86 / 109
第86話 処遇
しおりを挟む
「僕を殺すかい?」
手足を縛りあげられた米村が涼しい顔で俺を見上げる。
そんな米村は無視して俺はメタムンのもとへと歩を進めた。
「メタムン、大丈夫か?」
『問題ないってば。心配性だな、善は』
「そっか」
俺はメタムンから視線を上げ正面に立つ女子学生に声をかける。
「メタムンを助けてくれて本当にありがとう。一時はどうなることかと思ったよ」
「い、い、いえっ……全然気にしないでくださいっ……そ、それより、姉のことを頼んでいたのに、勝手に行動しちゃってて、す、すみませんでしたっ……」
と北原すみれは相変わらずのようだ。
そう。先ほどメタムンを助けてくれたのは北原すみれだったのだ。
認識阻害呪文で姿を消して米村からメタムンを救い出してくれたのだった。
その呪文も今は効果が切れている。
北原すみれは姉である北原奏美が米村によって殺されたことはまだ知らないのだろう。
一刻も早く教えるべきなのだろうが、今は米村の処遇をどうするかが問題だ。
俺はメタムンと北原すみれを置いて、米村のもとに戻る。
「僕を殺すかい?」
米村が再度問うてきた。
「そうしてやりたい気持ちはなくはない」
「ふふふ、そうだろうね。きみのおそらく唯一の女性友達である北原さんを殺されてしまったんだからね、そう思うのも当然だよ」
そう言った米村の声が北原すみれには届いていなかったようで俺はホッと胸をなでおろす。
「でもきみには無理だよね。だって僕を殺したらそれこそきみが殺人犯になってしまうんだからね」
そうなのだ。
モンスターは嫌というほど殺してきたが、それはあくまで相手がモンスターだったからでしかない。
人間を殺したら当然殺人罪で罰せられる。ここが日本じゃないとかそんなことは関係ない。
いや、そもそもこの【魔物島】が仮に殺人罪などが存在していない惑星にあるとしてもだ。
俺は人を殺すことなど到底出来ない。
とはいえ自由にするわけにもいかない。
この米村は死神のデスサイスによって、百人以上の人の魂を奪ってしまったのだから。
「僕を殺す気がないのなら解放してくれないかな? それともずっとこのままかい? このまま放っておかれて僕がモンスターに殺されたり、お腹が空いて餓死したらそれは善くん、きみの責任だよ」
「……」
「僕は心を入れ替えるよ。もうひどいことはしない。天に誓う。だから見逃してくれないかな?」
米村は俺の心を見透かしたかのように語りかけてくる。
こう言えば俺の心が揺らぐだろうとわかっていて口にしている。
「仕方ないか……」
俺は気が進まないがある方法にすべてを託すことにした。
「ん? 見逃す気になったかな?」
「いや……見逃したりはしないよ。でも殺しもしない……というか正直どうなるか俺もわからないんだ」
「うん? 何を言っているんだい? 善くん」
俺は右手を伸ばすと、
「ダークホール!」
と唱えた。
刹那、ブラックホールのような漆黒の球体が現れる。
そして、
「うおっ? な、なんだいこれはっ!?」
近くにあるものを吸い込み始めた。
米村があっという間にそれに飲み込まれていく。
「ぐ、ぐあぁっ、ちょ、ちょっと待ってくれ、た、助け――」
最後の最後には助けを請うていたようだが、時すでに遅く、米村は俺にすらわからないどこかへ消えていってしまった。
手足を縛りあげられた米村が涼しい顔で俺を見上げる。
そんな米村は無視して俺はメタムンのもとへと歩を進めた。
「メタムン、大丈夫か?」
『問題ないってば。心配性だな、善は』
「そっか」
俺はメタムンから視線を上げ正面に立つ女子学生に声をかける。
「メタムンを助けてくれて本当にありがとう。一時はどうなることかと思ったよ」
「い、い、いえっ……全然気にしないでくださいっ……そ、それより、姉のことを頼んでいたのに、勝手に行動しちゃってて、す、すみませんでしたっ……」
と北原すみれは相変わらずのようだ。
そう。先ほどメタムンを助けてくれたのは北原すみれだったのだ。
認識阻害呪文で姿を消して米村からメタムンを救い出してくれたのだった。
その呪文も今は効果が切れている。
北原すみれは姉である北原奏美が米村によって殺されたことはまだ知らないのだろう。
一刻も早く教えるべきなのだろうが、今は米村の処遇をどうするかが問題だ。
俺はメタムンと北原すみれを置いて、米村のもとに戻る。
「僕を殺すかい?」
米村が再度問うてきた。
「そうしてやりたい気持ちはなくはない」
「ふふふ、そうだろうね。きみのおそらく唯一の女性友達である北原さんを殺されてしまったんだからね、そう思うのも当然だよ」
そう言った米村の声が北原すみれには届いていなかったようで俺はホッと胸をなでおろす。
「でもきみには無理だよね。だって僕を殺したらそれこそきみが殺人犯になってしまうんだからね」
そうなのだ。
モンスターは嫌というほど殺してきたが、それはあくまで相手がモンスターだったからでしかない。
人間を殺したら当然殺人罪で罰せられる。ここが日本じゃないとかそんなことは関係ない。
いや、そもそもこの【魔物島】が仮に殺人罪などが存在していない惑星にあるとしてもだ。
俺は人を殺すことなど到底出来ない。
とはいえ自由にするわけにもいかない。
この米村は死神のデスサイスによって、百人以上の人の魂を奪ってしまったのだから。
「僕を殺す気がないのなら解放してくれないかな? それともずっとこのままかい? このまま放っておかれて僕がモンスターに殺されたり、お腹が空いて餓死したらそれは善くん、きみの責任だよ」
「……」
「僕は心を入れ替えるよ。もうひどいことはしない。天に誓う。だから見逃してくれないかな?」
米村は俺の心を見透かしたかのように語りかけてくる。
こう言えば俺の心が揺らぐだろうとわかっていて口にしている。
「仕方ないか……」
俺は気が進まないがある方法にすべてを託すことにした。
「ん? 見逃す気になったかな?」
「いや……見逃したりはしないよ。でも殺しもしない……というか正直どうなるか俺もわからないんだ」
「うん? 何を言っているんだい? 善くん」
俺は右手を伸ばすと、
「ダークホール!」
と唱えた。
刹那、ブラックホールのような漆黒の球体が現れる。
そして、
「うおっ? な、なんだいこれはっ!?」
近くにあるものを吸い込み始めた。
米村があっという間にそれに飲み込まれていく。
「ぐ、ぐあぁっ、ちょ、ちょっと待ってくれ、た、助け――」
最後の最後には助けを請うていたようだが、時すでに遅く、米村は俺にすらわからないどこかへ消えていってしまった。
0
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる