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第32話 村を襲ったモンスター
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「ひっく……ひっく……」
みくちゃんが落ち着きを取り戻すまでの間、俺はただ静かにそばにいてやった。
かける言葉がみつからなかっただけだが、みくちゃんからしてみればそれでよかったのかもしれない。
みくちゃんに気付かれぬよう俺は小さく「キュア」と唱え、首元の傷を治してやる。
しばらくしてから、みくちゃんがゆっくりと口を開いた。
「……も、もうだいじょぶだよ」
「落ち着いた? それで何があったの?」
わけを訊ねるべく、みくちゃんの顔を覗き込む。
「あのね、わたしの村にね、モンスターが沢山襲ってきたの。それでお父さんとお母さんとお兄ちゃんたちと離れ離れになっちゃったの」
「村? 村なんてあるの? それにみくちゃんのお父さんとお母さんもこの島にいるの?」
ここは【魔物島】。
そもそも学生と教師以外はいないはずだが……。
よくよく考えればみくちゃんのような幼い子どもがこの島にいることも疑問だ。
「わたしとお父さんとお母さんでお兄ちゃんの入学式の付き添いに行ったの。でもすごい地震が起きて、そしたらみんなここにいて……そういう人たちと一緒に村を作って向こうの方で住んでたの」
「はあ、なるほど。そうだったんだ」
入学式に出席していたのは学生と教師ばかりではなかったわけか。
あー、そういえば今思い返すと中には家族そろって出席していた人たちも何組かいたかもな。
「みくちゃんのお父さんたちは無事なの?」
「わかんない。わたし逃げるのに必死だったから。村に戻って確認したいけど、モンスターがまだいるかもしれないから怖くて……」
「そっか。まあそりゃそうだよね」
自分で訊いておいてなんだが我ながらまぬけな質問だったな。
「どんなモンスターだった? 憶えてる?」
「えっとね、犬みたいなオオカミみたいな……でももっとずっと大きかった。わたしそのモンスターに噛まれちゃったんだけど、ほかの人が助けてくれてなんとかここまで逃げてこられたの」
「そう」
犬みたいなオオカミみたいな大きいモンスター?
俺はここでふとあるモンスターが頭に思い浮かぶ。
「ねえ、みくちゃん。ジャッカルってわかるかな?」
「ジャッカル? なにそれ、わかんない」
「えーっとね、オオカミみたいな感じなんだけど。昨日この辺りにキラージャッカルっていう体長一メートルくらいのモンスターがいたんだよ。だからもしかしたらそいつに襲われたんじゃないかな?」
「うーん……うん。多分それだと思う」
一回首をひねったあとみくちゃんは大きくうなずいた。
俺は心の中でドキッとする。
俺のせいだ。
俺が昨日キラージャッカルを沢山呼び寄せてしまったから。
そしてそいつらを倒すことなく放っておいてしまったから。
だから近くで暮らしていたみくちゃんたちが俺の代わりに狙われたんだ。
「しばきんぐ、どうしたの? お腹痛いの?」
「あ、いや、ごめん、大丈夫だよ」
黙り込んでしまった俺を心配そうにみつめるみくちゃん。
家族がキラージャッカルの群れに襲われて気が気じゃないはずなのに俺の心配をしてくれている。
だが気丈に振る舞ってはいるがまだ八才の女の子。
こんな子を見捨てて放り出すことは出来ない。
しかも村が襲われたことの責任の一端が俺にあるのだとすればなおさら放ってはおけない。
俺は罪悪感を振り払うようにすっと立ち上がると、
「みくちゃん、村に戻ってみよう。俺も一緒にいくから」
力強い口調でみくちゃんにそう言った。
みくちゃんが落ち着きを取り戻すまでの間、俺はただ静かにそばにいてやった。
かける言葉がみつからなかっただけだが、みくちゃんからしてみればそれでよかったのかもしれない。
みくちゃんに気付かれぬよう俺は小さく「キュア」と唱え、首元の傷を治してやる。
しばらくしてから、みくちゃんがゆっくりと口を開いた。
「……も、もうだいじょぶだよ」
「落ち着いた? それで何があったの?」
わけを訊ねるべく、みくちゃんの顔を覗き込む。
「あのね、わたしの村にね、モンスターが沢山襲ってきたの。それでお父さんとお母さんとお兄ちゃんたちと離れ離れになっちゃったの」
「村? 村なんてあるの? それにみくちゃんのお父さんとお母さんもこの島にいるの?」
ここは【魔物島】。
そもそも学生と教師以外はいないはずだが……。
よくよく考えればみくちゃんのような幼い子どもがこの島にいることも疑問だ。
「わたしとお父さんとお母さんでお兄ちゃんの入学式の付き添いに行ったの。でもすごい地震が起きて、そしたらみんなここにいて……そういう人たちと一緒に村を作って向こうの方で住んでたの」
「はあ、なるほど。そうだったんだ」
入学式に出席していたのは学生と教師ばかりではなかったわけか。
あー、そういえば今思い返すと中には家族そろって出席していた人たちも何組かいたかもな。
「みくちゃんのお父さんたちは無事なの?」
「わかんない。わたし逃げるのに必死だったから。村に戻って確認したいけど、モンスターがまだいるかもしれないから怖くて……」
「そっか。まあそりゃそうだよね」
自分で訊いておいてなんだが我ながらまぬけな質問だったな。
「どんなモンスターだった? 憶えてる?」
「えっとね、犬みたいなオオカミみたいな……でももっとずっと大きかった。わたしそのモンスターに噛まれちゃったんだけど、ほかの人が助けてくれてなんとかここまで逃げてこられたの」
「そう」
犬みたいなオオカミみたいな大きいモンスター?
俺はここでふとあるモンスターが頭に思い浮かぶ。
「ねえ、みくちゃん。ジャッカルってわかるかな?」
「ジャッカル? なにそれ、わかんない」
「えーっとね、オオカミみたいな感じなんだけど。昨日この辺りにキラージャッカルっていう体長一メートルくらいのモンスターがいたんだよ。だからもしかしたらそいつに襲われたんじゃないかな?」
「うーん……うん。多分それだと思う」
一回首をひねったあとみくちゃんは大きくうなずいた。
俺は心の中でドキッとする。
俺のせいだ。
俺が昨日キラージャッカルを沢山呼び寄せてしまったから。
そしてそいつらを倒すことなく放っておいてしまったから。
だから近くで暮らしていたみくちゃんたちが俺の代わりに狙われたんだ。
「しばきんぐ、どうしたの? お腹痛いの?」
「あ、いや、ごめん、大丈夫だよ」
黙り込んでしまった俺を心配そうにみつめるみくちゃん。
家族がキラージャッカルの群れに襲われて気が気じゃないはずなのに俺の心配をしてくれている。
だが気丈に振る舞ってはいるがまだ八才の女の子。
こんな子を見捨てて放り出すことは出来ない。
しかも村が襲われたことの責任の一端が俺にあるのだとすればなおさら放ってはおけない。
俺は罪悪感を振り払うようにすっと立ち上がると、
「みくちゃん、村に戻ってみよう。俺も一緒にいくから」
力強い口調でみくちゃんにそう言った。
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