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第11話 エレナ
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「はい、これで大丈夫」
僕はエレナのライフポイントを押して額の傷を治してやった。
「す、すごい……もう、痛くないです。な、何をしたんですか?」
「僕のスキルは神眼っていってね、物体のライフポイントとデスポイントを視ることが出来るんだ」
「ライフポイントとデスポイント、ですか?」
「うん。そこに力を加えると生命活動を活発にしたり止めたり出来るんだよ」
「そ、そうなんですか。すごいです」
エレナは目を皿のように大きくして驚く。
「……あ、クロノさん。あの、これ、洗って返しますから……」
僕が渡した布切れはニーナが顔を拭いたため血を吸って真っ赤に染まっていた。
エレナはそれを大事そうに両手で握り締めて言った。
「いいよ別に、それはエレナにあげたんだから。っていうかただの布切れだから捨てちゃってよ」
「い、いえ。だ、だったらこれはわたしの宝物にします」
ただの布切れに顔をうずめるエレナ。
そんな物を宝物にするなんてこれまで一体どういう人生を歩んできたのだろうか。不憫でならない。
僕はあらためてエレナを眺めてみた。
身長は僕より頭二つ分低く赤茶色の髪はぼさぼさで頬は痩せこけ手足は細い。
つぎはぎだらけのワンピースに半分破れかけた靴。
全身薄汚れていて少しだけにおう。
「エレナ、きみって年いくつ?」
「あ、わたしは十四歳です」
「十四歳……僕の二つ下だったんだ」
見た目からしてもっと幼いと思っていたが僕と二つしか変わらないとは予想外だ。
頬が痩せこけているのでもしかしたら満足に食事もしていなかったのかもしれない。
「エレナ、これ食べる?」
僕はおばあさんからもらっていたリンゴを取り出すとエレナに差し出した。
「え……?」
「美味しいよ」
「で、でもそれはクロノさんの……」
「僕はもう食べたからいいんだ」
本当はお腹がすいた時のために取っておいたんだけど、エレナに食べてもらった方がおばあさんも喜ぶはず。
「い、いいんですか? 本当にもらっても……」
「うん。食べて」
「あ、ありがとうございます」
申し訳なさそうにしながらもリンゴを受け取るエレナ。
「いただきます」
声に出すと小さな口でそれにかじりついた。
「どう? 口に合えばいいけど」
「はい……すごく、ものすごく美味しいです」
よほどお腹がすいていたのかエレナはリンゴを一心不乱に食べ進めていく。
「あ、そうだ。エレナ、この辺りにキンシャ村ってある? 僕はそこを目指してたんだけど」
「えっと、それは……わたしがいた村です……」
「そうだったの? うーん、そっか」
おばあさんに教えてもらっていた村はエレナの住む村だったのか。
それはまいったな。
さっきの人たちに脅し文句を吐いた手前、村で厄介になることは難しい。
何よりエレナももう彼らには会いたくないだろうし。
「じゃあさ、この近くにほかに村とか町ってない? 小さくてもいいからさ」
「そ、そうですね……あ、ありますっ。近くってわけではないですけど、ここから真っ直ぐ北に行ったところにロレンゾという町があったはずです」
思い出したようにエレナは口にした。
「おー、それは助かる。じゃあとりあえず明日はそのロレンゾの町に向かって進もうか。それで町に着いたら一度宿屋でゆっくり休もう。それからご飯を食べて服を何着か買おうか。靴もそのままじゃ歩きにくいだろうし」
僕はエレナの足元を見ながら話す。
「え、い、いいですよそんな……それにわたし、お金持っていませんし……」
「心配しないで。僕昨日までダンジョンにいたからさ、高く売れそうなアイテムをいくつか持ってるんだ。町に着いたら換金すればいいよ」
「い、いえ。本当にいいです……クロノさんに迷惑はかけたくありません」
頑なに断るエレナ。
「迷惑だなんて。お金ならギルドでモンスター退治とか請け負えばいくらでも手に入るからさ。僕こう見えて結構強いんだよ」
「で、でもやっぱり……」
エレナはなかなか首を縦に振らない。
「うーん……」
意外にも頑固なエレナに僕が頭を悩ませていると――
「あがっ……!?」
突如として体に激痛が走った。
それと同時に全身が硬直して地面に倒れてしまう。
「えっ!? ど、どうしたんですか、クロノさんっ」
「か、がかっ……あがぁっ……!」
体が痙攣を起こしていて言葉を発することが出来ない。
「クロノさん、しっかりしてくださいっ!」
「あっ……がが、す……けっ……!」
なんなんだこれはっ……。
