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第163話 目覚まし草と満腹草
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「こんなとこかな」
俺は階下へと続く階段を前にして地下九階層で手に入れたアイテムを床に並べてあらためて確認してみた。
攻撃力+2のバタフライナイフ、攻撃力+2の木刀、いつでもどこにでもベアさんを呼べるベアホイッスル、オークからドロップアイテムとして手に入れたオークの肉。
「今回は装備品が全然充実しませんね~」
ククリが床のアイテムと俺の装備している錆びた剣とダメージジーンズとヒーローマントを見ながら言う。
「そうだなぁ。せめてベアさんに会えれば装備品も買い揃えられると思うんだけどな」
俺はベアホイッスルを手にしてこれをみつめながら口にした。
ベアホイッスルは売値が三十万円だからこれ一つ売るだけで充分な軍資金になる。
「ベアさんホイッスルがあるんですからそれでベアさんを呼びましょうよ」
ククリが提案するが、
「アホか。これ使っちゃったらせっかくベアさんに会えても売るものがなくなっちゃうだろ。俺は今有り金ゼロなんだからな」
すぐさま却下する。
俺は布の袋から目覚まし草を二つ取り出すと、
「仕方ない。錆びた剣でキマイラに挑むか」
出していたアイテムを布の袋に入れ直した。
「ほら、スラ。これ食べとけ」
目覚まし草をスラに差し出す。
『何これ?』
可愛らしく首をかしげるスラ。
「目覚まし草だよ。次の階層はキマイラが出てくるからな。こいつを食べておかないと眠らされちゃうぞ」
キマイラは催眠攻撃を使う厄介なモンスターだから眠気が襲ってこなくなる目覚まし草は必需品だ。
『ふーん、でも二つしかないじゃん。ククリちゃんの分はどうすんの?』
スラが俺を見上げるが俺の代わりにククリが答えた。
「あ、スラさん。私なら平気ですよ」
『なんで? どうしてー?』
「私は高位の精霊ですから催眠攻撃なんてへっちゃらなんです。眠くなることもお腹がすくこともないんですよ。えっへん」
ククリは小さな胸を張る。
『えーマジちょーいいじゃん。つーかだったらなんでさっきボアの肉食べたの?』
「精霊にも味覚はありますからね」
『みかく? よくわかんないけどククリちゃんすごいんだねー。マジ神』
「えへへ~。神様なんて恐れ多いですよ~」
くねくねと体をくねらせるククリ。
「おーい、つまりククリは目覚まし草はいらないんだよな」
「はい、そうです。だから目覚まし草はふたりで食べちゃってください」
「だそうだ。わかったかスラ?」
スラに視線を落とすと、
『オッケー。じゃあそれちょうだい』
スラは口をんあ~と開いた。
俺はスラに目覚まし草を食べさせてやる。
むしゃむしゃ……。
美味しそうな顔で食べるスラ。
それに引き換え俺は苦々しい顔で目覚まし草を口の中ですりつぶす。
いつになってもダンジョン内の草の不味さにだけは慣れない。
満腹草は割と美味しいんだけどな。
俺は口の中のものをごくんと無理矢理飲み込んだ。
「よし、これでキマイラ対策は万全だ」
正確に言えば今から三日間は眠くなることはない。
「そうだ、ついでですから満腹草も食べておいたらどうですか」
ククリが手をぱちんと叩いて思い出したように口を開く。
「満腹草か……」
「満腹草も効き目は三日間ですから一緒に食べておいた方がわかりやすいんじゃないかと思いまして」
「うん……それもそうだな」
ククリの提案を受け入れ俺は布の袋の中から満腹草も二つ取り出した。
一つをスラにもう一つはもちろん俺が食べる。
むしゃむしゃ……。
もぐもぐ……ごくん。
「さてと、じゃあこれから地下十階層に行くけど一応気をつけろよふたりとも」
「はーい」
『わかってるって』
