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第30話 プルセラ王女
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「面接受かったんですか、おめでとうございますっ」
俺は一度家に戻りフローラに報告をした。
「ああ、また明日来てくれってさ」
「よかったですね」
プルセラ王女の世話係のアイリーンさんに朝早く来いと言われているから今日は早く寝たほうがいいな。
「じゃあ今日はご馳走を作りますね」
「おう、ありがとう」
そして翌朝。
俺はフローラを起こさないようにそっと家を出るとヘブンズドアでジョパン城にワープした。
門番に挨拶をして中に入る。
昨日面接をした部屋に着くとドレスを着たプルセラ王女が背を向けて立っていた。
アイリーンさんはいないようだ。
「おはようございます。プルセラ王女」
声をかける。
するとプルセラ王女が振り向いた。
!?
しかし、
「えっ? アイリーンさん!?」
振り返ったドレス姿の女性はプルセラ王女ではなくアイリーンさんだった。
「え、どういう……? なんでアイリーンさんがそんな恰好してるんですか?」
「私がプルセラ王女だからに決まっているだろ」
?
「いや、意味がよくわからないんですけど……あなたはアイリーンさんですよね?」
「バカなのかお前。私はプルセラだと今言ったばかりだぞ」
「じゃあアイリーンさんは?」
「本物のアイリーンは昨日ドレスを着て私の隣に座っていた奴だ」
あの無駄ににこにこしていた方がアイリーンさん?
「なぜそんなややこしいことを?」
「知らん、アイリーンに訊け。護衛役は自分の目で見て決めると言ったらアイリーンがだったら入れ替わろうと言ってきたのだ」
「はあ……」
「とにかく王家の墓に行ってさっさとお参りを済ますぞ。私はなるべく外出を控えているんだからな」
ドレス姿のプルセラ王女。
昨日のスーツ姿がよく似合っていた分ドレス姿は違和感がある。
「あー、そういえばプルセラ王女は体が弱いんでしたっけ?」
「まあな、そういう設定だ」
設定?
「設定ってどういうことですか?」
「王族の行事は面倒だから出たくないと言ったらアイリーンが私をそういう設定にしてしまったのだ。もともとインドア派の私には願ったりかなったりだがな。おかげで毎日城でごろごろ出来る」
凛々しい顔に似合わず駄目な人だ、この王女。
「私はお前に命を預けるんだからな、モンスターが出たら全力で守れよ。自慢じゃないが私は一切戦えないんだからな」
本当に自慢じゃないな。
「王族なら剣術とか棒術とか習ってるんじゃないんですか?」
「私はナイフとフォークより重い物は持たない主義なんだ」
「そんなんでよく今まで生きてこれましたね」
「王女の権限をフルに利用しているからな」
駄目すぎていっそすがすがしい。
「王家の墓は城から北東に三キロほど行ったところにある。出来ることなら歩きたくもないのだが自分の足で行かないといけない決まりらしいから仕方ない。ほら、行くぞ」
そう言うとプルセラ王女は部屋を出ていく。
俺はその後ろをついて歩いた。
「行ってらっしゃいませ! プルセラ様!」
「お気をつけて! プルセラ様!」
門番に見送られお城を出るとプルセラ王女は後ろを振り返り俺の顔をじーっと見てきた。
「……なんですか?」
「なあ、お前。私と会ったことないか?」
「昨日会ったでしょう。もう忘れたんですか」
「違う、ずっと前にだ。お前の顔どこかで見覚えがある気がするんだよなぁ」
目を細めみつめてくるプルセラ王女。
俺は大魔法導士の称号をもらった時にジョパン城に来たことがあるからもしかしたらその時に俺のことを見ていた可能性はあるかもな。
「さ、さあ。よくある顔ですから。記憶違いでしょう」
「そうか? うん、そう言われればそんな気もするな」
納得したのか前を向くプルセラ王女。
単純な人でよかった。
俺は一度家に戻りフローラに報告をした。
「ああ、また明日来てくれってさ」
「よかったですね」
プルセラ王女の世話係のアイリーンさんに朝早く来いと言われているから今日は早く寝たほうがいいな。
「じゃあ今日はご馳走を作りますね」
「おう、ありがとう」
そして翌朝。
俺はフローラを起こさないようにそっと家を出るとヘブンズドアでジョパン城にワープした。
門番に挨拶をして中に入る。
昨日面接をした部屋に着くとドレスを着たプルセラ王女が背を向けて立っていた。
アイリーンさんはいないようだ。
「おはようございます。プルセラ王女」
声をかける。
するとプルセラ王女が振り向いた。
!?
しかし、
「えっ? アイリーンさん!?」
振り返ったドレス姿の女性はプルセラ王女ではなくアイリーンさんだった。
「え、どういう……? なんでアイリーンさんがそんな恰好してるんですか?」
「私がプルセラ王女だからに決まっているだろ」
?
「いや、意味がよくわからないんですけど……あなたはアイリーンさんですよね?」
「バカなのかお前。私はプルセラだと今言ったばかりだぞ」
「じゃあアイリーンさんは?」
「本物のアイリーンは昨日ドレスを着て私の隣に座っていた奴だ」
あの無駄ににこにこしていた方がアイリーンさん?
「なぜそんなややこしいことを?」
「知らん、アイリーンに訊け。護衛役は自分の目で見て決めると言ったらアイリーンがだったら入れ替わろうと言ってきたのだ」
「はあ……」
「とにかく王家の墓に行ってさっさとお参りを済ますぞ。私はなるべく外出を控えているんだからな」
ドレス姿のプルセラ王女。
昨日のスーツ姿がよく似合っていた分ドレス姿は違和感がある。
「あー、そういえばプルセラ王女は体が弱いんでしたっけ?」
「まあな、そういう設定だ」
設定?
「設定ってどういうことですか?」
「王族の行事は面倒だから出たくないと言ったらアイリーンが私をそういう設定にしてしまったのだ。もともとインドア派の私には願ったりかなったりだがな。おかげで毎日城でごろごろ出来る」
凛々しい顔に似合わず駄目な人だ、この王女。
「私はお前に命を預けるんだからな、モンスターが出たら全力で守れよ。自慢じゃないが私は一切戦えないんだからな」
本当に自慢じゃないな。
「王族なら剣術とか棒術とか習ってるんじゃないんですか?」
「私はナイフとフォークより重い物は持たない主義なんだ」
「そんなんでよく今まで生きてこれましたね」
「王女の権限をフルに利用しているからな」
駄目すぎていっそすがすがしい。
「王家の墓は城から北東に三キロほど行ったところにある。出来ることなら歩きたくもないのだが自分の足で行かないといけない決まりらしいから仕方ない。ほら、行くぞ」
そう言うとプルセラ王女は部屋を出ていく。
俺はその後ろをついて歩いた。
「行ってらっしゃいませ! プルセラ様!」
「お気をつけて! プルセラ様!」
門番に見送られお城を出るとプルセラ王女は後ろを振り返り俺の顔をじーっと見てきた。
「……なんですか?」
「なあ、お前。私と会ったことないか?」
「昨日会ったでしょう。もう忘れたんですか」
「違う、ずっと前にだ。お前の顔どこかで見覚えがある気がするんだよなぁ」
目を細めみつめてくるプルセラ王女。
俺は大魔法導士の称号をもらった時にジョパン城に来たことがあるからもしかしたらその時に俺のことを見ていた可能性はあるかもな。
「さ、さあ。よくある顔ですから。記憶違いでしょう」
「そうか? うん、そう言われればそんな気もするな」
納得したのか前を向くプルセラ王女。
単純な人でよかった。
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