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第30話 イアンナ
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地面に横たわる傭兵二人をよそに僕はセンダン村に足を踏み入れる。
エレナも僕のあとに続いて村に入った。
センダン村はひっそりとしていて村人の姿もほとんど見えない。
そんな閑散とした村の中を僕とエレナはイアンナを探しながら歩く。
イアンナが雇った傭兵が村の入り口の前にいたということは間違いなくイアンナもこの村にいる。
そう確信して僕たちは村の中にある家を一軒一軒回っていった。
幸いにも村にある家は両手で数えきれるほどしかなかったので、イアンナが隠れ住んでいた家はあっけなくみつかった。
イアンナは村の一番奥の高台にあった物置小屋のような家にいた。
「ひぃっ……!」
ドアを開けて目が合った瞬間イアンナは怯えた様子で声を発した。
僕がここにいるということは自分が雇った傭兵たちがやられたということを意味しているわけで、当然次は自分が殺される番だと悟ったはずだ。
「イアンナ、探したよ。こんな山奥に隠れていたんだね」
「……」
「僕がアズライルを殺したことはもちろん知ってるんだろ?」
「っ……」
イアンナは返答することなくただ息をのむ。
最後に会った時より幾分痩せたように見えるのは気のせいではないだろう。
「アズライルにも言ったけど僕はイアンナたちのことを本当の家族のように思っていたんだ。それなのによくも僕を〈無限の大迷宮〉に置き去りにしてくれたね」
「……」
「話さないならそれでもいいよ。僕がイアンナを殺すことに変わりはないから」
「ま、待って……!」
殺すという言葉に反応したのかイアンナが口を開いた。
絞り出すように声を震わせるイアンナ。
「何?」
「た、たしかにわたしはあんたを見捨てて逃げたわっ、そ、それは認める……で、でもあんたを殺そうとしたのはマーガレットだし、それを命じたのだってわたしじゃなくてレオナルドでしょ! わ、わたしたち、レオナルドには逆らえなかっただけよっ! そ、そうよっ、悪いのは全部レオナルドだわっ!」
堰を切ったように言葉が次々と溢れ出る。
最終的にはすべての責任をレオナルドのせいだと言い放った。
この期に及んで責任転嫁か、とも思ったがイアンナの言うことも一理ある。
「だったらレオナルドとマーガレットの居場所を教えてよ」
「お、教えたらわたしのこと、こ、殺さないでくれる……?」
「……うん」
「ほ、本当でしょうね……?」
イアンナは疑心暗鬼に陥っているような目つきで僕を見てくる。
「交渉できる立場じゃないんだから早く教えてよ。殺すよ」
「わ、わかったわっ……教えるからそれ以上近付かないでっ」
両手を胸の前に出し言うとイアンナは、
「レ、レオナルドならムーンバルト王国にいるはずよ」
と小さな声でつぶやいた。
「ムーンバルト王国?」
「え、ええ。あんたがアズライルを殺したってことを知ったレオナルドは今度こそクロノの息の根を止めてやるって息巻いて故郷のムーンバルト王国に戻っていったわ。きっと今頃は大量の兵士を招集して精鋭部隊を作っているはずよ」
「へー、そうなのか」
ムーンバルト王国といえばこの世界で一、二を争う軍事大国。
そんな国が全面的にレオナルドの味方についているということか……。
「それでマーガレットは?」
「マーガレットも自分の国に帰ったわよ。彼女がデルタ王国の第七王女だってことは知ってるでしょ。なんでも彼女の妹が急病にかかったとかで急いで戻っていったわ」
「ふーん、そうなのか」
「お、教えたわよっ……ちゃんと約束は守ってよね」
「ん? ああ、わかってるさ」
僕の返事に緊張の糸が切れたかのようにほっと安堵の顔を見せたイアンナ。
僕はそんなイアンナに素早く近付くと、彼女のお腹に軽くパンチをして気を失わせた。
エレナも僕のあとに続いて村に入った。
センダン村はひっそりとしていて村人の姿もほとんど見えない。
そんな閑散とした村の中を僕とエレナはイアンナを探しながら歩く。
イアンナが雇った傭兵が村の入り口の前にいたということは間違いなくイアンナもこの村にいる。
そう確信して僕たちは村の中にある家を一軒一軒回っていった。
幸いにも村にある家は両手で数えきれるほどしかなかったので、イアンナが隠れ住んでいた家はあっけなくみつかった。
イアンナは村の一番奥の高台にあった物置小屋のような家にいた。
「ひぃっ……!」
ドアを開けて目が合った瞬間イアンナは怯えた様子で声を発した。
僕がここにいるということは自分が雇った傭兵たちがやられたということを意味しているわけで、当然次は自分が殺される番だと悟ったはずだ。
「イアンナ、探したよ。こんな山奥に隠れていたんだね」
「……」
「僕がアズライルを殺したことはもちろん知ってるんだろ?」
「っ……」
イアンナは返答することなくただ息をのむ。
最後に会った時より幾分痩せたように見えるのは気のせいではないだろう。
「アズライルにも言ったけど僕はイアンナたちのことを本当の家族のように思っていたんだ。それなのによくも僕を〈無限の大迷宮〉に置き去りにしてくれたね」
「……」
「話さないならそれでもいいよ。僕がイアンナを殺すことに変わりはないから」
「ま、待って……!」
殺すという言葉に反応したのかイアンナが口を開いた。
絞り出すように声を震わせるイアンナ。
「何?」
「た、たしかにわたしはあんたを見捨てて逃げたわっ、そ、それは認める……で、でもあんたを殺そうとしたのはマーガレットだし、それを命じたのだってわたしじゃなくてレオナルドでしょ! わ、わたしたち、レオナルドには逆らえなかっただけよっ! そ、そうよっ、悪いのは全部レオナルドだわっ!」
堰を切ったように言葉が次々と溢れ出る。
最終的にはすべての責任をレオナルドのせいだと言い放った。
この期に及んで責任転嫁か、とも思ったがイアンナの言うことも一理ある。
「だったらレオナルドとマーガレットの居場所を教えてよ」
「お、教えたらわたしのこと、こ、殺さないでくれる……?」
「……うん」
「ほ、本当でしょうね……?」
イアンナは疑心暗鬼に陥っているような目つきで僕を見てくる。
「交渉できる立場じゃないんだから早く教えてよ。殺すよ」
「わ、わかったわっ……教えるからそれ以上近付かないでっ」
両手を胸の前に出し言うとイアンナは、
「レ、レオナルドならムーンバルト王国にいるはずよ」
と小さな声でつぶやいた。
「ムーンバルト王国?」
「え、ええ。あんたがアズライルを殺したってことを知ったレオナルドは今度こそクロノの息の根を止めてやるって息巻いて故郷のムーンバルト王国に戻っていったわ。きっと今頃は大量の兵士を招集して精鋭部隊を作っているはずよ」
「へー、そうなのか」
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そんな国が全面的にレオナルドの味方についているということか……。
「それでマーガレットは?」
「マーガレットも自分の国に帰ったわよ。彼女がデルタ王国の第七王女だってことは知ってるでしょ。なんでも彼女の妹が急病にかかったとかで急いで戻っていったわ」
「ふーん、そうなのか」
「お、教えたわよっ……ちゃんと約束は守ってよね」
「ん? ああ、わかってるさ」
僕の返事に緊張の糸が切れたかのようにほっと安堵の顔を見せたイアンナ。
僕はそんなイアンナに素早く近付くと、彼女のお腹に軽くパンチをして気を失わせた。
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