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第77話 夜風に吹かれて
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「僕はキングバッファローの肉を一つ手に入れたよ」
「わたしは二つ手に入れました」
「俺は三つです」
各々戦果を報告し合う。
たった今俺たちは協力してキングバッファロー八体を倒し終えたところだった。
「こんなにドロップアイテムが手に入るなんて奇跡みたいっ」
『えっへん。それはおいらの特性のおかげなんだよっ』
いつの間にか足元に来ていたメタムンが自信満々に言い放つ。
「メタムンちゃんの特性?」
『そうだよ。おいらと一緒にいるとモンスターのアイテムドロップ率が2倍に上がるんだっ』
「へー、そうだったのっ。すごいじゃない、メタムンちゃんっ」
『えっへへへ。しかもそれだけじゃないよ、獲得経験値だって2倍になるんだからねっ』
気をよくしたメタムンがつらつらと自身の特性を語る。
「えっ、そうなのっ? あっ、ほんとだ、わたしのレベルが思ってたよりも上がってるわ!」
スマホの画面を見ながら北原が興奮した様子で声を大にした。
そしてメタムンに向き直り、
「メタムンちゃん、すっごいじゃん!」
メタムンの頭を優しく撫でる。
メタムンは『えへへへー』と目を細めてそれを素直に受け入れていた。
「これで食糧は充分だよ。じゃあみんなのところに戻るとしようか」
米村さんの掛け声で俺たちはきびすを返すともと来た道を戻るのだった。
☆ ☆ ☆
昼食を終え、夕食もご馳走になった俺は一人、ハウスの外で寝そべり夜空を見上げていた。
心地よい風が頬を撫でていく。
するとどこからか甘い匂いが流れてきて、俺の鼻孔をくすぐった。
それと同時に、
「柴木くん、そんなところで何してるの?」
と北原が近付いてきた。
「あー、いや、別に……空を見てただけだけど」
「ふーん。あれ、メタムンちゃんは? 一緒じゃないの?」
「メタムンなら向こうの方で女子学生たちと楽しそうに話してた」
「あははっ、そうなんだー」
言いながら俺の隣に腰を下ろす。
髪を洗ったのか、少し前髪が濡れている。
「すみれ、元気かなー」
独り言なのかそれとも俺への問いかけなのか、微妙な声量で北原が口にした。
俺は何か答えた方がいいのかと悩んだが、結局何も返さなかった。
すると、
「ちょっと、無視しないでってば」
と北原が俺の腕を小突く。
「あ、今の俺に訊いてたの?」
「当たり前じゃん、ほかに誰がいるのっ」
「いや、いないけど……」
ここには俺と北原の二人きり。
周りにはほかに誰の姿も見当たらない。
「でしょっ。じゃあもう一回訊くからね。すみれ、元気かなぁ?」
一拍置いて、
「……うーん……まあ、元気なんじゃないか。っていうかチャットで連絡は取り合ってるんだろ」
訊き返す。
「まあね。実はついさっきも連絡したら、私は大丈夫だから心配しないでって返事が来たところ」
「そうなのか……うん、まあ、大丈夫だろ。本人がそう言ってるんだし、認識阻害呪文もあることだし」
「そうだね。ここでわたしが心配してても仕方ないか」
「ああ」
会話が一段落すると沈黙の時間が始まった。
おそらく話好きな北原にしては何も話しかけてこないことが気にはなるが、それ以上に俺はこの沈黙の時間が耐えられない。
一人きりなら何時間でも何日でも平気だが、誰かといる時に沈黙が流れるというのはその責任が俺にあるのではないかと考えてしまうからだ。
何か話しかけた方がいいのだろうか。
だが適当な話題がみつからない。
こんな時にメタムンがいてくれたら助かるのに。
それから五分ほど、俺も北原も一切喋ることはなかった。
そして、
「わたし、そろそろ行くね」
