40 / 109
第40話 独裁国家
しおりを挟む
「すご……」
俺は言葉を失っていた。
三人の女子学生に連れられてやってきた場所は、歴史の教科書で見た弥生時代の集落の様子そのままだった。
広い田んぼには農作物がびっしりと並んでいる。
みくちゃんたちには申し訳ないがこういうのを本当の村と呼ぶのだろう。
「なんだ、ここ……」
「おい、私語は慎めっ!」
「わ、わかったよ」
そんな怒鳴らなくてもいいだろうに。
背の高い女子学生にたしなめられ俺は口をつぐむ。
我ながら情けないが、子分肌な性格の俺は強い口調で命令されると委縮してしまうのだ。
かなり広々とした村だったが、視界に入ってくるのは女子学生ばかりで男子学生の姿はまったく見当たらない。
そんな村人らしき女子学生たちの無遠慮な視線をその身に受けつつ、俺は村の中央付近の建物の地下に連れていかれた。
「よし、とりあえずここに入ってろっ!」
と背の高い女子学生。
その言葉を受けて腕を掴んでいた二人の女子学生が俺を牢屋の中に突き飛ばす。
「うおっと……」
「広本様は今大事なミーティング中だっ。しばらくはそこでおとなしくしてるんだなっ!」
言って女子学生たちは立ち去っていった。
「どうなってるんだ……?」
まるで広本という人間を王様のごとくあがめているようだ。
広本って奴は一体……?
とその時、
「お前さんも捕まったのかい?」
牢屋の奥の方から男性のしゃがれた声がした。
俺は一瞬驚くも、気を取り直して奥の方をみつめる。
すると薄暗くて気付かなかったが牢屋の中には俺のほかにも人がいた。
見覚えこそないが、見た目から察するにおそらく神里大学の教授ってところだろう。
年齢的には俺の伯父さんと同世代に見えた。
「あなたは?」
俺が訊ねると、
「わしは神里大学の教授で石栗という者じゃ。これでも名誉教授じゃよ」
男性はゆったりとした口調でそう返した。
やはり教授だったようだ。
「ここで何を?」
「お前さんと一緒じゃよ。捕まったんじゃ」
達観した様子で石栗さんは答える。
「彼女たちはなんで俺たちを捕まえたんですか? 俺、特にマズいことはしてないと思うんですけど……」
領土に勝手に入ったとか言っていた気はするが……。
「広本とやらのせいじゃよ。彼女らはどういうわけか広本の命令通り動いておるのじゃ」
「え? あの、よくわからないんですけど……広本って誰ですか?」
俺は率直に思ったことを口にした。
すると石栗さんはこうつぶやいた。
「広本はいうなれば、この独裁国家の王様ってとこじゃな」
俺は言葉を失っていた。
三人の女子学生に連れられてやってきた場所は、歴史の教科書で見た弥生時代の集落の様子そのままだった。
広い田んぼには農作物がびっしりと並んでいる。
みくちゃんたちには申し訳ないがこういうのを本当の村と呼ぶのだろう。
「なんだ、ここ……」
「おい、私語は慎めっ!」
「わ、わかったよ」
そんな怒鳴らなくてもいいだろうに。
背の高い女子学生にたしなめられ俺は口をつぐむ。
我ながら情けないが、子分肌な性格の俺は強い口調で命令されると委縮してしまうのだ。
かなり広々とした村だったが、視界に入ってくるのは女子学生ばかりで男子学生の姿はまったく見当たらない。
そんな村人らしき女子学生たちの無遠慮な視線をその身に受けつつ、俺は村の中央付近の建物の地下に連れていかれた。
「よし、とりあえずここに入ってろっ!」
と背の高い女子学生。
その言葉を受けて腕を掴んでいた二人の女子学生が俺を牢屋の中に突き飛ばす。
「うおっと……」
「広本様は今大事なミーティング中だっ。しばらくはそこでおとなしくしてるんだなっ!」
言って女子学生たちは立ち去っていった。
「どうなってるんだ……?」
まるで広本という人間を王様のごとくあがめているようだ。
広本って奴は一体……?
とその時、
「お前さんも捕まったのかい?」
牢屋の奥の方から男性のしゃがれた声がした。
俺は一瞬驚くも、気を取り直して奥の方をみつめる。
すると薄暗くて気付かなかったが牢屋の中には俺のほかにも人がいた。
見覚えこそないが、見た目から察するにおそらく神里大学の教授ってところだろう。
年齢的には俺の伯父さんと同世代に見えた。
「あなたは?」
俺が訊ねると、
「わしは神里大学の教授で石栗という者じゃ。これでも名誉教授じゃよ」
男性はゆったりとした口調でそう返した。
やはり教授だったようだ。
「ここで何を?」
「お前さんと一緒じゃよ。捕まったんじゃ」
達観した様子で石栗さんは答える。
「彼女たちはなんで俺たちを捕まえたんですか? 俺、特にマズいことはしてないと思うんですけど……」
領土に勝手に入ったとか言っていた気はするが……。
「広本とやらのせいじゃよ。彼女らはどういうわけか広本の命令通り動いておるのじゃ」
「え? あの、よくわからないんですけど……広本って誰ですか?」
俺は率直に思ったことを口にした。
すると石栗さんはこうつぶやいた。
「広本はいうなれば、この独裁国家の王様ってとこじゃな」
0
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる