上 下
102 / 109

第102話 リフィート

しおりを挟む
「西崎、お前の考えはわかった。でもな、俺はかなり強いぞ。レベルもステータスも文字通りお前とは桁違いだ。デコピン一発でもお前は死ぬぞ。そんな俺とやり合うのか?」

これは自慢などではなく、事実だった。
だからこそ考えをあらためてもらおうとして言ってみたのだが……効果はなかったようで、
「そんなことはわかっていますよ。ここに来るまでに師匠のレベルも一応調べておきましたからね」
西崎は笑顔を崩さない。

「その時がたしかレベル6000くらいだったので、今はレベル6500くらいなんじゃないですか? 当たってます?」
「さあな」
実際は8998だがもちろんそれを言うわけはない。

「そのレベルドレインっていうのは相手の同意がないとレベルを奪えないんだろ。だったら諦めろ、俺は絶対に同意なんかしないんだからな」
「やってみないとわからないですよ、師匠。筒井さんだって初めは似たようなことを言っていましたからね」
と笑顔の西崎。
何を企んでいるのか、表情がまったく読めない。

「師匠はとても強い。それは誰よりもボクが一番よく知っています。でもね、師匠。もし師匠がうんと小さくなってしまったらどうですか?」
「なに?」
「リフィート!」
西崎が突如俺を指差し声を上げた。
すると直後、俺の体がみるみるうちに縮んでいく。

「あはははっ。師匠、今のがボクの縮小呪文ですっ」
「なっ、なんだとっ!?」
と言っている間に俺の背丈は三センチほどに縮んでしまっていた。
西崎が縮小呪文というものを使えることは知っていたが、まさか自分以外の者に対しても使えるとは思っていなかった。

「こ、このっ、もとに戻せっ」
「はい? よく聞こえないですよ。もっと大きな声で喋ってください師匠」
「西崎、俺をもとの大きさに戻せっ!」
俺は言いながら西崎に殴りかかろうとジャンプしたのだが、全然高く跳ぶことが出来ない。

「無理ですってば師匠。その体ではボクに傷一つだってつけることは出来ませんよ。縮小呪文で小さくなるとステータスが激減するんです。前に言いませんでしたっけ?」
楽しそうに西崎が微笑んでいる。

「さてと、ではとりあえず師匠のレベルをボクに分けてもらいましょうか。師匠って今レベルいくつですか?」
「教えるわけないだろっ」
「師匠、強がらない方がいいですよ。その状態はあと一時間続くんですからね」
「なっ!?」
そ、そうだった。
西崎の縮小呪文の効果は一時間だと西崎自身が前に言っていた。

「ほらほらっ」
「くっ、や、やめろっ!」
西崎が俺を踏み潰そうと足を動かしてくる。
俺はそれをなんとかかわす。

「遅い襲い、遅いですよ師匠っ」
「ぐあっ……!」
まるでサッカーボールのように蹴られて吹っ飛んだ。

「くっ……」
西崎は立ち上がろうとする俺を右手で握って自分の目の前まで持ってくる。

「どんなに師匠が強くても、こうなっては手も足も出ませんよね」
「こ、このっ……」

西崎の言う通りだった。
西崎自身のレベルも相当高いのだろうが、それ以上に俺が弱くなりすぎているのだった。
これではリリースを使ったところでたかが知れている。
1を2倍にしても2になるだけだ。
何度もリリースを重ね掛けすればなんとかなるかもしれないが、それを西崎が見過ごしてくれるとは到底思えない。

そ、それでも――
「レ、レベルだけは、やらないからなっ……お、お前なんかに、や、やってたまるかっ……!」
現状維持を目的としている西崎に俺のレベルを分けてしまったら、この【魔物島】から誰も抜け出せなくなってしまう。
それだけはなんとしてでも避けなくては。

「はぁー、師匠はそう言うと思いましたよ。それでこそボクの尊敬する師匠ですからね」
俺の決意を目の当たりにしても西崎は落ち着いていた。
それもそのはず、西崎は俺の弱点を見抜いていたのだった。

「でも今はボクの言うことを聞いてほしいので、メタムンさんに協力してもらいましょうか」

そう言った西崎は一足飛びでメタムンの背後に移動すると、メタムンを思いきり踏みつけた。
『うぎゃっ……!』
そしてレベルドレインをメタムンの頭部に突きつけて、
「師匠、ボクにレベルをください。さもないとメタムンさんを刺し殺します」
怖いほどの満面の笑みでもって俺にささやくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

睡眠スキルは最強です! 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます!〜

八代奏多
ファンタジー
不眠症に悩んでいた伊藤晴人はいつものように「寝たい」と思っていた。 すると突然、視界にこんな文字が浮かんだ。 〈スキル【睡眠】を習得しました〉 気付いた時にはもう遅く、そのまま眠りについてしまう。 翌朝、大寝坊した彼を待っていたのはこんなものだった。 モンスターが徘徊し、スキルやステータスが存在する日本。 しかし持っているのは睡眠という自分を眠らせるスキルと頼りない包丁だけ。 だが、その睡眠スキルはとんでもなく強力なもので──

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...