こうして俺たちは眠気と空腹を抑え込むと地下十階層へと赴いたのだった。
俺は階下へと続く階段を前にして地下九階層で手に入れたアイテムを床に並べてあらためて確認してみた。
攻撃力+2のバタフライナイフ、攻撃力+2の木刀、いつでもどこにでもベアさんを呼べるベアホイッスル、オークからドロップアイテムとして手に入れたオークの肉。
「今回は装備品が全然充実しませんね~」
ククリが床のアイテムと俺の装備している錆びた剣とダメージジーンズとヒーローマントを見ながら言う。
「そうだなぁ。せめてベアさんに会えれば装備品も買い揃えられると思うんだけどな」
俺はベアホイッスルを手にしてこれをみつめながら口にした。
ベアホイッスルは売値が三十万円だからこれ一つ売るだけで充分な軍資金になる。
「ベアさんホイッスルがあるんですからそれでベアさんを呼びましょうよ」
ククリが提案するが、
「アホか。これ使っちゃったらせっかくベアさんに会えても売るものがなくなっちゃうだろ。俺は今有り金ゼロなんだからな」
すぐさま却下する。
俺は布の袋から目覚まし草を二つ取り出すと、
「仕方ない。錆びた剣でキマイラに挑むか」
出していたアイテムを布の袋に入れ直した。
「ほら、スラ。これ食べとけ」
目覚まし草をスラに差し出す。
『何これ?』
可愛らしく首をかしげるスラ。
「目覚まし草だよ。次の階層はキマイラが出てくるからな。こいつを食べておかないと眠らされちゃうぞ」
キマイラは催眠攻撃を使う厄介なモンスターだから眠気が襲ってこなくなる目覚まし草は必需品だ。
『ふーん、でも二つしかないじゃん。ククリちゃんの分はどうすんの?』
スラが俺を見上げるが俺の代わりにククリが答えた。
「あ、スラさん。私なら平気ですよ」
『なんで? どうしてー?』
「私は高位の精霊ですから催眠攻撃なんてへっちゃらなんです。眠くなることもお腹がすくこともないんですよ。えっへん」
ククリは小さな胸を張る。
『えーマジちょーいいじゃん。つーかだったらなんでさっきボアの肉食べたの?』
「精霊にも味覚はありますからね」
『みかく? よくわかんないけどククリちゃんすごいんだねー。マジ神』
「えへへ~。神様なんて恐れ多いですよ~」
くねくねと体をくねらせるククリ。
「おーい、つまりククリは目覚まし草はいらないんだよな」
「はい、そうです。だから目覚まし草はふたりで食べちゃってください」
「だそうだ。わかったかスラ?」
スラに視線を落とすと、
『オッケー。じゃあそれちょうだい』
スラは口をんあ~と開いた。
俺はスラに目覚まし草を食べさせてやる。
むしゃむしゃ……。
美味しそうな顔で食べるスラ。
それに引き換え俺は苦々しい顔で目覚まし草を口の中ですりつぶす。
いつになってもダンジョン内の草の不味さにだけは慣れない。
満腹草は割と美味しいんだけどな。
俺は口の中のものをごくんと無理矢理飲み込んだ。
「よし、これでキマイラ対策は万全だ」
正確に言えば今から三日間は眠くなることはない。
「そうだ、ついでですから満腹草も食べておいたらどうですか」
ククリが手をぱちんと叩いて思い出したように口を開く。
「満腹草か……」
「満腹草も効き目は三日間ですから一緒に食べておいた方がわかりやすいんじゃないかと思いまして」
「うん……それもそうだな」
ククリの提案を受け入れ俺は布の袋の中から満腹草も二つ取り出した。
一つをスラにもう一つはもちろん俺が食べる。
むしゃむしゃ……。
もぐもぐ……ごくん。
「さてと、じゃあこれから地下十階層に行くけど一応気をつけろよふたりとも」
「はーい」
『わかってるって』
こうして俺たちは眠気と空腹を抑え込むと地下十階層へと赴いたのだった。
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