぜ」
トドメを刺したウルが、イントアの落とした宝箱を持ってきた。
実のところ、ウルにとっては大振りな攻撃が多く背後に回り込みやすいイントアは恐れる敵ではなかったが、それでもナシャとハーシマの連携には目を見張るものを感じていた。
ウルにより罠が解除され、開けるように促されたナシャは「さて、剣は出てくれるか……」と言いながら宝箱を意気揚々と開けたが、中にあったのは疲労回復を抑える女性用の首飾りであり、ナシャはガクッと肩を落とした。
もちろん、お宝はハーシマのものとなった。
この日も順調に探索を進め、数時間後には特に危険なこともなく6フロア目の探索を終えることができた。
しかし、7フロア目に入った途端、ナシャは周囲に漂う異様な雰囲気を察知した。
フロアは3人横並びでも問題ないほどの幅の通路が奥へと続く一本道で、一見して何の変哲もないが、空気が澱み、何者かの唸り声が奥からかすかに聞こえていた。
「ウル殿……」
先導するウルに声をかける。
「おそらく強い敵がいる」
声をかけられた理由を察しているウルが、緊張感を含んだ声でナシャの求める答えを告げた。
「わ、私はど、ど、どうしたらいいですか?」
今までにない緊張感に飲まれ、恐怖で顔色を悪くしているハーシマ。
「敵がどんなのかわからぬので、敵が現れたら、ひとまずハーシマ殿は私を補助する魔法をお願いする。あとはウル殿とハーシマ殿の守りを固める魔法を」
未知の敵に対して、ナシャはまずは負けないような準備をすることを選択し、ハーシマはコクコクと頷いた。
罠に注意を払いつつ一歩一歩進み、薄暗がりの奥に何者かが見えるようになったところで、ナシャが隊列の先頭に立った。
ハーシマがナシャに活力上昇の魔法を唱えたところで、奥にいた敵が雄叫びを上げながらナシャ達の元へ一気に駆けてきた。
敵はラエブのような大型の肉食獣の顔と2ケーブ(1ケーブ=1.8メートル)に迫ろうかという巨人の身体をしていた。
獣人イントアという種の怪物だ。
恐ろしいほど発達した両腕で巨大な斧を持っている。
その一撃を食らえば、何人であってもひとたまりもないことは容易に想像できた。
ナシャは、チラリと後ろを確認し、イントアの目の前に躍り出た。
イントアは、ナシャが自分を侮って近付いてきたと感じ、怒りと共に斧を大きく振りかぶり、ナシャの頭上へと振り下ろした。
当然、ナシャはその場に立ったままなはずもなく、ヒラリと避ける。
次の攻撃も回避する。
ハーシマの魔法のおかげで、身体が軽く動くような感覚があった。
ナシャがイントアを牽制している間にハーシマは、ウルと自身に魔法を唱える。
2人を薄幕の魔法の防具が身を包んだのを確認したナシャは、イントアの顔面めがけてメイスを振るった。
イントアは器用に巨躯を捻りナシャの攻撃を避けると、素手でナシャの腹を殴った。
鎧越しにかなりの衝撃が伝わり、ナシャは一瞬息が止まりそうになったが、なんとか耐え、1度距離をとった。
イントアは、上半身を非常に発達した筋肉で覆われているが、下半身は幾分頼りない。
ナシャにはそう思えた。
ナシャは短く高い口笛を吹くと、再びイントアの顔面にメイスを振るった。
イントアも再びナシャの腹を殴ろうとしたが、ナシャはメイスを振るった勢いをそのままに身体を大きくねじり、腹への一撃の衝撃を逃した。
ナシャを上手く殴ることができずたたらを踏んだイントアは、次の瞬間、顔めがけて飛んできた火球に顔を焼かれた。
顔面を狙ったナシャの身体を死角にして、ハーシマが上手く魔法を当てたのだ。
突然の痛みにイントアは悶えた。
その隙にナシャのメイスがイントアの膝を砕いた。
立てなくなり、目を焼かれて何も見えなくなったイントアは、なおも必死に斧を振るいナシャ達への攻撃を試みるが、後ろに回り込んだウルに首筋に短剣を突き立てられたことで、ビクンッと大きく身体を震わせて絶命した。
「だ、大丈夫ですか!?」
ナシャに駆け寄り、回復の魔法を唱えながら、ハーシマは心配そうにナシャを見た。
「問題ない、ありがとう」
かなりの衝撃ではあったものの、ナシャの骨にはダメージがなく、ハーシマの活力上昇の魔法のおかげもあり、ナシャはほぼ無傷であった。
「あいつはイントアってバケモンだ。なかなか強いんだが、背後に弱点が多いから、にいちゃんたちが正面から攻撃してくれて助かったぜ」
トドメを刺したウルが、イントアの落とした宝箱を持ってきた。
実のところ、ウルにとっては大振りな攻撃が多く背後に回り込みやすいイントアは恐れる敵ではなかったが、それでもナシャとハーシマの連携には目を見張るものを感じていた。
ウルにより罠が解除され、開けるように促されたナシャは「さて、剣は出てくれるか……」と言いながら宝箱を意気揚々と開けたが、中にあったのは疲労回復を抑える女性用の首飾りであり、ナシャはガクッと肩を落とした。
もちろん、お宝はハーシマのものとなった。
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