嫌気が差したのか、北原はそう言うと立ち上がりすたすたと去っていった。
あー……お腹が痛い。
「わたしは二つ手に入れました」
「俺は三つです」
各々戦果を報告し合う。
たった今俺たちは協力してキングバッファロー八体を倒し終えたところだった。
「こんなにドロップアイテムが手に入るなんて奇跡みたいっ」
『えっへん。それはおいらの特性のおかげなんだよっ』
いつの間にか足元に来ていたメタムンが自信満々に言い放つ。
「メタムンちゃんの特性?」
『そうだよ。おいらと一緒にいるとモンスターのアイテムドロップ率が2倍に上がるんだっ』
「へー、そうだったのっ。すごいじゃない、メタムンちゃんっ」
『えっへへへ。しかもそれだけじゃないよ、獲得経験値だって2倍になるんだからねっ』
気をよくしたメタムンがつらつらと自身の特性を語る。
「えっ、そうなのっ? あっ、ほんとだ、わたしのレベルが思ってたよりも上がってるわ!」
スマホの画面を見ながら北原が興奮した様子で声を大にした。
そしてメタムンに向き直り、
「メタムンちゃん、すっごいじゃん!」
メタムンの頭を優しく撫でる。
メタムンは『えへへへー』と目を細めてそれを素直に受け入れていた。
「これで食糧は充分だよ。じゃあみんなのところに戻るとしようか」
米村さんの掛け声で俺たちはきびすを返すともと来た道を戻るのだった。
☆ ☆ ☆
昼食を終え、夕食もご馳走になった俺は一人、ハウスの外で寝そべり夜空を見上げていた。
心地よい風が頬を撫でていく。
するとどこからか甘い匂いが流れてきて、俺の鼻孔をくすぐった。
それと同時に、
「柴木くん、そんなところで何してるの?」
と北原が近付いてきた。
「あー、いや、別に……空を見てただけだけど」
「ふーん。あれ、メタムンちゃんは? 一緒じゃないの?」
「メタムンなら向こうの方で女子学生たちと楽しそうに話してた」
「あははっ、そうなんだー」
言いながら俺の隣に腰を下ろす。
髪を洗ったのか、少し前髪が濡れている。
「すみれ、元気かなー」
独り言なのかそれとも俺への問いかけなのか、微妙な声量で北原が口にした。
俺は何か答えた方がいいのかと悩んだが、結局何も返さなかった。
すると、
「ちょっと、無視しないでってば」
と北原が俺の腕を小突く。
「あ、今の俺に訊いてたの?」
「当たり前じゃん、ほかに誰がいるのっ」
「いや、いないけど……」
ここには俺と北原の二人きり。
周りにはほかに誰の姿も見当たらない。
「でしょっ。じゃあもう一回訊くからね。すみれ、元気かなぁ?」
一拍置いて、
「……うーん……まあ、元気なんじゃないか。っていうかチャットで連絡は取り合ってるんだろ」
訊き返す。
「まあね。実はついさっきも連絡したら、私は大丈夫だから心配しないでって返事が来たところ」
「そうなのか……うん、まあ、大丈夫だろ。本人がそう言ってるんだし、認識阻害呪文もあることだし」
「そうだね。ここでわたしが心配してても仕方ないか」
「ああ」
会話が一段落すると沈黙の時間が始まった。
おそらく話好きな北原にしては何も話しかけてこないことが気にはなるが、それ以上に俺はこの沈黙の時間が耐えられない。
一人きりなら何時間でも何日でも平気だが、誰かといる時に沈黙が流れるというのはその責任が俺にあるのではないかと考えてしまうからだ。
何か話しかけた方がいいのだろうか。
だが適当な話題がみつからない。
こんな時にメタムンがいてくれたら助かるのに。
それから五分ほど、俺も北原も一切喋ることはなかった。
そして、
「わたし、そろそろ行くね」
嫌気が差したのか、北原はそう言うと立ち上がりすたすたと去っていった。
あー……お腹が痛い。
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