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第51話 スライムに起こされて
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空気が薄い。微妙に顔の辺りが重い。
何かが俺の口の周りを塞いでいるような……。
「ぅんん……」
俺は息苦しさから目を覚ました。
すると、
『スタンスおはようっ』
俺の顔の上にスライムがちょこんと乗っていた。
俺はスライムを持ち上げ、
「……お前何してんだ? こんなとこで」
息苦しさから解放された口を動かす。
『ジュエルに頼まれてスタンスを起こしに来たんだよ』
『へへっ』と笑うスライム。
「あのなぁ、起こすにしても起こし方ってもんがあるだろ。俺を窒息させる気か」
『だっていくら声をかけても起きなかったんだもん』
それは昨日の疲れが残ってたからだろう。
昨日はゴッサム地区での【紅蓮の牙】討伐の依頼をこなしたからな。
おかげで俺の所持金は金貨二十五枚と銀貨が数枚にまで増えている。
『フローラもジュエルももう起きてるよ。フローラはパン屋さんで働いているから朝は早いんだって』
「知ってるよ」
『ジュエルがね、朝ご飯はみんなで食べた方がおいしいって言ってたよ。だから一緒に食べようスタンス』
「……ああ、わかったから先行っててくれ。俺も着替えてすぐ行くから」
『うん、わかった』
そう言うとスライムはぴょんと床に飛び下りそのままぴょんぴょん跳ねて部屋を出ていった。
「そっか、あいつも一緒に暮らすことになったんだったっけ……」
スライムと一つ屋根の下で暮らすなんて魔王退治の旅をしていた時には考えられなかったことだ。
俺は眠い目をこすりながら洗面所へと向かうと顔を洗った。
着替えを済ますと一階に下りる。
パンを焼くいいにおいが漂ってくる。
「あ、おはようございますスタンスさん。今日はいつもより少し早いですね」
「おはようございます、スタンス様」
『待ってたよスタンス』
部屋に入るとフローラとジュエル王女、それとスライムが出迎えてくれた。
「ああ、そいつに起こされたからな」
俺はスライムに視線をやった。
「わたくしが頼んだのです。やはりお食事はみんな一緒の方がいいですものね」
そう言いながらテーブルにお皿を並べていくジュエル王女。
「さあ、用意が出来ましたからみなさん席についてください」
とフローラが両手にバターとジャムを持ってやってくる。
それを受けてスライムは椅子の上にぴょんと跳び上がった。
俺も椅子に座る。
それぞれ自分のトーストにバターとジャムを塗るとそれを口に運ぶ。
スライムの分はジュエル王女が塗ってあげていた。
フローラがサラダを取り分けながら、
「スタンスさんは今日は何か用事はあるんですか?」
と訊いてくる。
「いや、特にないよ」
昨日ギルドの依頼をこなしたばかりだししばらく休めるだけのお金はある。
「あのう、でしたらスタンス様、今日はお父様が即位されてから三十周年の記念式典がありますので申し訳ありませんがわたくしをジョパン城まで送ってもらえませんか?」
ジュエル王女が俺に顔を向けてきた。
お父様というのは当然ジョパン国王のことだ。
「ああ、別にいいけど」
「ありがとうございます。スタンス様」
「よかったですね、ジュエル王女」
「はい、ありがとうございます。フローラさん」
『ねえジュエル、それぼくもついていってもいい?』
「スライムさんもですか?」
『うん、ぼくジョパン城って一度行ってみたかったんだぁ』
きらきらした目で宙を見上げるスライム。
「わかりました、いいですよ。それでは一緒にまいりましょう」
『わーい、やったー!』
スライムはよほど嬉しかったのかその場で飛び跳ねると一回転してみせた。
何かが俺の口の周りを塞いでいるような……。
「ぅんん……」
俺は息苦しさから目を覚ました。
すると、
『スタンスおはようっ』
俺の顔の上にスライムがちょこんと乗っていた。
俺はスライムを持ち上げ、
「……お前何してんだ? こんなとこで」
息苦しさから解放された口を動かす。
『ジュエルに頼まれてスタンスを起こしに来たんだよ』
『へへっ』と笑うスライム。
「あのなぁ、起こすにしても起こし方ってもんがあるだろ。俺を窒息させる気か」
『だっていくら声をかけても起きなかったんだもん』
それは昨日の疲れが残ってたからだろう。
昨日はゴッサム地区での【紅蓮の牙】討伐の依頼をこなしたからな。
おかげで俺の所持金は金貨二十五枚と銀貨が数枚にまで増えている。
『フローラもジュエルももう起きてるよ。フローラはパン屋さんで働いているから朝は早いんだって』
「知ってるよ」
『ジュエルがね、朝ご飯はみんなで食べた方がおいしいって言ってたよ。だから一緒に食べようスタンス』
「……ああ、わかったから先行っててくれ。俺も着替えてすぐ行くから」
『うん、わかった』
そう言うとスライムはぴょんと床に飛び下りそのままぴょんぴょん跳ねて部屋を出ていった。
「そっか、あいつも一緒に暮らすことになったんだったっけ……」
スライムと一つ屋根の下で暮らすなんて魔王退治の旅をしていた時には考えられなかったことだ。
俺は眠い目をこすりながら洗面所へと向かうと顔を洗った。
着替えを済ますと一階に下りる。
パンを焼くいいにおいが漂ってくる。
「あ、おはようございますスタンスさん。今日はいつもより少し早いですね」
「おはようございます、スタンス様」
『待ってたよスタンス』
部屋に入るとフローラとジュエル王女、それとスライムが出迎えてくれた。
「ああ、そいつに起こされたからな」
俺はスライムに視線をやった。
「わたくしが頼んだのです。やはりお食事はみんな一緒の方がいいですものね」
そう言いながらテーブルにお皿を並べていくジュエル王女。
「さあ、用意が出来ましたからみなさん席についてください」
とフローラが両手にバターとジャムを持ってやってくる。
それを受けてスライムは椅子の上にぴょんと跳び上がった。
俺も椅子に座る。
それぞれ自分のトーストにバターとジャムを塗るとそれを口に運ぶ。
スライムの分はジュエル王女が塗ってあげていた。
フローラがサラダを取り分けながら、
「スタンスさんは今日は何か用事はあるんですか?」
と訊いてくる。
「いや、特にないよ」
昨日ギルドの依頼をこなしたばかりだししばらく休めるだけのお金はある。
「あのう、でしたらスタンス様、今日はお父様が即位されてから三十周年の記念式典がありますので申し訳ありませんがわたくしをジョパン城まで送ってもらえませんか?」
ジュエル王女が俺に顔を向けてきた。
お父様というのは当然ジョパン国王のことだ。
「ああ、別にいいけど」
「ありがとうございます。スタンス様」
「よかったですね、ジュエル王女」
「はい、ありがとうございます。フローラさん」
『ねえジュエル、それぼくもついていってもいい?』
「スライムさんもですか?」
『うん、ぼくジョパン城って一度行ってみたかったんだぁ』
きらきらした目で宙を見上げるスライム。
「わかりました、いいですよ。それでは一緒にまいりましょう」
『わーい、やったー!』
スライムはよほど嬉しかったのかその場で飛び跳ねると一回転してみせた。
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