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第30話 第一回戦
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俺と岸田さんを含めた本選進出者8人は、ロッジとは名ばかりの古びた山小屋に一泊した。
そして翌朝、俺たちにトーナメントの対戦表が渡された。
それを見ると、俺と岸田さんは決勝までは当たらない組み合わせだった。
俺は安心するとともに、ほんの少しだけだが残念な気持ちになった。
もしかしてだが俺は無意識のうちに、岸田さんと手合わせしてみたいという感情が芽生えていたのかもしれない。
◆ ◆ ◆
スーツ姿の男性に案内されてたどり着いた場所は何もない平地だった。
昨日のように周りに木々すらない。
「ここでしたら存分に戦ってもらえると思います」
とスーツ姿の男性は言う。
「それにしても観客は誰もいねぇんだな。ちとがっかりだぜ」
そう口にするのは伊勢さん。
言動からして目立ちたいタイプのようだ。
「それでは早速第一回戦目始めましょうかね。準備はよろしいですか?」
言いながらスーツ姿の男性はポケットからマイクを取り出す。
そして、その場にいた全員の顔を見回してから、
『では伊勢さんと久留米さん、お二人はここに立ってください。残りの皆さんはわたしとともにあちらで観戦するとしましょう』
マイクを通して喋り出した。
全員の準備が整い、
『それでは第一回戦目、始めっ!』
スーツ姿の男性が試合開始を告げた。
◆ ◆ ◆
掛け声と同時に動いたのは伊勢さんだった。
彼は大剣を構え、
「うぉおおりゃああ!!」
雄叫びをあげながら久留米さんに向かって走っていく。
その迫力は凄まじく、まるで猛牛が迫りくるようだった。
対して、
「……」
久留米さんは一歩も動かずにその光景を見定めている。
その落ち着いたたたずまいは試合中だとはとても思えない。
「さっさと終わらせてやるぜぇぇ!」
と次の瞬間、 ドォンッ!! 伊勢さんが手にしていた大剣が宙を舞っていた。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、どうやら久留米さんが何かをしたようだった。
それはおそらくスキルによるものだろうと思われた。
「な、なんだぁっ!?」
伊勢さんは状況を理解できていない様子。
そんな伊勢さんに久留米さんが手を伸ばした。
するとその手が触れそうになった直後、伊勢さんが後ろに吹っ飛んだ。
やはり何かしているらしい。
するとそこで久留米さんが口を開く。
ゆっくりとした口調で、
「ぼくはね、自分の身体の周りにバリアを張れるんだよ。だからきみの攻撃は届かないんだ。悪いね」
「な、なんだと……!」
「このバリアは攻撃にも応用できる。さっきみたいにね」
そう言って手を前に差し出すと、またしても伊勢さんが後ろに弾き飛ばされた。
「ってわけだから、降参してくれないかな?」
「ふ、ふざけんなっ! 降参なんかするわけねぇだろうがっ!」
伊勢さんは吠えるが、どうにかしようにも手立てがないように見えた。
すると突然伊勢さんがぼそぼそとつぶやき始める。
「く、くそがっ。ちくしょう……ま、まさか一回戦目でこれを使う羽目になるとは……でも、それしかねぇ」
そして直後、
「全力解放っ!!」
と叫び声を上げた。
途端に伊勢さんの身体が赤いオーラのようなもので覆われる。
「な、なんだ……!?」
久留米さんが驚きの声を上げる中、
「こうなったら手加減は出来ねぇからな、くそがっ!」
伊勢さんが地面を強く蹴って、久留米さんに突進した。
「ぐあぁぁっ……!」
それを受け、バリアで守られていたはずの久留米さんが豪快に後方へと転がり倒れる。
様子を見守っていたスーツ姿の男性が近寄っていき、久留米さんが気絶していることを確認して、
『勝負ありっ。勝者は伊勢さんです!』
そう勝ち名乗りを上げた。
そして翌朝、俺たちにトーナメントの対戦表が渡された。
それを見ると、俺と岸田さんは決勝までは当たらない組み合わせだった。
俺は安心するとともに、ほんの少しだけだが残念な気持ちになった。
もしかしてだが俺は無意識のうちに、岸田さんと手合わせしてみたいという感情が芽生えていたのかもしれない。
◆ ◆ ◆
スーツ姿の男性に案内されてたどり着いた場所は何もない平地だった。
昨日のように周りに木々すらない。
「ここでしたら存分に戦ってもらえると思います」
とスーツ姿の男性は言う。
「それにしても観客は誰もいねぇんだな。ちとがっかりだぜ」
そう口にするのは伊勢さん。
言動からして目立ちたいタイプのようだ。
「それでは早速第一回戦目始めましょうかね。準備はよろしいですか?」
言いながらスーツ姿の男性はポケットからマイクを取り出す。
そして、その場にいた全員の顔を見回してから、
『では伊勢さんと久留米さん、お二人はここに立ってください。残りの皆さんはわたしとともにあちらで観戦するとしましょう』
マイクを通して喋り出した。
全員の準備が整い、
『それでは第一回戦目、始めっ!』
スーツ姿の男性が試合開始を告げた。
◆ ◆ ◆
掛け声と同時に動いたのは伊勢さんだった。
彼は大剣を構え、
「うぉおおりゃああ!!」
雄叫びをあげながら久留米さんに向かって走っていく。
その迫力は凄まじく、まるで猛牛が迫りくるようだった。
対して、
「……」
久留米さんは一歩も動かずにその光景を見定めている。
その落ち着いたたたずまいは試合中だとはとても思えない。
「さっさと終わらせてやるぜぇぇ!」
と次の瞬間、 ドォンッ!! 伊勢さんが手にしていた大剣が宙を舞っていた。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、どうやら久留米さんが何かをしたようだった。
それはおそらくスキルによるものだろうと思われた。
「な、なんだぁっ!?」
伊勢さんは状況を理解できていない様子。
そんな伊勢さんに久留米さんが手を伸ばした。
するとその手が触れそうになった直後、伊勢さんが後ろに吹っ飛んだ。
やはり何かしているらしい。
するとそこで久留米さんが口を開く。
ゆっくりとした口調で、
「ぼくはね、自分の身体の周りにバリアを張れるんだよ。だからきみの攻撃は届かないんだ。悪いね」
「な、なんだと……!」
「このバリアは攻撃にも応用できる。さっきみたいにね」
そう言って手を前に差し出すと、またしても伊勢さんが後ろに弾き飛ばされた。
「ってわけだから、降参してくれないかな?」
「ふ、ふざけんなっ! 降参なんかするわけねぇだろうがっ!」
伊勢さんは吠えるが、どうにかしようにも手立てがないように見えた。
すると突然伊勢さんがぼそぼそとつぶやき始める。
「く、くそがっ。ちくしょう……ま、まさか一回戦目でこれを使う羽目になるとは……でも、それしかねぇ」
そして直後、
「全力解放っ!!」
と叫び声を上げた。
途端に伊勢さんの身体が赤いオーラのようなもので覆われる。
「な、なんだ……!?」
久留米さんが驚きの声を上げる中、
「こうなったら手加減は出来ねぇからな、くそがっ!」
伊勢さんが地面を強く蹴って、久留米さんに突進した。
「ぐあぁぁっ……!」
それを受け、バリアで守られていたはずの久留米さんが豪快に後方へと転がり倒れる。
様子を見守っていたスーツ姿の男性が近寄っていき、久留米さんが気絶していることを確認して、
『勝負ありっ。勝者は伊勢さんです!』
そう勝ち名乗りを上げた。
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