47 / 119
第47話 崩れかけの遺跡
しおりを挟む
「なあ、いつまで歩くんだ?」
俺たちはエルメスが召喚した魔獣プフの後ろに続くようにして草原を歩いていた。
もうかれこれ一時間は歩きっぱなしだ。
石板のせの字も見えてこない。
「姉さん、あの魔獣好き勝手に飛んでるだけじゃないの?」
「カルチェどのあの子はプフです。拙者がそう名付けましたゆえ」
プフは時折こっちを確認するように振り返りながら俺たちの前をぱたぱたと飛んでいる。
「はぁ、大丈夫よたまには自分の姉を信じなさい。はぁ、それにしても疲れたわね。プフちょっと待って、休憩しましょ」
するとプフはエルメスの言葉に従ったのかスズの頭の上にブモンと着地した。
「まだ一時間しか歩いてないわよ。もう休憩するの?」
「拙者はまだまだ平気です」
「だからあんたたちとは体の出来が違うって言ったでしょ。私は宮廷魔術師なのよ」
汗を拭きながら文句を言うエルメス。
「大体あんたたちが馬車を断るから……」
「俺酔いやすい体質だから……悪い」
「同じく」
「だったら私だけでも馬に乗ったわよ、全く」
「普段運動してないからいけないのよ姉さん」
カルチェが呆れ顔でエルメスを見る。
エルメスは反論する体力も惜しいのかそのまま草むらの上に寝転んだ。
「カズン王子様、どうしますか?」
「そうだな。ちょっと休憩するか」
俺たちはエルメスのそばに腰を下ろす。
「おい、お前はいいのか?」
「はい。拙者はプフと遊んでいますからお気になさらず」
そう言ってプフを頭の上に乗せたまま草原を駆け回るスズ。
無邪気で愛らしい光景だ。
「カズン王子様、訊いてもいいですか?」
隣に座っているカルチェが訊いてくる。
「なんだ」
「カズン王子様はラファグリポスというなんでも願いが叶うなんて石板はあると信じているんですか?」
「そうだなぁ……あまり信じてないけど」
でもまあ俺自身別の世界から連れてこられてるわけだから可能性がゼロとは言えないかもな。
「そうですよね。私も信じてはいません。私は自分の目で見た物しか信じませんから」
「だったらどうしてこの旅について来たんだ?」
「そ、それは……カズン王子様と、その一緒にその……」
声がどんどん小さくなっていくカルチェ。
最後の方がよく聞き取れなかった。
「あ~あ、泣く子も黙る兵士長が形無しね」
「ね、姉さん!? 寝てたんじゃないの!?」
「あんたたちがうるさいから眠れないわよ。それよりカズン王子、さっさとそのラファなんとかっていう石板みつけましょうね。じゃないといつまで経っても私たちお城に帰れないんですからねっ」
横になりながらこっちを振り返ったエルメス。
「お前はあるって信じてるのか」
「信じてはいませんけど信じるしかないじゃないですか」
エルメスは「わたしはさっさと帰りたいんですよ」と愚痴をこぼす。
「プフがあと少しだって言ってますよ」
スズがプフを頭の上に乗せ戻ってきた。
「スズちゃんその魔獣の言っていることがわかるの?」
「え? カルチェどのはわからないんですか?」
不思議そうな顔のスズ。
「私っていうかカズン王子様も姉さんもわからないよね?」
カルチェは俺とエルメスを見た。
俺たちは首を縦に振る。
「みなさんそうだったんですか? ふむ、なぜ拙者にだけはわかるのでしょうか」
スズが首をかしげた。
「それよりスズ、プフはなんて言ってるのよ」
エルメスが立ち上がりスズに向き立つ。身長差が大人と子どもくらいある。
「プフが言うにはこの近くに遺跡のようなものがあるそうです。石板はその中だと」
「この近くなのねっ。カズン王子聞きましたか? そうとわかればすぐに出発しましょう。さあ立って立って」
エルメスがぱあっと表情を明るくさせ俺たちを急かす。
「自分で立てるから服を引っ張るなって。伸びるだろうが」
俺は今着ている服が気に入っているんだ。クローゼットの中にあったいかにも王族って感じの服ばかりの中で唯一俺のいた世界の洋服っぽいこの黒いシャツと黒デニムが。
「さあプフ、私たちをその遺跡へ案内するのよっ」
「プププッ」
プフは重そうな体でブモンと宙に飛び立った。
それから二十分ほど歩いた頃だろうか。
「カズン王子様、前方に遺跡らしいものが見えてきました」
「えっ遺跡があったの?」
エルメスが顔を上げた。
「おお、本当にあったな」
「プフえらい。よくやったぞ」
スズがプフを抱きしめる。
近付いてみるとそこには崩れかけた遺跡があった。
俺たちはエルメスが召喚した魔獣プフの後ろに続くようにして草原を歩いていた。
もうかれこれ一時間は歩きっぱなしだ。
石板のせの字も見えてこない。
「姉さん、あの魔獣好き勝手に飛んでるだけじゃないの?」
「カルチェどのあの子はプフです。拙者がそう名付けましたゆえ」
プフは時折こっちを確認するように振り返りながら俺たちの前をぱたぱたと飛んでいる。
「はぁ、大丈夫よたまには自分の姉を信じなさい。はぁ、それにしても疲れたわね。プフちょっと待って、休憩しましょ」
するとプフはエルメスの言葉に従ったのかスズの頭の上にブモンと着地した。
「まだ一時間しか歩いてないわよ。もう休憩するの?」
「拙者はまだまだ平気です」
「だからあんたたちとは体の出来が違うって言ったでしょ。私は宮廷魔術師なのよ」
汗を拭きながら文句を言うエルメス。
「大体あんたたちが馬車を断るから……」
「俺酔いやすい体質だから……悪い」
「同じく」
「だったら私だけでも馬に乗ったわよ、全く」
「普段運動してないからいけないのよ姉さん」
カルチェが呆れ顔でエルメスを見る。
エルメスは反論する体力も惜しいのかそのまま草むらの上に寝転んだ。
「カズン王子様、どうしますか?」
「そうだな。ちょっと休憩するか」
俺たちはエルメスのそばに腰を下ろす。
「おい、お前はいいのか?」
「はい。拙者はプフと遊んでいますからお気になさらず」
そう言ってプフを頭の上に乗せたまま草原を駆け回るスズ。
無邪気で愛らしい光景だ。
「カズン王子様、訊いてもいいですか?」
隣に座っているカルチェが訊いてくる。
「なんだ」
「カズン王子様はラファグリポスというなんでも願いが叶うなんて石板はあると信じているんですか?」
「そうだなぁ……あまり信じてないけど」
でもまあ俺自身別の世界から連れてこられてるわけだから可能性がゼロとは言えないかもな。
「そうですよね。私も信じてはいません。私は自分の目で見た物しか信じませんから」
「だったらどうしてこの旅について来たんだ?」
「そ、それは……カズン王子様と、その一緒にその……」
声がどんどん小さくなっていくカルチェ。
最後の方がよく聞き取れなかった。
「あ~あ、泣く子も黙る兵士長が形無しね」
「ね、姉さん!? 寝てたんじゃないの!?」
「あんたたちがうるさいから眠れないわよ。それよりカズン王子、さっさとそのラファなんとかっていう石板みつけましょうね。じゃないといつまで経っても私たちお城に帰れないんですからねっ」
横になりながらこっちを振り返ったエルメス。
「お前はあるって信じてるのか」
「信じてはいませんけど信じるしかないじゃないですか」
エルメスは「わたしはさっさと帰りたいんですよ」と愚痴をこぼす。
「プフがあと少しだって言ってますよ」
スズがプフを頭の上に乗せ戻ってきた。
「スズちゃんその魔獣の言っていることがわかるの?」
「え? カルチェどのはわからないんですか?」
不思議そうな顔のスズ。
「私っていうかカズン王子様も姉さんもわからないよね?」
カルチェは俺とエルメスを見た。
俺たちは首を縦に振る。
「みなさんそうだったんですか? ふむ、なぜ拙者にだけはわかるのでしょうか」
スズが首をかしげた。
「それよりスズ、プフはなんて言ってるのよ」
エルメスが立ち上がりスズに向き立つ。身長差が大人と子どもくらいある。
「プフが言うにはこの近くに遺跡のようなものがあるそうです。石板はその中だと」
「この近くなのねっ。カズン王子聞きましたか? そうとわかればすぐに出発しましょう。さあ立って立って」
エルメスがぱあっと表情を明るくさせ俺たちを急かす。
「自分で立てるから服を引っ張るなって。伸びるだろうが」
俺は今着ている服が気に入っているんだ。クローゼットの中にあったいかにも王族って感じの服ばかりの中で唯一俺のいた世界の洋服っぽいこの黒いシャツと黒デニムが。
「さあプフ、私たちをその遺跡へ案内するのよっ」
「プププッ」
プフは重そうな体でブモンと宙に飛び立った。
それから二十分ほど歩いた頃だろうか。
「カズン王子様、前方に遺跡らしいものが見えてきました」
「えっ遺跡があったの?」
エルメスが顔を上げた。
「おお、本当にあったな」
「プフえらい。よくやったぞ」
スズがプフを抱きしめる。
近付いてみるとそこには崩れかけた遺跡があった。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
サキュバスの眷属になったと思ったら世界統一する事になった。〜おっさんから夜王への転身〜
ちょび
ファンタジー
萌渕 優は高校時代柔道部にも所属し数名の友達とわりと充実した高校生活を送っていた。
しかし気付けば大人になり友達とも疎遠になっていた。
「人生何とかなるだろ」
楽観的に考える優であったが32歳現在もフリーターを続けていた。
そしてある日神の手違いで突然死んでしまった結果別の世界に転生する事に!
…何故かサキュバスの眷属として……。
転生先は魔法や他種族が存在する世界だった。
名を持つものが強者とされるその世界で新たな名を授かる優。
そして任せられた使命は世界の掌握!?
そんな主人公がサキュバス達と世界統一を目指すお話しです。
お気に入りや感想など励みになります!
お気軽によろしくお願いいたします!
第13回ファンタジー小説大賞エントリー作品です!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる