勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
上 下
56 / 66

第56話 プロポーズ

しおりを挟む
ジョパン城前に着くと大勢の人がジョパン国王を祝うために集まっていた。
お城のバルコニーから手を振るジョパン国王。
そしてその両隣にはジュエル王女とプルセラ王女が立ち、二人ともお城の前に集まっている民衆に向かって手を振っている。

とその時だった。

「プルセラ王女っ!」

カルツェッリが民衆の中から抜け出した。
手をプルセラ王女に向け叫ぶ。

「プルセラ王女! 僕は王族ではありません、しかしあなたのことを愛する気持ちなら誰にも負けません!」
言うなりカルツェッリは地面にひざまずきポケットから高級そうな小箱を取り出してみせた。
それを開けると中にはきれいに輝く銀色の指輪が。

「プルセラ王女! どうか僕と結婚してくださいっ!」

静まり返る会場。
ジョパン国王とジュエル王女を含めその場にいた全員がプルセラ王女を見る。

当のプルセラ王女はというと顔を真っ赤にしてただうろたえていた。

「ど、どういうことじゃプルセラ。け、結婚とは一体なんじゃっ」
ハッと我に返ったのかジョパン国王が父親の顔を見せる。
「おい、カルツェッリよ! お主まさかプルセラと付き合うとるのではあるまいなっ!」
「いいえ、ジョパン国王様! しかし娘さんを愛する気持ちは本物です! どうか娘さんを僕にくださいっ!」
「「「おおーっ!!」」」

その瞬間会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

「よく言ったぞー!」
「兄ちゃん頑張れー!」
「国王認めてやってー!」

集まっている人たちが口々に声を上げる。

「ぐぅっ……」
ジョパン国王は渋い顔になる。
そして、
「わ、わかった……わかったから皆の者静かに!」
会場を落ち着かせるとプルセラ王女に向き直った。

「プルセラよ、お主あやつのことが好きなのか?」
「……」
無言ながらもこくんとうなずくプルセラ王女。

「……そうか。ならばわしはもう何も言わん。お主たちの好きに――」
「ちょっと待ったー!!」
ジョパン国王の言葉を遮って大声が会場中に響き渡った。
……というかその声の主は何を隠そうこの俺だ。
俺も民衆の中から抜け出てカルツェッリの横に立つ。

目立つのが苦手な俺としては大声を出すのにも勇気がいった。
だが今しかこの結婚を止めるチャンスはないと思い意を決して叫んだのだった。

「……スタンス!? な、何やってるんだお前はっ!」
「スタンス様?」
プルセラ王女は怒鳴り声を上げ、ジュエル王女は目をぱちくりさせている。
まあ予想通りの反応だな。

「お主!? お主は大魔法導士のクロードか!? 何をしておるクロード、ちょっと待ったとはなんじゃ!?」
ジョパン国王は俺のことを覚えていたようだ。
それもそうか、大魔法導士の称号をジョパン国王から授与されたのは後にも先にも俺一人だけだからな。

「ジョパン国王、こいつに一言言いたいことがあります! 黙ってみていてください!」
「な、なんじゃと!?」

俺は周りを無視してカルツェッリに顔を向けた。
「カルツェッリ、プルセラ王女と結婚したいなら俺と勝負しろ。勝ったら好きにすればいい、ただ負けたら二度とプルセラ王女に近付くな」
「おい、あいつ勇者のパーティーをクビになった奴だぜっ」
「なんだてめぇは!」
「クロード邪魔すんなっ!」
「邪魔者は引っ込んでろ!」
後ろから罵声が飛んでくる。

「スタンス、何を言ってるんだ! やめろバカっ!」
プルセラ王女も怒鳴っている。
あーやだやだ、これじゃまるっきり俺が悪者じゃないか。

……でも今さら後には引けない。

怒声が鳴りやまない中、
「どうなんだ? カルツェッリ」
「くっ……大魔法導士だと……お前なんで僕の邪魔をするんだ?」
「お前の企みを聞いてしまったからな。仕方なくだ」
「オ、オレの……話を聞いていたのか貴様」
口調が荒くなる。

「そっちの方が合ってるぞお前」
「はっ。ひゃははっ、だからなんだというんだ? よくよく考えればこの会場でお前の言葉を信じる奴がいるか? いないだろう」
開き直るカルツェッリ。
確かにこの雰囲気では俺の言い分は聞いてもらえそうにない。

まいったな、焦るあまり方法を誤ったか。

だがキャラにないことをするんじゃなかったと俺が反省し始めた時、その音声は流れた。

「お前、どうやって落としたんだよ?」
「これで将来安泰だな」
「王女なんて世間知らずだから簡単だぜ」
「プルセラは初めて会った時からオレにメロメロだからな、もう王家を乗っ取るのも時間の問題だ。ひゃははっ」
「でもよ、プルセラ王女はともかくジュエル王女はどうすんだよ」
「なーに、ジュエルは天然の箱入り娘だからどうにでもなるさ」
「今日の式典でサプライズプロポーズが成功すればオレは晴れて王族の仲間入りだ。そうなったらお前ら出世させてやるぜ」
「おおー、サンキューカルツェッリ!」
「期待してるぜ、カルツェッリ!」
「おい、あんまり大きな声出すなっ。誰かに聞かれたらどうすんだバカがっ」

……。

「お、おい今の声ってそこの兄ちゃんの声だったよな……?」
「ああ、カルツェッリって言ってたぜ」
「どういうことだ?」
「王家を乗っ取るとかなんとか……」

会場の雰囲気ががらりと変わった。
疑惑の視線がカルツェッリに向く。

「き、貴様……」
「え、いや今の音声を流したのは俺じゃないぞ」
本当に知らない。
そんないいものがあるならとっくに使っていた。

と視界の端にアイリーンが見えた。
アイリーンは俺と目が合うとにへら~と笑った。

もしかしてあいつか?
どうやったのかわからないがもしかしなくてもあいつだろうな。あいつしかいない。
……あなどれない奴。

「カルツェッリよ、今のはどういうことじゃ? お主わしの娘を利用しておったのか!」
「……カルツェッリ……」
ジョパン国王とプルセラ王女の視線を受け、

「き、貴様のせいですべて台無しだ! うわぁーっ!」

カルツェッリが拳を振り上げ飛び掛かってきた。
だが、
「エアロショット」
俺が放った空気の塊にカルツェッリが吹っ飛ばされる。

魔法使いなら誰でも使えるような基礎魔法をかなり手加減して撃ったのだがカルツェッリは目を回して気絶した。

そして次の瞬間――

「「「おおおーーーっ!!!」」」

今日一番の歓声がジョパン国王ではなく俺に注がれたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...