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一章 新入生歓迎会
トトカルチョ
しおりを挟むリサイア学園新聞部の部室はさながらイベント当日のような賑わいを見せていた。
大勢の生徒が列をなして向かっている先には新一年生の名前がずらっと並んだ大きな張り紙が貼ってある。
「いつものことながら大賑わいですね、ここは」
「あれ? シアン様じゃないですか!」
シアンが部屋の前を通り過ぎようとした時、大声で名前を呼ばれ、列に並んでいた生徒が一斉にシアンを見て騒ぎ始めた。
その人混みの中から現れたのはそばかすが特徴的な小柄な生徒。この新聞部の副部長を務めるフレックである。
「見廻りですか? ご苦労様です! どうですかシアン様もトトカルチョ参加しません?」
「風紀委員は賭け事禁止ですよ」
「あれ? でもコウさん、さっき大穴に賭けてましたけど?」
「まったく、あの子は……」
「シアン様もかたい事言わないで、一口どうです?」
新入生歓迎会で毎年行われている新聞部主催のトトカルチョ。これは、新入生の中で誰が逃げ切れるかを予想するものだ。
賭け金は食券一枚からで、現金を使ってではないところに狡賢さが見え隠れしている。こっそり教師まで参加しているらしい新聞部の一大イベントでもある。
立場上、あまり大声では言えないがシアンとてこのトトカルチョに興味が無いわけではない。シアンは渋々という顔をつくってフレックの差し出すメンバー表を見た。
「一番人気はA組のアレン君ですか」
「彼が契約している精霊は、あのプライドが高くて気難しいと言われているA級精霊イ―ヴルですからね!S組昇格間違いなしと言われている生徒ですし、賭けても損はないと思いますよ」
「転校生も負けず劣らずの人気っぷりですね」
「そりゃそうでしょ。彼の場合、生徒会のレイ様達が注目なさってますからね。何より、光属性ですし」
光属性の転校生、ライトは学校では知らぬ者がいないほどの有名人になっていた。
最近では生徒会役員以外でも恋愛絡みで付き纏われて苦労しているようだ。おかげで風紀委員達は彼に近寄る事が出来なくて魔の森での出来事を未だに聞けずにいる。
「二年生なのにレイ様に目をつけられたせいで逃げるほうにまわされちゃったんでしょ? 風紀で何とかならなかったんですか?」
「会長の強引さは知っているでしょう? それに、元々行事の進行は生徒会の仕事です。風紀がいくら抗議した所で聞く耳持ちませんよ」
「お疲れさまです……で、誰か気になる生徒でもいました?」
「B組のパーシル。彼に興味があります」
「えー? 大穴とは言いませんがあまり目立つ子じゃないですよ。何で彼なんです?」
「魔剣使いなんでしょ? ここに書いてあります」
「そりゃそうですが、A組のエディの方が人気高いですぜ?」
「彼の太刀捌きは以前、見た事があります。名門の出ということで期待してたんですが、あれは駄目ですね。実戦なら死んでます。何より、彼には剣に対する真摯さがまだ見られない」
「はぁ……」
「ですから、ここはまだ見ぬ魔剣使いに賭けようかと」
「相変わらずシアン様は魔剣好きですね。なら他の魔剣使いもチェックします? 一応、魔法使いの種類ごとに表作ったんで」
「いつもながら新聞部は仕事がはやいですね」
「ありがとうございます! でも、一か月しかなかったんでそんな詳しい情報はのってないんですけどねー」
シアンはフレックに渡されたリストをパラパラとめくる。様々な魔剣使いの中で一人、気になる生徒がいた。
「アルトリウス……?」
「え? そんな生徒居ましたっけ……って、それE組じゃないですか。ったく、DとEは調べる必要ないって言ったのに……」
「この生徒も魔剣使いなんですか?」
「らしいですね。でも、落ちこぼれのE組なんてチェックしても無駄ですよ」
「E組、ですか……」
「何か気になる事でも?」
「いえ……別に」
ただの偶然だろう。シアンはそう思う事にした。
「B組のグレイスという双剣使いも気になりますが、ここはやはり最初に見たパーシル君一点狙いにします。5口で」
「まいどあり!」
シアンがアルトリウスという名前に反応したのには理由がある。以前、父親から聞いた事があったのだ。
この国の第三王子アーサーが城下町にお忍びで遊びに行く時使っていた偽名がある。
その名前は『アルトリウス』。英雄王と呼ばれる第三代国王アルトリウス・トリスタンの名である。
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