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第181話 質問攻め

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「ククリ、もしもだけど石化しちゃった時のためにこれを持っててくれないか?」
俺は異次元袋からカエルの涙を取り出してククリに差し出した。

「もちろんメドゥーサの目は見ないように注意するつもりだけど念のためにさ」
「まあいいですけど、よいしょっと……」
ククリはカエルの涙が入った容器を抱えるように持つ。


「なあククリ……」
アイテムを持つククリの姿を見て俺はふと気になったことを訊いてみることにした。
「今さらだけどこのダンジョンにアイテムの持ち込みは出来ないんだよな」
「なんですか? ほんとに今さらですね」

「だったらククリにアイテムを預けておいて次来た時に返してもらうとかは駄目なのか? それなら次の探索にアイテムを持ち越せるだろ」
「はい? マツイさんそんなずるいこと考えてたんですか?」
ククリが軽蔑するような眼差しを俺に向けてきた。

「いや、別にずっと考えていたわけじゃないぞ、今ふと思いついただけだっ」
ククリに嫌われたくないので慌てて弁解する。
実際その通りだし。

「前にも言いましたけど私これで結構忙しい身なんですよ。マツイさんとダンジョン探索している時以外の時間は精霊としてのお仕事をしているんです」
「仕事って……ダンジョンの案内人も仕事の内だろ」
「いえ、いうなればこっちはボランティアのようなものです。私がやりたくてやっているだけですよ」
「え、そうだったのか?」
知らなかった……。

「私もこのダンジョン外で仕事がある以上、ダンジョンを出入りしないといけませんから私がアイテムを預かったところで結局消えちゃいますよ」
「そっか。ククリも写し鏡の門を通るのか?」
「いいえ、私はハイールとデールという魔法が使えるので普段は魔法で精霊の世界とダンジョンとを行き来していますけど」

ハイールとデール。
なんて安易なネーミングなんだ。

「あ、一応言っておきますけどこの魔法は一人用ですからね。ずるは出来ませんよ」
「わ、わかってるよ」
デールなんて魔法があるなら万が一の時逃げられるかもと思ったのだが無理みたいだな。


「……ククリのその服はなんでなくならないんだ? ククリも持ち込みは出来ないんだろ」
俺はククリの葉っぱで出来たような服を指差し訊ねた。

「これですか? この服は私の魔力で具現化しているだけですから持ち込んでいるわけではありませんよ。精霊は魔力を使っていろいろなことが出来ますからね、えっへん」
「魔力で具現化? よくわからないんだけど……」
「わからなくてもいいですよ。そもそも精霊のことをこんなに人間に喋っていいものかどうか私もわかりませんし」
俺の目の前をぱたぱたと飛びながら言う。

「じゃあさ、もしアイテムを床に置いてダンジョンを出ていったらそのアイテムはどうなるんだ?」
「どうって、地形が変化するときに一緒になくなりますよ」
さすがに質問攻めに嫌気がさしたのかちょっと面倒くさそうに答えるククリ。

「あの、マツイさん。そんなにアイテムを最初から持って冒険したいのなら初めに写し鏡の門のところで階層をスキップすればいいじゃないですか」

「……え?」

ククリはまたもよくわからないことを言い出したのだった。
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