【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

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第18話 ベビー

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「なっ――」
『えっ――』

「へっへっへっ。な? 簡単だろ」

目の前の男は今なんと言った……?
俺が死ねばいい? そう言ったのか……?

「ど、どういうことだ……?」
「はぁ? 聞こえたはずだろ。理解できなかったのか、お前。まったくよお。いいか、お前が死ねばダンジョンの所有権は一時的に空白になるんだ。そこをオレがダンジョンの中に入って、所有権ごといただこうってわけだ。わかったか?」
「そ、そんなことが……」

知らなかった。
ダンジョン所有者が死ぬと所有権が消えるなんて……。
……ん? ま、待てよ。

「今朝、ダンジョンの所有者が遺体で発見されたってニュースでやってたけど、まさかあれもあんたがやったんじゃ……?」
「ああ、オレだぜ」
男は悪びれるそぶりも見せずに淡々と口にする。

「あの大学教授のおっさん、ダンジョンでかなり稼いでたみたいだからな。オレ欲しくなっちゃってよ。昨日の晩だったかな、殺しちまったよ。へっへっへっ」
「な、なんてことを……」

イカレてる。
こいつは完全に頭のネジが外れてしまっている。

「さあ、話はもういいだろ。そろそろ死んでくれないか。自殺が出来ないってんならオレが直接殺してやってもいいんだぜ」
『マ、マスター、駄目だよ、おいらのためにそ――んぎゃっ……!』
「ベビーっ!」
「おいおい、雑魚モンスター。喋るなって言っただろ」
男はベビーの鼻っ面にパンチを浴びせた。
その拍子にベビーの鼻からは血が噴き出る。

「ベビーに手を出すなっ!」
「だったら早く死んでくれよ。そうすりゃこのモンスターも無事に解放してやるからよ」
男は首を左右に揺らし、こきこきと音を鳴らしながら俺をじっとねめつける。

……くっ。
ベビーが人質にとられていなければ、こんな奴、一瞬で片づけられるのに。
俺のレベルはすでに2000を超えている。
その気になれば、男がまばたきをする間に近寄って気絶させることだって出来るはずだ。

だが、男の手中にはベビーがいる。
男が少しでも動けば、男の持つダガーナイフがベビーの顔に刺さってしまうだろう。
さらにそれだけではなく、男はダンジョンを所有しているかもしれないのだ。
ということは俺よりレベルが高いなんてことはまずあり得ないにしても、この男もまた身体能力がずば抜けている可能性は否定できない。

ど、どうする……?
俺は男とベビーの顔を見比べながら逡巡していた。

「おいおい、いつまで待たせるんだ。いい加減にしてくれっ。お前はこのモンスターが大事じゃないのかっ? なんだ、オレがこのモンスターを殺さないとでも思ってるのかっ? だったら実際にやってみせたっていいんだぜっ」
男の我慢も限界に近付いてきたらしく、口調がだんだんと荒々しくなってくる。

「ま、待てっ! わ、わかった……あんたの言う通りにする」
気付けば俺はそう口にしつつ、両手を上げていた。
俗に言う降参のポーズだ。
深く考えての言動ではなかったが、俺はこうすることがきっと正しいのだと、この時は思った。

「よし。じゃあこれを使えっ」
男はそう言うとポケットからもう一本ダガーナイフを出して、それを投げてよこした。
カランカランと電車内の床にダガーナイフが転がる。
俺は足元のそれを拾い上げた。

『……マ、マスター……』
「それを自分の首に一気に突き刺せっ。下手な真似したらこいつは殺すからなっ」
今にも泣き出しそうな表情のベビーと勝ち誇った様子の男がみつめる中、俺は覚悟を決めた。

そして、
「ベビー……遊園地、もう行けなくて悪いな」
そう言い残すと、俺は目を閉じ、自分の首にダガーナイフを思いっきり――
『うわぁぁぁーーっ!!』
突き刺そうとしたその時だった。
ベビーが自ら、男の持っていたダガーナイフに身を乗り出した。

「なっ……!? 何してんだてめぇっ!」
予期していなかったベビーの行動に男は狼狽し、ベビーを投げ捨てた。
その瞬間、男には隙が生まれ、俺は瞬時に男の腹の下に潜り込むと、
「くらえぇっ!」
男のあごめがけ、こぶしを振り上げた。

「ぐぼぉっっ……!!」

男は電車の天井に激突してから床に落下した。
ぴくぴくと体を痙攣させていたので、男はまだなんとか息をしているようだった。

ハッとした俺はすぐさまベビーに顔を向け、
「ベビー、大丈夫かっ!」
ベビーのもとへと駆け寄った。
見るとベビーの首元からは血があふれ出ていた。

『マ、マスター……お、おいら……』
「安心しろっ。今すぐ病院に連れていってやるからなっ」
『……お、おいら……マスターに出会えて……す、すっごく幸せだった……』
「な、何を言ってるんだよ……」
ベビーは震える手で俺の頬に触れる。
その瞳は涙で潤んでいた。

『だ、だからさ……最後にお願いがあるんだけどさ……あ、あのね……もし生まれ変われるなら……今度は人間に生まれたいな……そ、それでさ……マ、マスターと一緒に……ゆ、遊園地に……い、行きた……い……』

そこでベビーの言葉が途切れた。

「べ、ベビー……?」
『…………』
「お、おい、なんとか言ってくれっ!」
『…………』
「そ、そんな……ベビー……頼む……頼むよっ……!」

俺は必死にベビーを抱きかかえる。
しかし、ベビーは反応することはなく、その体からはどんどんと力が抜けていき、そして次の瞬間、塵のように体が崩壊すると俺の目の前から完全に消え去ってしまった。
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