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第22話 黒鉄の盾
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久しぶりの休日でまだ寝ているフローラを起こさないように俺は忍び足で階段を下り家をそっとあとにした。
そしてカルネ地区にあるゴッサム城へと向かうためヘブンズドアを使う。
といってもゴッサム城へは行ったことがないのでカルネ地区に移動してそこから歩いて向かうことになるのだが。
大きな扉を通り抜けるとそこはカルネ地区にある小さな町デサント。
リックたちと旅をしていた時に一度だけ立ち寄ったことがあるのでここをワープ地点にしたのだった。
「おんや、あんた今ここにあったおっきな扉から出てきただなぁ。でも扉さ消えちまっただ、どうなっとるんだ……?」
杖をついたおばあさんが俺を見て目を皿のようにしている。
ヤバっ。ヘブンズドアを使うところを見られた。
わざわざ人気のなさそうな公衆トイレの裏にヘブンズドアを出したのによりによって目の前におばあさんがいたなんて。
……まあ別に人に見られたからといってどうなるということでもないけど。
せいぜい勇者パーティーを追放されたクロード・ディスタンスがデサントの町でうろちょろしていたという噂が出回るくらいだ。
「ど、どうも」
「は~ぁ……」
しかしそんな噂が故郷に行き渡ってほしくはないので口をあんぐり開け、呆けているおばあさんの横をうつむき加減で素早く通り過ぎると俺はデサントの町をすぐに出た。
「ここからだとゴッサム城は確か西の方だよな……」
立ち寄ったことはないが耳にしたことはある。
ゴッサム城の衛兵はその強固な守りから黒鉄の盾と呼ばれていると。
今回会いに行くデボラさんの息子のゼットはそんなゴッサム城の衛兵の見習いをしているという。
しかしなぜか最近その仕事を辞めたがっているというので喝を入れてきてほしいということなのだが……。
☆ ☆ ☆
しばらく西に進むとボロボロの恰好をしたガラの悪そうな集団が前からやってきた。
みな一様に腕を押さえていたり足を引きずっていたりしている。どうやら何者かにひどく痛めつけられたらしかった。
「どうかしたんですか?」
「うるせぇ! 殺すぞっ!」
先頭にいたガタイのいい大男に話しかけるも相手にしてもらえない。
俺をキッとにらみつけて通り過ぎていく。
十人くらいが通り過ぎたあと、しんがりにいた怪我をしていない荷物持ちらしき男がそっと俺に近付いてきてこう言った。
「オレら紅蓮の牙っつうここらじゃ結構名の知れた盗賊団なんだぜ。親分が怪我してなかったらお前殺されてたぞ。命拾いしたなお前」
「何があったんですか?」
「オレらゴッサム城のお宝を狙って襲いかかったんだけどよ、入り口で衛兵どもに返り討ちにあったのさ」
男は自慢話でもするかのようにぺらぺらと話し続ける。
「黒鉄の盾の異名は伊達じゃねぇな。親分が手も足も出なかったんだからよお。お前もバカな考えは起こさねぇ方が身のためだぜっ」
助言をすると男は集団に戻っていった。
「バカな考えって……あの男、俺が盗賊にでも見えたのか?」
確かに背はかなり高いし目つきも決して良くはない、魔法使いらしい恰好もしていないから同業者に見られても文句は言えないが。
俺は少し落ち込みながらも懸命に歩いた。
するとお城のてっぺんらしきものが見えてきた。
「おっ、もしかしてあれがゴッサム城かな?」
さらに近付くとお城の全容が明らかになる。
「でっけー……」
俺はお城の前まで行き、お城を見上げながら声に出した。
と、
「なんだ? まだ仲間がいたのか?」
横から男の声とともに複数の足音が聞こえてきた。
「え?」
俺は振り向く。
するとそこにいたのは黒い甲冑を身に纏った五人の衛兵たちだった。
そしてカルネ地区にあるゴッサム城へと向かうためヘブンズドアを使う。
といってもゴッサム城へは行ったことがないのでカルネ地区に移動してそこから歩いて向かうことになるのだが。
大きな扉を通り抜けるとそこはカルネ地区にある小さな町デサント。
リックたちと旅をしていた時に一度だけ立ち寄ったことがあるのでここをワープ地点にしたのだった。
「おんや、あんた今ここにあったおっきな扉から出てきただなぁ。でも扉さ消えちまっただ、どうなっとるんだ……?」
杖をついたおばあさんが俺を見て目を皿のようにしている。
ヤバっ。ヘブンズドアを使うところを見られた。
わざわざ人気のなさそうな公衆トイレの裏にヘブンズドアを出したのによりによって目の前におばあさんがいたなんて。
……まあ別に人に見られたからといってどうなるということでもないけど。
せいぜい勇者パーティーを追放されたクロード・ディスタンスがデサントの町でうろちょろしていたという噂が出回るくらいだ。
「ど、どうも」
「は~ぁ……」
しかしそんな噂が故郷に行き渡ってほしくはないので口をあんぐり開け、呆けているおばあさんの横をうつむき加減で素早く通り過ぎると俺はデサントの町をすぐに出た。
「ここからだとゴッサム城は確か西の方だよな……」
立ち寄ったことはないが耳にしたことはある。
ゴッサム城の衛兵はその強固な守りから黒鉄の盾と呼ばれていると。
今回会いに行くデボラさんの息子のゼットはそんなゴッサム城の衛兵の見習いをしているという。
しかしなぜか最近その仕事を辞めたがっているというので喝を入れてきてほしいということなのだが……。
☆ ☆ ☆
しばらく西に進むとボロボロの恰好をしたガラの悪そうな集団が前からやってきた。
みな一様に腕を押さえていたり足を引きずっていたりしている。どうやら何者かにひどく痛めつけられたらしかった。
「どうかしたんですか?」
「うるせぇ! 殺すぞっ!」
先頭にいたガタイのいい大男に話しかけるも相手にしてもらえない。
俺をキッとにらみつけて通り過ぎていく。
十人くらいが通り過ぎたあと、しんがりにいた怪我をしていない荷物持ちらしき男がそっと俺に近付いてきてこう言った。
「オレら紅蓮の牙っつうここらじゃ結構名の知れた盗賊団なんだぜ。親分が怪我してなかったらお前殺されてたぞ。命拾いしたなお前」
「何があったんですか?」
「オレらゴッサム城のお宝を狙って襲いかかったんだけどよ、入り口で衛兵どもに返り討ちにあったのさ」
男は自慢話でもするかのようにぺらぺらと話し続ける。
「黒鉄の盾の異名は伊達じゃねぇな。親分が手も足も出なかったんだからよお。お前もバカな考えは起こさねぇ方が身のためだぜっ」
助言をすると男は集団に戻っていった。
「バカな考えって……あの男、俺が盗賊にでも見えたのか?」
確かに背はかなり高いし目つきも決して良くはない、魔法使いらしい恰好もしていないから同業者に見られても文句は言えないが。
俺は少し落ち込みながらも懸命に歩いた。
するとお城のてっぺんらしきものが見えてきた。
「おっ、もしかしてあれがゴッサム城かな?」
さらに近付くとお城の全容が明らかになる。
「でっけー……」
俺はお城の前まで行き、お城を見上げながら声に出した。
と、
「なんだ? まだ仲間がいたのか?」
横から男の声とともに複数の足音が聞こえてきた。
「え?」
俺は振り向く。
するとそこにいたのは黒い甲冑を身に纏った五人の衛兵たちだった。
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