全身がきしむように痛いっ。
それに、息が出来ないっ……し、死ぬっ。
僕はエレナのライフポイントを押して額の傷を治してやった。
「す、すごい……もう、痛くないです。な、何をしたんですか?」
「僕のスキルは神眼っていってね、物体のライフポイントとデスポイントを視ることが出来るんだ」
「ライフポイントとデスポイント、ですか?」
「うん。そこに力を加えると生命活動を活発にしたり止めたり出来るんだよ」
「そ、そうなんですか。すごいです」
エレナは目を皿のように大きくして驚く。
「……あ、クロノさん。あの、これ、洗って返しますから……」
僕が渡した布切れはニーナが顔を拭いたため血を吸って真っ赤に染まっていた。
エレナはそれを大事そうに両手で握り締めて言った。
「いいよ別に、それはエレナにあげたんだから。っていうかただの布切れだから捨てちゃってよ」
「い、いえ。だ、だったらこれはわたしの宝物にします」
ただの布切れに顔をうずめるエレナ。
そんな物を宝物にするなんてこれまで一体どういう人生を歩んできたのだろうか。不憫でならない。
僕はあらためてエレナを眺めてみた。
身長は僕より頭二つ分低く赤茶色の髪はぼさぼさで頬は痩せこけ手足は細い。
つぎはぎだらけのワンピースに半分破れかけた靴。
全身薄汚れていて少しだけにおう。
「エレナ、きみって年いくつ?」
「あ、わたしは十四歳です」
「十四歳……僕の二つ下だったんだ」
見た目からしてもっと幼いと思っていたが僕と二つしか変わらないとは予想外だ。
頬が痩せこけているのでもしかしたら満足に食事もしていなかったのかもしれない。
「エレナ、これ食べる?」
僕はおばあさんからもらっていたリンゴを取り出すとエレナに差し出した。
「え……?」
「美味しいよ」
「で、でもそれはクロノさんの……」
「僕はもう食べたからいいんだ」
本当はお腹がすいた時のために取っておいたんだけど、エレナに食べてもらった方がおばあさんも喜ぶはず。
「い、いいんですか? 本当にもらっても……」
「うん。食べて」
「あ、ありがとうございます」
申し訳なさそうにしながらもリンゴを受け取るエレナ。
「いただきます」
声に出すと小さな口でそれにかじりついた。
「どう? 口に合えばいいけど」
「はい……すごく、ものすごく美味しいです」
よほどお腹がすいていたのかエレナはリンゴを一心不乱に食べ進めていく。
「あ、そうだ。エレナ、この辺りにキンシャ村ってある? 僕はそこを目指してたんだけど」
「えっと、それは……わたしがいた村です……」
「そうだったの? うーん、そっか」
おばあさんに教えてもらっていた村はエレナの住む村だったのか。
それはまいったな。
さっきの人たちに脅し文句を吐いた手前、村で厄介になることは難しい。
何よりエレナももう彼らには会いたくないだろうし。
「じゃあさ、この近くにほかに村とか町ってない? 小さくてもいいからさ」
「そ、そうですね……あ、ありますっ。近くってわけではないですけど、ここから真っ直ぐ北に行ったところにロレンゾという町があったはずです」
思い出したようにエレナは口にした。
「おー、それは助かる。じゃあとりあえず明日はそのロレンゾの町に向かって進もうか。それで町に着いたら一度宿屋でゆっくり休もう。それからご飯を食べて服を何着か買おうか。靴もそのままじゃ歩きにくいだろうし」
僕はエレナの足元を見ながら話す。
「え、い、いいですよそんな……それにわたし、お金持っていませんし……」
「心配しないで。僕昨日までダンジョンにいたからさ、高く売れそうなアイテムをいくつか持ってるんだ。町に着いたら換金すればいいよ」
「い、いえ。本当にいいです……クロノさんに迷惑はかけたくありません」
頑なに断るエレナ。
「迷惑だなんて。お金ならギルドでモンスター退治とか請け負えばいくらでも手に入るからさ。僕こう見えて結構強いんだよ」
「で、でもやっぱり……」
エレナはなかなか首を縦に振らない。
「うーん……」
意外にも頑固なエレナに僕が頭を悩ませていると――
「あがっ……!?」
突如として体に激痛が走った。
それと同時に全身が硬直して地面に倒れてしまう。
「えっ!? ど、どうしたんですか、クロノさんっ」
「か、がかっ……あがぁっ……!」
体が痙攣を起こしていて言葉を発することが出来ない。
「クロノさん、しっかりしてくださいっ!」
「あっ……がが、す……けっ……!」
なんなんだこれはっ……。
全身がきしむように痛いっ。
それに、息が出来ないっ……し、死ぬっ。
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