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第42話 ダンテ
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「クロードよ、久しぶりじゃのう。ほっほっほ。相変わらず気配を消すのが得意な奴じゃ、わしのサーチでもお主をみつけるのに苦労したわい」
老齢の魔法使いダンテは白いあごひげをわしゃわしゃ触りながら言う。
「ダンテ……なんでここにいるんだ?」
「なんじゃ、久しぶりじゃというのに挨拶もなしか」
「スタンス、誰だこのじいさんは?」
プルセラ王女が俺の顔を見てくる。
「こいつは俺の元仲間のダンテだ」
「まあ、ではあなたがスタンス様をパーティーから追放した方の内のお一人なのですね」
ジュエル王女がダンテを見ながら口にした。
「さっきから王女様方がスタンスと呼んでおるのはクロードのことかのう?」
「そうだ。この村ではこいつの名前はスタンスだからな」
「ダンテさんはわたくしたちのことをご存じなのですね」
「ほっほっほ。王女様方の顔くらい覚えておるよ」
とダンテが高らかに笑う。
「ダンテ、質問の答えがまだだぞ」
「ほっほ、そうじゃったな。お主をパーティーから追放してすぐリックは二人の女を仲間に加えたのじゃ。一人は賢者でもう一人は戦士じゃ」
「そうなのか」
やっぱり賢者と戦士を仲間にしたか。
それに二人とも女性というのもリックらしいな。
「じゃあ今は勇者のリックと魔法使いのミネーナとあんた、それと女賢者と女戦士の五人で魔王退治の旅をしてるってわけだな」
「いや、それがちと違うのじゃ。賢者も戦士もこれがなかなかの女狐でのうリックに何を吹き込んだのか知らぬが徐々にわしの居場所がのうなっていってのう、しまいにはお払い箱になってしまったんじゃ」
何かを思い出すように遠い目をするダンテ。
「お払い箱?」
「そうじゃ、つまるところわしもお主と同じく追い出されたわけじゃ」
ダンテがパーティーを追い出された……。
リックが小さい頃からの付き合いだったダンテがか……。
「はっ、じいさんもスタンスを追い出したんだろ、だったら自業自得じゃないか」
とプルセラ王女。
「確かに王女様の言う通りじゃな。こりゃ痛いところを突かれたわい」
「ダンテさんはそのことをわざわざスタンス様にお伝えにいらしたのですか?」
ジュエル王女が訊く。
「それもあるのじゃが……」
そう言うなりダンテは俺に向かって頭を下げた。
「すまんかった。魔王退治を目的としていたお主を追い出すような真似をしてほんに悪かったと思うておる」
「ダンテ……」
しばらく頭を下げていたダンテはゆっくり顔を上げると、
「これだけ言いたかったんじゃ……ではさらばじゃ」
振り返り歩き出そうとする。
「待ってくれ」
「……なんじゃ?」
「ダンテはこれからどうするんだ?」
「わしか? そうじゃなぁ、お主ならともかくわし一人では魔王を倒すことなど到底出来ぬじゃろうし隠居するかのう」
ダンテはこれまでに見せたことのないような優しくそれでいて弱々しい顔を見せた。
「ではな……スタンス」
俺はダンテの小さな背中を見送りながら心の中でまたな、とつぶやくのだった。
老齢の魔法使いダンテは白いあごひげをわしゃわしゃ触りながら言う。
「ダンテ……なんでここにいるんだ?」
「なんじゃ、久しぶりじゃというのに挨拶もなしか」
「スタンス、誰だこのじいさんは?」
プルセラ王女が俺の顔を見てくる。
「こいつは俺の元仲間のダンテだ」
「まあ、ではあなたがスタンス様をパーティーから追放した方の内のお一人なのですね」
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「そうだ。この村ではこいつの名前はスタンスだからな」
「ダンテさんはわたくしたちのことをご存じなのですね」
「ほっほっほ。王女様方の顔くらい覚えておるよ」
とダンテが高らかに笑う。
「ダンテ、質問の答えがまだだぞ」
「ほっほ、そうじゃったな。お主をパーティーから追放してすぐリックは二人の女を仲間に加えたのじゃ。一人は賢者でもう一人は戦士じゃ」
「そうなのか」
やっぱり賢者と戦士を仲間にしたか。
それに二人とも女性というのもリックらしいな。
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「いや、それがちと違うのじゃ。賢者も戦士もこれがなかなかの女狐でのうリックに何を吹き込んだのか知らぬが徐々にわしの居場所がのうなっていってのう、しまいにはお払い箱になってしまったんじゃ」
何かを思い出すように遠い目をするダンテ。
「お払い箱?」
「そうじゃ、つまるところわしもお主と同じく追い出されたわけじゃ」
ダンテがパーティーを追い出された……。
リックが小さい頃からの付き合いだったダンテがか……。
「はっ、じいさんもスタンスを追い出したんだろ、だったら自業自得じゃないか」
とプルセラ王女。
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「ダンテさんはそのことをわざわざスタンス様にお伝えにいらしたのですか?」
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「それもあるのじゃが……」
そう言うなりダンテは俺に向かって頭を下げた。
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「ダンテ……」
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振り返り歩き出そうとする。
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「……なんじゃ?」
「ダンテはこれからどうするんだ?」
「わしか? そうじゃなぁ、お主ならともかくわし一人では魔王を倒すことなど到底出来ぬじゃろうし隠居するかのう」
ダンテはこれまでに見せたことのないような優しくそれでいて弱々しい顔を見せた。
「ではな……スタンス」
俺はダンテの小さな背中を見送りながら心の中でまたな、とつぶやくのだった。
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