46 / 59
第46話 岸田さん所有のダンジョン
しおりを挟む
岸田さんと約束した日の朝。
俺はいつになくスマホのアラームを使わずに早起きすることが出来た。
というより、目が冴えてしまって、あまりよく眠れなかったという方が正確かもしれないが……。
まあ、とにかくだ。
今日は岸田さんの所有するダンジョンに一緒に潜ってみる日だ。
俺は机の上に置いておいたダンジョン通行証をポケットの中に押し込むと、
「さて、行くか」
メロンパンを食べ切ってから部屋を出た。
◆ ◆ ◆
「お待たせ、岸田さん」
「どうも、木崎さん。おはようございます」
木崎さんは魔法使い風の恰好でダンジョンの入り口の前に立っていた。
俺が声をかけると、とんがり帽子を手で押さえつつ、頭を下げる。
「これが岸田さんの持っているダンジョンなんだね」
「はい」
俺はダンジョンの入り口を眺めながら、白金の大迷宮に通じる入り口よりだいぶ小さいなと素直に思った。
今俺たちがいるのは長野県と群馬県の県境にある山の中である。
そこにひっそりと目立たぬように岸田さんのダンジョンは存在していた。
「早速入ってみてください」
眠そうな目をした岸田さんが俺に顔を向ける。
「俺が先でいいの?」
「はい。どうぞ」
「じゃあ、入ってみるよ」
俺はダンジョン通行証の効力を信じて、ダンジョンへと足を一歩踏み入れた。
◆ ◆ ◆
そこはダンジョンの中だった。
土で覆われた壁や天井、坑道のような造りの通路。
松明があちこちに置かれていて、薄暗いながらも、それなりに遠くは見通せる。
そしてすぐ目の前には地下へと続く階段もあった。
「おお、このダンジョンはワンフロアじゃないのか」
「はい。そうです」
俺のつぶやきに岸田さんが声を返してきた。
振り返ると、岸田さんもダンジョン内に入ってきていた。
「わたしの確認している限りでは、このダンジョンは地下48階まではあります」
「へー、そうなんだ」
「多分もっと深く続いてるんでしょうけど、それ以上はモンスターが強すぎて今のわたしには無理なんです」
「ふーん」
岸田さんはそれなりに強いはずだけど、そんな岸田さんでもきついのか。
それは興味があるな。
「でもバイトしながら地下48階も潜ってたら時間がいくらあっても足りないんじゃないの? っていうか、地上に戻るだけでも倍の時間がかかるでしょ」
気になって訊ねると、
「いえ、それは大丈夫です」
と岸田さん。
「このアイテムがありますから」
そう言って俺に見せてきたのはガラケーのような物体だった。
俺はそれを直接見たことはなかったが、知識としては知っていた。
「あ、それって帰還テレホンでしょっ?」
「はい、そうです。これがあればどこからでもすぐ地上に戻れますから」
「へー、便利なアイテム持ってるんだね」
帰還テレホンとは、電源を入れるとその途端に、使用者の半径1メートル以内の者をダンジョン外へ脱出させることが出来るというかなり便利なアイテムなのだった。
俺のスキルである緊急脱出とは違って、所持アイテムもなくならない。
しかも何度でも使用可能というダンジョン探索者にとっては欠かすことの出来ないアイテムでもある。
そのためそのアイテム一つで7000万円というかなり高額な売値がついている。
残念なことに白金の大迷宮では一度もお目にかかれてはいない、俺にとっては幻のアイテムでもあった。
「これからどうします? もう出ますか? それとも少し探索していきますか?」
「そうだなぁ……せっかく来たんだし見ていってもいいかな?」
そう問いかける俺に、岸田さんはこころよく、
「はい、もちろんです」
とうなずいてくれた。
俺はいつになくスマホのアラームを使わずに早起きすることが出来た。
というより、目が冴えてしまって、あまりよく眠れなかったという方が正確かもしれないが……。
まあ、とにかくだ。
今日は岸田さんの所有するダンジョンに一緒に潜ってみる日だ。
俺は机の上に置いておいたダンジョン通行証をポケットの中に押し込むと、
「さて、行くか」
メロンパンを食べ切ってから部屋を出た。
◆ ◆ ◆
「お待たせ、岸田さん」
「どうも、木崎さん。おはようございます」
木崎さんは魔法使い風の恰好でダンジョンの入り口の前に立っていた。
俺が声をかけると、とんがり帽子を手で押さえつつ、頭を下げる。
「これが岸田さんの持っているダンジョンなんだね」
「はい」
俺はダンジョンの入り口を眺めながら、白金の大迷宮に通じる入り口よりだいぶ小さいなと素直に思った。
今俺たちがいるのは長野県と群馬県の県境にある山の中である。
そこにひっそりと目立たぬように岸田さんのダンジョンは存在していた。
「早速入ってみてください」
眠そうな目をした岸田さんが俺に顔を向ける。
「俺が先でいいの?」
「はい。どうぞ」
「じゃあ、入ってみるよ」
俺はダンジョン通行証の効力を信じて、ダンジョンへと足を一歩踏み入れた。
◆ ◆ ◆
そこはダンジョンの中だった。
土で覆われた壁や天井、坑道のような造りの通路。
松明があちこちに置かれていて、薄暗いながらも、それなりに遠くは見通せる。
そしてすぐ目の前には地下へと続く階段もあった。
「おお、このダンジョンはワンフロアじゃないのか」
「はい。そうです」
俺のつぶやきに岸田さんが声を返してきた。
振り返ると、岸田さんもダンジョン内に入ってきていた。
「わたしの確認している限りでは、このダンジョンは地下48階まではあります」
「へー、そうなんだ」
「多分もっと深く続いてるんでしょうけど、それ以上はモンスターが強すぎて今のわたしには無理なんです」
「ふーん」
岸田さんはそれなりに強いはずだけど、そんな岸田さんでもきついのか。
それは興味があるな。
「でもバイトしながら地下48階も潜ってたら時間がいくらあっても足りないんじゃないの? っていうか、地上に戻るだけでも倍の時間がかかるでしょ」
気になって訊ねると、
「いえ、それは大丈夫です」
と岸田さん。
「このアイテムがありますから」
そう言って俺に見せてきたのはガラケーのような物体だった。
俺はそれを直接見たことはなかったが、知識としては知っていた。
「あ、それって帰還テレホンでしょっ?」
「はい、そうです。これがあればどこからでもすぐ地上に戻れますから」
「へー、便利なアイテム持ってるんだね」
帰還テレホンとは、電源を入れるとその途端に、使用者の半径1メートル以内の者をダンジョン外へ脱出させることが出来るというかなり便利なアイテムなのだった。
俺のスキルである緊急脱出とは違って、所持アイテムもなくならない。
しかも何度でも使用可能というダンジョン探索者にとっては欠かすことの出来ないアイテムでもある。
そのためそのアイテム一つで7000万円というかなり高額な売値がついている。
残念なことに白金の大迷宮では一度もお目にかかれてはいない、俺にとっては幻のアイテムでもあった。
「これからどうします? もう出ますか? それとも少し探索していきますか?」
「そうだなぁ……せっかく来たんだし見ていってもいいかな?」
そう問いかける俺に、岸田さんはこころよく、
「はい、もちろんです」
とうなずいてくれた。
29
お気に入りに追加
1,362
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる