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第87話 縮小リング
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それにしてもなんて速さだったんだ、あのゴキ……黒光りした奴は。
そういえば前に何かで見たことがある。
アリがもし象と同じ大きさだったらアリの方が圧倒的に力持ちなのだと。
だからゴキブリがもし人間と同じ大きさだったら……考えるだけで鳥肌が立つ。
俺は今そんな状況に置かれているってわけか。
とりあえず地下から脱した俺は自分の部屋へ向かうことにした。
メガネが縮小リングを直すまでの間部屋で休んでいよう。
おそらく三センチほどのサイズになってしまった俺はメイドや兵士たちに踏まれないように慎重に廊下の端を進んでいく。
やっぱり誰にも気付かれないな。
まさか人間がこんな小さくなって足元を歩いているなんて誰も思わないもんな。
すると前からミアがやってきた。
ちょうどいい。ミアに部屋まで運んでもらうか。
俺は体と同じく声も小さくなっているのでミアに声をかけるため近くまで来るのを待った。
そして足元まで来た時、
「おーいミっ!?」
ミアを見上げた俺は固まってしまった。
なぜなら……下着が丸見えだからだ。
今の俺の声に反応したのかミアが周りをキョロキョロしている。
まずい。
今気付かれたら俺は小さくなってまでメイドのパンツを見たがった変態王子だと思われてしまう。
俺はすぐにその場から駆け出した。
走りながら後ろを振り返り確認する。
……ほっ。よかった。多分気付かれてなさそうだ。
ドン。
前を見ていなかった俺は何かにぶつかった。
「きゃっ」
上から聞き慣れた声が降ってくる。
見上げるとエルメスが立っていた。
ぶつかったのはエルメスのヒール部分だったようだ。
エルメスはしゃがみこんで俺を見下ろす。
「何してるんですか、カズン王子」
「お前、俺が小さくなっていることに驚かないのか?」
「小さくなってまで私の下着を見ようとしていることには驚いてますけど」
軽蔑の視線が突き刺さる。
「ご、誤解するなっ! 説明させてくれっ!」
俺はエルメスにことのいきさつを話して聞かせた。
「……というわけなんだよ」
「ふ~ん、まあそんなことだろうとは思いましたけど」
エルメスはなんとかわかってくれたようだった。
「この体勢疲れるんで立ってもいいですか」
エルメスはそう言うと俺を手のひらの上に乗せ立ち上がった。
「カズン王子が彼を連れてきたんですからね、自業自得ですよ」
「それは俺も反省してるさ……で、悪いんだけどこのまま俺のこと部屋まで運んでってくれないか?」
これ以上面倒に巻き込まれたくないからな。
「私がカズン王子をですか? 部屋まで? 正直めんどくさいんですけど……」
「前に恋人の振りしてやったろ」
「そんな前のこと持ち出すんですか? だからモテないんですよあなたは」
「いいから俺の部屋まで行ってくれ。ここでずっとこうしててもお前が変に思われるだけだぞ」
はたから見たらエルメスは自分の手に向かって話しているように見えるだろうからな。
「わかりましたよ。部屋まで運ぶだけですからね」
渋々了承したエルメスに連れられて俺はなんとか無事自室に着いた。
「今度私に何かあったら助けてもらいますからね」と言い残し部屋をあとにするエルメス。
そんなエルメスの背中を見送った俺は部屋の奥にいたアテナに向き直った。
アテナを遠く見上げて、
「おーい。ここだ、ここ」
「……カズンわたしより小さい」
「ああ、ちょっとハプニングがあってな」
とことことアテナが近付いてくる。
あれ? なんかあるべき物がないような……。
「お前……下着は?」
「……はいてない」
そういえば前に何かで見たことがある。
アリがもし象と同じ大きさだったらアリの方が圧倒的に力持ちなのだと。
だからゴキブリがもし人間と同じ大きさだったら……考えるだけで鳥肌が立つ。
俺は今そんな状況に置かれているってわけか。
とりあえず地下から脱した俺は自分の部屋へ向かうことにした。
メガネが縮小リングを直すまでの間部屋で休んでいよう。
おそらく三センチほどのサイズになってしまった俺はメイドや兵士たちに踏まれないように慎重に廊下の端を進んでいく。
やっぱり誰にも気付かれないな。
まさか人間がこんな小さくなって足元を歩いているなんて誰も思わないもんな。
すると前からミアがやってきた。
ちょうどいい。ミアに部屋まで運んでもらうか。
俺は体と同じく声も小さくなっているのでミアに声をかけるため近くまで来るのを待った。
そして足元まで来た時、
「おーいミっ!?」
ミアを見上げた俺は固まってしまった。
なぜなら……下着が丸見えだからだ。
今の俺の声に反応したのかミアが周りをキョロキョロしている。
まずい。
今気付かれたら俺は小さくなってまでメイドのパンツを見たがった変態王子だと思われてしまう。
俺はすぐにその場から駆け出した。
走りながら後ろを振り返り確認する。
……ほっ。よかった。多分気付かれてなさそうだ。
ドン。
前を見ていなかった俺は何かにぶつかった。
「きゃっ」
上から聞き慣れた声が降ってくる。
見上げるとエルメスが立っていた。
ぶつかったのはエルメスのヒール部分だったようだ。
エルメスはしゃがみこんで俺を見下ろす。
「何してるんですか、カズン王子」
「お前、俺が小さくなっていることに驚かないのか?」
「小さくなってまで私の下着を見ようとしていることには驚いてますけど」
軽蔑の視線が突き刺さる。
「ご、誤解するなっ! 説明させてくれっ!」
俺はエルメスにことのいきさつを話して聞かせた。
「……というわけなんだよ」
「ふ~ん、まあそんなことだろうとは思いましたけど」
エルメスはなんとかわかってくれたようだった。
「この体勢疲れるんで立ってもいいですか」
エルメスはそう言うと俺を手のひらの上に乗せ立ち上がった。
「カズン王子が彼を連れてきたんですからね、自業自得ですよ」
「それは俺も反省してるさ……で、悪いんだけどこのまま俺のこと部屋まで運んでってくれないか?」
これ以上面倒に巻き込まれたくないからな。
「私がカズン王子をですか? 部屋まで? 正直めんどくさいんですけど……」
「前に恋人の振りしてやったろ」
「そんな前のこと持ち出すんですか? だからモテないんですよあなたは」
「いいから俺の部屋まで行ってくれ。ここでずっとこうしててもお前が変に思われるだけだぞ」
はたから見たらエルメスは自分の手に向かって話しているように見えるだろうからな。
「わかりましたよ。部屋まで運ぶだけですからね」
渋々了承したエルメスに連れられて俺はなんとか無事自室に着いた。
「今度私に何かあったら助けてもらいますからね」と言い残し部屋をあとにするエルメス。
そんなエルメスの背中を見送った俺は部屋の奥にいたアテナに向き直った。
アテナを遠く見上げて、
「おーい。ここだ、ここ」
「……カズンわたしより小さい」
「ああ、ちょっとハプニングがあってな」
とことことアテナが近付いてくる。
あれ? なんかあるべき物がないような……。
「お前……下着は?」
「……はいてない」
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