勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第41話 予期せぬ再会

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「おっ、これかっこいいな」
ギルドに向かう道中プルセラ王女が声を上げた。
見ていたのはいつぞや倒したミノケンタウロスが持っていたヤリの先端部分だ。
ロッベンの家の玄関前の地面にモニュメントのように突き出ている。

「これ欲しいな。持っていってもいいかな?」
「駄目ですよ。俺がここの家の子どもにあげたんですから」
「なあんだ、だったらもとはお前の物じゃないか。持っていこう」
ミノケンタウロスのヤリを掴もうとする。

「駄目ですって。相手は子どもですよ」
「ちぇっ」
明らかに不機嫌そうな顔になるプルセラ王女。
未だにこの人が王女だなんて信じられない。

「今さらですけど王族の公務とかは大丈夫なんですか?」
「私は仮病で普段から行事には出ていないから大丈夫だ」
プルセラ王女が答える。
あんたには訊いていない。

「わたくしはお父様がしばらく休んでいいとおっしゃってくれたので……ですが大事な公務の際には戻ろうと思います」
「そん時はお前のヘブンズドアで送り迎えしてやれよ」
「ヘブンズドア?」
ジュエル王女が繰り返す。

「スタンスの魔法だよ、姉さん。行ったことがある場所ならワープ出来るんだ。すごいでしょ」
自分の手柄のように胸を張るプルセラ王女。

「そんなすごい魔法も使えるのですねスタンス様は」
「いいだろ? スタンス」
「まあいいですけど」


そしてしばらく歩くとギルドに到着した。

「ここが冒険者ギルドという場所ですか」
ジュエル王女が物珍しそうに言う。

「前来た時も思ったがうちの城の犬小屋より小さいぞ」
「余計なことは言わないでいいです」
俺はプルセラ王女を一瞥するとギルドの中に入った。

「あ、いらっしゃいませスタンスさんっ」
「おはようコロン」
「おはようご……ふぇっ!? プ、プルセラ様、とそちらにおられるのはジュエル様ですかっ!?」
「ああ、いろいろあってジュエル王女は今フローラの家にいるんだ」
「ええぇっ!?」

あわあわ言っているコロンに近付きコロンの手を取ったジュエル王女は優しく両手で包み込むと「ジュエルです。よろしくお願いいたしますね」とささやいた。

「こ、こ、こちらこそ、よ、よろしくお願いいたしますですぅ」
目を回しながら答えるコロン。
大丈夫か?

「それよりコロン、新しい依頼は入ってるか?」
「はぁい?」
「依頼だよ、依頼」
「あ、す、すみません、依頼は入ってないんです。わたしの力不足です~」
コロンはしゅんとなってしまう。
ただでさえ小さい体がますます小さくなる。

「いや、いいんだよ。じゃあ、また来るから」
俺は王女たちとともにギルドをあとにした。

ジュエル王女がいることで生活費の心配はいらなくなったが手元に金貨が一枚もないというのはいささか心もとない。
しばらくしたらまたギルドに顔を出そう。

その時だった。

「クロード! やっと見つけたぞい、こんなところにおったんじゃなクロード」

俺をクロードの名で呼ぶ男の声。

振り向くとそこにいたのは、

「ダンテ……!?」

元勇者パーティーの仲間にして老獪なる魔法使いダンテだった。
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